Infoseek 楽天

【2025年をどう占いますか?】答える人 経済同友会代表幹事・新浪剛史

財界オンライン 2025年1月15日 11時30分

可処分所得と生涯年収の恒常的増加につながる構造改革を

 ─ 24年は33年ぶりに5%を超える賃上げとなりましたが、実質賃金は物価上昇に追い付いていません。経済同友会代表幹事の新浪剛史さん、日本経済の現況をどう捉えていますか。

 新浪 日本経済の長期低迷が続いている最大の原因は、賃金が増えない中で社会保険料などの負担が増大し、国民の「可処分所得」が増えてこなかったためです。各企業では人材確保を意識した賃上げが進んでいますが、「可処分所得」が安定して増える状況にはなっていません。

 収入は変わらないという疑念が国民に根強く、賃上げが個人消費の底上げや企業の生産性向上に向けた投資を後押しするには至っていないのです。結果、インフレを押し返すほどの活力が日本経済に生まれていません。

 ─ 消費や投資を喚起するには何が必要でしょうか。

 新浪 可処分所得が継続的に増えていくための取り組みが重要です。同友会のアンケート調査では、25年も賃上げに取り組むと回答した企業は多く、3年続けての賃上げとなります。加えて、政府が改革を断行することで「可処分所得」が増えるという安心感が広がれば、好循環に向かっていくと思います。

 同友会では、賃上げやその原資を生み出す生産性向上への取り組みを企業に働きかけるとともに、国民の「可処分所得」を恒常的に増やす改革を政府に強く訴えていきたいと思います。

 ─ 石破新政権にはどんなことを期待しますか。

 新浪 働きたい人が健康に働きたいだけ働ける社会作りです。医療の軸足を治療から予防へとシフトすること、全世代リスキリングやセーフティネットの充実による人材流動化の加速、女性の就労を歪めている年収の壁の解決に向けた第三号被保険者の廃止を柱とする年金制度改革は、早急に進めてもらいたい。

 それから雇用の7割を占める中小企業におけるDXやAIなどの生産性向上投資の加速が必須です。可処分所得にもつながる最低賃金1500円への引き上げを3年で行うことを前提に、意欲ある中小企業に支援を重点化し、彼らを中心に合従連衡や新陳代謝を図る中で、生産性を高めていくべきです。

 また経済活動や社会生活の基盤である運輸・建設、保育・介護などの業種に人財移動を促すために、業種別の最低賃金も検討すべきでしょう。

この記事の関連ニュース