GHG排出量の9割近くがサプライチェーンの間接排出
「サステナビリティー(持続可能性)に取り組む上で、サプライチェーン(供給網)は非常に大きな要素。サプライチェーンの協力なしには、事業全体のサステナビリティーは実現できないからだ」
こう語るのは、富士通執行役員EVP CSSO(Chief Sustainability & Supply Chain Officer)の山西高志氏。
≪どうなる? 日本のエネルギー確保≫ 東北電力・女川原発 再稼働の決断と課題
2040年までにバリューチェーン全体のCO2(二酸化炭素)排出量をネットゼロ(温暖化ガス実質排出ゼロ)にすることを目標に掲げる富士通。GHG(温暖化ガス)排出量を20年比で90%以上削減し、CO2の回収や植林などによる吸収で除去・貯留したりする中和量を合わせてネットゼロを目指すという目標だ。
この中で、自社の排出量に関しては昨年(2023年)、すでに同社は目標達成時期を見直した。これまで2050年度としていたネットゼロの達成を2030年度までとし、同時に事業活動における使用電力を100%再生可能エネルギーにすることを目指している。
2022年度における富士通のサプライチェーン全体でのGHG排出量は約577万㌧。このうち、自社が占める割合は10%に満たず、9割近くがサプライチェーン全体(スコープ3)の間接排出が占める。やはり、最大の課題はサプライチェーン全体の削減をいかに進めるか。部材の調達や製品輸送、製品仕様などで出てくる温室効果ガスの削減が必要である。
「これまでも排出削減を加速するため、サプライヤーと共同で取り組みを進めてきたが、部品調達時のCO2排出量は部品に対する業界平均の排出量の推計値で計算していたので、リアルな排出量が見えていなかった。したがって、分析もできず、削減すべきポイントの特定や削減施策の立案ができない状態だった」(山西氏)
実際の排出量を知るためには、サプライチェーンを1階層ずつ遡り、原料調達から製造の各過程で排出されるリアルなCO2排出量を計算しなければならない。このため、富士通は独自のプラットフォームを開発。CO2排出量の”可視化”を行うことで、サプライチェーン全体でCO2排出量を削減しようとしている。
「サプライチェーンを通じてもたらすインパクト、あるいはサプライチェーンに与えるインパクトは大きい。(ビジネスが環境に与えるプラスの影響がマイナスを上回る)ネットポジティブを達成するには、それぞれのインパクトを定量的に図ることが重要。つまり、可視化こそがネットポジティブ実現の肝だと考えている」(山西氏)
富士通はこの10月から、同社の取引先企業12社と実データの連携を開始。今後はこれらのデータと社内のデータを組み合わせ、AI(人工知能)などを活用して分析結果の実行や削減施策に結び付けていく考えだ。
企業には具体的な削減計画と実行力が問われる
2020年に日本政府が2050年までのカーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ)を目指すことを宣言するなど、世界は脱炭素に向けて動き出した。
しかし、米国ではトランプ氏が年明け1月から大統領に就任。即座に温暖化防止の国際的な枠組み「パリ協定」から離脱する方針を表明している他、化石燃料の増産も打ち出しており、カーボンニュートラル実現に向けては後退懸念が高まっている。
また、脱炭素のけん引役だった欧州でも、ロシアによるウクライナ侵攻以降はエネルギー価格の上昇に伴うインフレや生活費の上昇に嫌気をさした国民が増えているとの調査もある。
このため「海外ではカーボンニュートラルの実現はかなり不透明な状況になっていて、日本だけが真面目に数値目標を掲げて頑張っている」(商社関係者)という声も出ているほどだ。
とはいえ、カーボンニュートラルの実現に向けて取り組むことは企業の大事な責務。事業の継続と脱炭素化の両立は容易ではないものの、チャレンジしなければならない課題だ。
米アップルは全サプライチェーンに対し、2030年までの脱炭素化を要請。対応できない企業との取引を打ち切ることも辞さない構えで、アップルに部品を供給する日本企業も早期の対応を余儀なくされている。政権交代など関係なく、世界の最先端を行く企業は脱炭素に向けて走り出している。
そうした中、「富士通自身のサプライチェーン、さらにお客様のサプライチェーンにおいてGHG排出量の可視化が進むことによって社会全体で可視化・削減が進む。これは財務面、非財務面両方でポジティブなインパクトをもたらすものだと考えている」と語る山西氏。
カーボンニュートラルへの取り組みは待ったなし。今後、企業各社には具体的な削減計画と実行力が問われそうだ。
【株価はどう動く?】トランプ政権誕生で「史上最大のバブル相場の到来」と「第3次世界大戦リスク」がキーワードに
「サステナビリティー(持続可能性)に取り組む上で、サプライチェーン(供給網)は非常に大きな要素。サプライチェーンの協力なしには、事業全体のサステナビリティーは実現できないからだ」
こう語るのは、富士通執行役員EVP CSSO(Chief Sustainability & Supply Chain Officer)の山西高志氏。
≪どうなる? 日本のエネルギー確保≫ 東北電力・女川原発 再稼働の決断と課題
2040年までにバリューチェーン全体のCO2(二酸化炭素)排出量をネットゼロ(温暖化ガス実質排出ゼロ)にすることを目標に掲げる富士通。GHG(温暖化ガス)排出量を20年比で90%以上削減し、CO2の回収や植林などによる吸収で除去・貯留したりする中和量を合わせてネットゼロを目指すという目標だ。
この中で、自社の排出量に関しては昨年(2023年)、すでに同社は目標達成時期を見直した。これまで2050年度としていたネットゼロの達成を2030年度までとし、同時に事業活動における使用電力を100%再生可能エネルギーにすることを目指している。
2022年度における富士通のサプライチェーン全体でのGHG排出量は約577万㌧。このうち、自社が占める割合は10%に満たず、9割近くがサプライチェーン全体(スコープ3)の間接排出が占める。やはり、最大の課題はサプライチェーン全体の削減をいかに進めるか。部材の調達や製品輸送、製品仕様などで出てくる温室効果ガスの削減が必要である。
「これまでも排出削減を加速するため、サプライヤーと共同で取り組みを進めてきたが、部品調達時のCO2排出量は部品に対する業界平均の排出量の推計値で計算していたので、リアルな排出量が見えていなかった。したがって、分析もできず、削減すべきポイントの特定や削減施策の立案ができない状態だった」(山西氏)
実際の排出量を知るためには、サプライチェーンを1階層ずつ遡り、原料調達から製造の各過程で排出されるリアルなCO2排出量を計算しなければならない。このため、富士通は独自のプラットフォームを開発。CO2排出量の”可視化”を行うことで、サプライチェーン全体でCO2排出量を削減しようとしている。
「サプライチェーンを通じてもたらすインパクト、あるいはサプライチェーンに与えるインパクトは大きい。(ビジネスが環境に与えるプラスの影響がマイナスを上回る)ネットポジティブを達成するには、それぞれのインパクトを定量的に図ることが重要。つまり、可視化こそがネットポジティブ実現の肝だと考えている」(山西氏)
富士通はこの10月から、同社の取引先企業12社と実データの連携を開始。今後はこれらのデータと社内のデータを組み合わせ、AI(人工知能)などを活用して分析結果の実行や削減施策に結び付けていく考えだ。
企業には具体的な削減計画と実行力が問われる
2020年に日本政府が2050年までのカーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ)を目指すことを宣言するなど、世界は脱炭素に向けて動き出した。
しかし、米国ではトランプ氏が年明け1月から大統領に就任。即座に温暖化防止の国際的な枠組み「パリ協定」から離脱する方針を表明している他、化石燃料の増産も打ち出しており、カーボンニュートラル実現に向けては後退懸念が高まっている。
また、脱炭素のけん引役だった欧州でも、ロシアによるウクライナ侵攻以降はエネルギー価格の上昇に伴うインフレや生活費の上昇に嫌気をさした国民が増えているとの調査もある。
このため「海外ではカーボンニュートラルの実現はかなり不透明な状況になっていて、日本だけが真面目に数値目標を掲げて頑張っている」(商社関係者)という声も出ているほどだ。
とはいえ、カーボンニュートラルの実現に向けて取り組むことは企業の大事な責務。事業の継続と脱炭素化の両立は容易ではないものの、チャレンジしなければならない課題だ。
米アップルは全サプライチェーンに対し、2030年までの脱炭素化を要請。対応できない企業との取引を打ち切ることも辞さない構えで、アップルに部品を供給する日本企業も早期の対応を余儀なくされている。政権交代など関係なく、世界の最先端を行く企業は脱炭素に向けて走り出している。
そうした中、「富士通自身のサプライチェーン、さらにお客様のサプライチェーンにおいてGHG排出量の可視化が進むことによって社会全体で可視化・削減が進む。これは財務面、非財務面両方でポジティブなインパクトをもたらすものだと考えている」と語る山西氏。
カーボンニュートラルへの取り組みは待ったなし。今後、企業各社には具体的な削減計画と実行力が問われそうだ。
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