トランプ氏勝利で「マネーは踊る」状況に
相場の波動から見ていくと、日経平均は7月11日に4万2426円で二番天井を打った後、下落調整局面が続いてきました。
なぜ、7月高値を抜けなかったのか。その要因は、第一に国内政治の動きです。石破茂首相の誕生はややサプライズであったことと、その先行きには一抹の不安があったからです。その石破政権が、戦後最短の日程で解散総選挙に出たことから、その不安は増幅されました。
懸念されていたのは与党の過半数割れでした。選挙前には、それを織り込んで株価は下落していたのです。
第2に、11月5日の米大統領選で、どちらが大統領になるかです。民主党のカマラ・ハリス氏が当選するならば、キャピタルゲイン課税や法人税引き上げに言及していましたから、これは株価下落につながります。
一方、共和党のドナルド・トランプ氏は大幅減税を打ち出すことなどが見通されており、株価上昇の可能性が高いと見られていました。ただ、大統領選前には支持率が拮抗しており、どちらが当選するかわからないということで、投資家は大統領選の結果を見てから投資しようという人がほとんどだったと思います。
これらの要因で株価はモタモタしていたわけですが、第一のリスクでは、最も懸念されていた与党過半数割れという結果が出ました。ある意味で、株価は最も弱い材料を織り込んだわけです。
与党が過半数割れとなると政権が不安定となり、最悪の場合には、かつての細川護熙政権のような野党中心の連立政権が誕生しかねません。
ただ、蓋を開けてみたら、石破政権と、玉木雄一郎代表の国民民主党との間で「部分連合」が成立する見通しもあり、かえって日本の政治にとってよかったのではないかという見方が広がっています。
自公だけでは物事が決められず、国民民主の協力がなければ政権はもたないわけです。今後、「年収103万円の壁」問題の議論も含めて、石破政権は減税政策に出てくる可能性があります。これは株価にとってプラス材料です。
そして、この政治状況を受けて、日本銀行は簡単には利上げができなくなったと思います。仮に早期に利上げをして、株価が暴落する事態になったら、政権がもたない可能性すらあるからです。日銀の慎重な金融政策が続くものと見ています。
そして最も、日米の株価にとってインパクトが大きいのは、トランプ氏の米大統領当選です。まさに今後は「マネーは踊る」状況となります。
トランプ氏は元々、不動産会社を経営するビジネスマンですから、儲けにならないことはしません。大統領としては、米国の利益にならないことはしないということです。
今後は富裕層、中産階級のプラスになるような減税や財政出動を打ち出してくる可能性があります。ただ、これは財政赤字の拡大につながります。今年1月時点で米国の債務は34兆ドルに上っています。昨年9月時点で33兆ドルでしたから、わずかの期間に1兆ドル、日本円で150兆円増えているわけです。
ジョー・バイデン政権下で、この増加ですから、トランプ政権となれば40兆ドルにまで膨らんでもおかしくありません。
今後、何が起きるかというと、米国発の「大バブル相場」です。米国の債務の膨張が続く限り、日米の株価は上昇します。違う言い方をすると、トランプ氏が大統領の間はバブルを破裂させないということです。
ただ同時にトランプ氏は長期的に財政規律を見直す委員会の設立に言及しており、この委員長に、テスラのイーロン・マスク氏を起用する考えも示しています。その意味で、日本のバブル崩壊時の日銀のように、急激な引き締めや債務の削減は行わず、長期的視点で緩やかに債務を削減する政策を打ち出すものと見ています。今回のトランプ大統領在任中、日米の株価は幾度も最高値を更新することになると思います。
もう1つ、トランプ大統領による大きな変化は地政学リスクです。まず、ロシア・ウクライナ戦争において、ウクライナへの積極的な支援はしないでしょう。おそらくロシア側にかなり譲歩した形での休戦、停戦を目指していくのだと思います。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が、この方針を受け入れるかは不透明です。
さらに緊迫化する中東情勢ではイスラエルを強く支援する形となるでしょうから、紛争拡大の恐れが強まります。
その意味で2024年11月5日を境に、世界は大きく変わることになります。キーワードは米国のマネーの暴走による「史上最大のバブル相場の到来」と「第3次世界大戦リスクの高まり」の2つです。
トランプ大統領下では、これまでのFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策のカジ取りを無にするような形でインフレが再燃し、金利が上昇することになるでしょう。
そして、資産を持てる者と持たざる者との格差は日米、そして世界でさらに広がることになります。持たざる側となる中産階級以下の人々や若者の生活はさらに苦しくなり、いま増加している「闇バイト」のように、社会不安は増幅されます。
トランプ氏は、日本に対して、特に強い関心を持っておらず、良好な日米関係という形にはならないでしょう。トランプ氏の行動原理は「米国第一主義」に尽きます。その覚悟を持って、石破政権も、日本国民もトランプ政権に対する必要があります。
企業、個人ともに、ビッグチャンスとビッグリスクが同居する時代に入ったと言えます。
相場の波動から見ていくと、日経平均は7月11日に4万2426円で二番天井を打った後、下落調整局面が続いてきました。
なぜ、7月高値を抜けなかったのか。その要因は、第一に国内政治の動きです。石破茂首相の誕生はややサプライズであったことと、その先行きには一抹の不安があったからです。その石破政権が、戦後最短の日程で解散総選挙に出たことから、その不安は増幅されました。
懸念されていたのは与党の過半数割れでした。選挙前には、それを織り込んで株価は下落していたのです。
第2に、11月5日の米大統領選で、どちらが大統領になるかです。民主党のカマラ・ハリス氏が当選するならば、キャピタルゲイン課税や法人税引き上げに言及していましたから、これは株価下落につながります。
一方、共和党のドナルド・トランプ氏は大幅減税を打ち出すことなどが見通されており、株価上昇の可能性が高いと見られていました。ただ、大統領選前には支持率が拮抗しており、どちらが当選するかわからないということで、投資家は大統領選の結果を見てから投資しようという人がほとんどだったと思います。
これらの要因で株価はモタモタしていたわけですが、第一のリスクでは、最も懸念されていた与党過半数割れという結果が出ました。ある意味で、株価は最も弱い材料を織り込んだわけです。
与党が過半数割れとなると政権が不安定となり、最悪の場合には、かつての細川護熙政権のような野党中心の連立政権が誕生しかねません。
ただ、蓋を開けてみたら、石破政権と、玉木雄一郎代表の国民民主党との間で「部分連合」が成立する見通しもあり、かえって日本の政治にとってよかったのではないかという見方が広がっています。
自公だけでは物事が決められず、国民民主の協力がなければ政権はもたないわけです。今後、「年収103万円の壁」問題の議論も含めて、石破政権は減税政策に出てくる可能性があります。これは株価にとってプラス材料です。
そして、この政治状況を受けて、日本銀行は簡単には利上げができなくなったと思います。仮に早期に利上げをして、株価が暴落する事態になったら、政権がもたない可能性すらあるからです。日銀の慎重な金融政策が続くものと見ています。
そして最も、日米の株価にとってインパクトが大きいのは、トランプ氏の米大統領当選です。まさに今後は「マネーは踊る」状況となります。
トランプ氏は元々、不動産会社を経営するビジネスマンですから、儲けにならないことはしません。大統領としては、米国の利益にならないことはしないということです。
今後は富裕層、中産階級のプラスになるような減税や財政出動を打ち出してくる可能性があります。ただ、これは財政赤字の拡大につながります。今年1月時点で米国の債務は34兆ドルに上っています。昨年9月時点で33兆ドルでしたから、わずかの期間に1兆ドル、日本円で150兆円増えているわけです。
ジョー・バイデン政権下で、この増加ですから、トランプ政権となれば40兆ドルにまで膨らんでもおかしくありません。
今後、何が起きるかというと、米国発の「大バブル相場」です。米国の債務の膨張が続く限り、日米の株価は上昇します。違う言い方をすると、トランプ氏が大統領の間はバブルを破裂させないということです。
ただ同時にトランプ氏は長期的に財政規律を見直す委員会の設立に言及しており、この委員長に、テスラのイーロン・マスク氏を起用する考えも示しています。その意味で、日本のバブル崩壊時の日銀のように、急激な引き締めや債務の削減は行わず、長期的視点で緩やかに債務を削減する政策を打ち出すものと見ています。今回のトランプ大統領在任中、日米の株価は幾度も最高値を更新することになると思います。
もう1つ、トランプ大統領による大きな変化は地政学リスクです。まず、ロシア・ウクライナ戦争において、ウクライナへの積極的な支援はしないでしょう。おそらくロシア側にかなり譲歩した形での休戦、停戦を目指していくのだと思います。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が、この方針を受け入れるかは不透明です。
さらに緊迫化する中東情勢ではイスラエルを強く支援する形となるでしょうから、紛争拡大の恐れが強まります。
その意味で2024年11月5日を境に、世界は大きく変わることになります。キーワードは米国のマネーの暴走による「史上最大のバブル相場の到来」と「第3次世界大戦リスクの高まり」の2つです。
トランプ大統領下では、これまでのFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策のカジ取りを無にするような形でインフレが再燃し、金利が上昇することになるでしょう。
そして、資産を持てる者と持たざる者との格差は日米、そして世界でさらに広がることになります。持たざる側となる中産階級以下の人々や若者の生活はさらに苦しくなり、いま増加している「闇バイト」のように、社会不安は増幅されます。
トランプ氏は、日本に対して、特に強い関心を持っておらず、良好な日米関係という形にはならないでしょう。トランプ氏の行動原理は「米国第一主義」に尽きます。その覚悟を持って、石破政権も、日本国民もトランプ政権に対する必要があります。
企業、個人ともに、ビッグチャンスとビッグリスクが同居する時代に入ったと言えます。