運転手不足と渋滞の対策
「タクシーが走り始めて112年。技術革新でバスの専売特許だった"相乗り"がタクシーでも実現できるようになった」と全国ハイヤー・タクシー連合会会長で日本交通会長の川鍋一朗氏はこのように話す。
日本交通系の配車アプリ「JapanTaxi」とDeNAの「MOV」が事業統合して誕生した「GO」が、他人同士が同乗するタクシーの相乗りサービス「GO SHUTTLE」を始めた。東京・有楽町・新橋など都心エリアと豊洲・晴海・有明など湾岸エリアを対象としている。
バスでは相乗りが当たり前だが、タクシーでは珍しい。GOシャトルは「GOアプリ」から予約して乗車する。対象エリア内にはあらかじめ決められた約400の乗降スポット間を自由に移動できることが特徴だ。
そのため、同社は移動の距離間を2~8キロの街中に想定しており、疲れた日の帰宅や混雑を避けたいとき、確実に座って移動したいとき、寒い日などの移動需要を取り込む考え。
相乗りサービスはバスと同様に、車内に不特定多数の乗客が同乗する。そのため、安全性を考慮して深夜帯は避けた。また、快適な移動を確保するため、乗車順番を踏まえた座席決定ロジックを導入。車両も全車で座席が独立しているキャプテンシートタイプによるプライベート空間を確保しつつ、車内での通話禁止やマナーの取り決めといった工夫も施している。
さらに料金は移動距離に応じた固定金額で約500~1500円程度。通常のタクシー運賃の5~6割程度の金額になる。初期は1台につき最大5人まで相乗りできるが、乗車が1人でも同料金で運行は成立する形だ。
もし運転手が一般の個人で自家用車を使っていた場合はライドシェアになるが、GOシャトルは日本交通の子会社であるハロートーキョーが二種免許取得済みのパートタイム乗務員と専用の車両を準備するため、ライドシェアには該当しない。
「タクシーが捕まらない」ー。コロナ禍からの復活と同時に、訪日外国人(インバウンド)の急増も相まって都心やリゾート地など、一部の地域でタクシー不足が顕著になっていた。コロナ禍で運転手の約2割が辞めてしまい、タクシー運転手が足りなくなったことが背景にある。
その後、タクシー各社の採用強化も相まって「かなりの勢いで回復し、もうコロナ禍以前の人数まで迫っている」(川鍋氏)。ところが、朝・雨天時・夜中など、どうしても需要が跳ね上がるタイミングがある。もし相乗りが定着すれば、通常5人を運ぶのに5台の車両が必要なところを1台で済ませることができる。
しかし課題はそれだけでない。実はタクシー車両の供給が増える裏では、もう1つの課題が浮き彫りになっていた。それが渋滞だ。雨天時の都心部や長野県軽井沢町で深刻な社会課題となっているのだ。
GO社長の中島宏氏は「既にエリアによっては、いくら車両を増やしても、渋滞の影響でこれ以上、お客様が運べないとなってしまう状況もあることから、効率的な輸送という観点が必要だった」と語る。
こういった取り組みが可能なのは、同社が蓄積してきた大量のデータを活用できるからだ。GOの累計ダウンロード数は2500万超。2位のDiDi(900万ダウンロード)を引き離す。その分、多くの乗降データを取得できている。そこから需要のありそうなエリアを割り出しているのだ。前出の約400のスポットもビッグデータから推測したものだ。
中島氏も「どのくらいの人がGOを使ってタクシーを呼ぼうとしているのか。そしてそれに応えられているのか、あるいは応えていないのかといった詳細なデータが集まっているのがGOの強みだ」と説明する。
課題は収益性だ。いかに相乗り人数を増やすことができるかどうかにある。GOアプリもしばらくの間は「赤字が続いていた」(中島氏)だけに、GOシャトルも当初は赤字が続きそうだ。いかに早期に黒字化の目途をつけられるかが勝負になる。
ウェイモと自動運転の実験へ
様々な公共交通機関がある中で、タクシーが乗用車よりも早く進化する可能性が出てきている。それが自動運転だ。米最大のロボタクシー企業のウェイモが2025年初頭に東京で初の海外での試験走行を開始すると発表した。
日本交通とGOと提携し、都心7区の公道で日本交通の運転手がウェイモの車両を運転。特定の条件下で人が運転に関わらない「レベル4」の商用化を見据え、地図データの取得などを行う。ロボタクシーを巡っては、ホンダが米GM傘下のクルーズと提携していたが、事故などが原因で中止に追い込まれている。ウェイモの商用化の時期は明言されていないが、実用化すれば運転手不足の解消にもつながる。
「(この1年でタクシーの)規制緩和が進み、それに(ITなどの)技術が追い付いてきた」と川鍋氏が語るように、相乗りや自動運転は技術革新によって生まれたサービスとなる。
今後も人手不足はより一層厳しくなり、タクシー運転手の確保も難しくなる。解決策をどう講じるのか。新たなテクノロジーを駆使して現場の効率化を図ると同時に、運転手の賃上げの原資を稼ぐためにも、"選ばれる交通手段"になることが第一歩となる。
京王電鉄と日立が協業 AI活用で駅の案内業務を支援
「タクシーが走り始めて112年。技術革新でバスの専売特許だった"相乗り"がタクシーでも実現できるようになった」と全国ハイヤー・タクシー連合会会長で日本交通会長の川鍋一朗氏はこのように話す。
日本交通系の配車アプリ「JapanTaxi」とDeNAの「MOV」が事業統合して誕生した「GO」が、他人同士が同乗するタクシーの相乗りサービス「GO SHUTTLE」を始めた。東京・有楽町・新橋など都心エリアと豊洲・晴海・有明など湾岸エリアを対象としている。
バスでは相乗りが当たり前だが、タクシーでは珍しい。GOシャトルは「GOアプリ」から予約して乗車する。対象エリア内にはあらかじめ決められた約400の乗降スポット間を自由に移動できることが特徴だ。
そのため、同社は移動の距離間を2~8キロの街中に想定しており、疲れた日の帰宅や混雑を避けたいとき、確実に座って移動したいとき、寒い日などの移動需要を取り込む考え。
相乗りサービスはバスと同様に、車内に不特定多数の乗客が同乗する。そのため、安全性を考慮して深夜帯は避けた。また、快適な移動を確保するため、乗車順番を踏まえた座席決定ロジックを導入。車両も全車で座席が独立しているキャプテンシートタイプによるプライベート空間を確保しつつ、車内での通話禁止やマナーの取り決めといった工夫も施している。
さらに料金は移動距離に応じた固定金額で約500~1500円程度。通常のタクシー運賃の5~6割程度の金額になる。初期は1台につき最大5人まで相乗りできるが、乗車が1人でも同料金で運行は成立する形だ。
もし運転手が一般の個人で自家用車を使っていた場合はライドシェアになるが、GOシャトルは日本交通の子会社であるハロートーキョーが二種免許取得済みのパートタイム乗務員と専用の車両を準備するため、ライドシェアには該当しない。
「タクシーが捕まらない」ー。コロナ禍からの復活と同時に、訪日外国人(インバウンド)の急増も相まって都心やリゾート地など、一部の地域でタクシー不足が顕著になっていた。コロナ禍で運転手の約2割が辞めてしまい、タクシー運転手が足りなくなったことが背景にある。
その後、タクシー各社の採用強化も相まって「かなりの勢いで回復し、もうコロナ禍以前の人数まで迫っている」(川鍋氏)。ところが、朝・雨天時・夜中など、どうしても需要が跳ね上がるタイミングがある。もし相乗りが定着すれば、通常5人を運ぶのに5台の車両が必要なところを1台で済ませることができる。
しかし課題はそれだけでない。実はタクシー車両の供給が増える裏では、もう1つの課題が浮き彫りになっていた。それが渋滞だ。雨天時の都心部や長野県軽井沢町で深刻な社会課題となっているのだ。
GO社長の中島宏氏は「既にエリアによっては、いくら車両を増やしても、渋滞の影響でこれ以上、お客様が運べないとなってしまう状況もあることから、効率的な輸送という観点が必要だった」と語る。
こういった取り組みが可能なのは、同社が蓄積してきた大量のデータを活用できるからだ。GOの累計ダウンロード数は2500万超。2位のDiDi(900万ダウンロード)を引き離す。その分、多くの乗降データを取得できている。そこから需要のありそうなエリアを割り出しているのだ。前出の約400のスポットもビッグデータから推測したものだ。
中島氏も「どのくらいの人がGOを使ってタクシーを呼ぼうとしているのか。そしてそれに応えられているのか、あるいは応えていないのかといった詳細なデータが集まっているのがGOの強みだ」と説明する。
課題は収益性だ。いかに相乗り人数を増やすことができるかどうかにある。GOアプリもしばらくの間は「赤字が続いていた」(中島氏)だけに、GOシャトルも当初は赤字が続きそうだ。いかに早期に黒字化の目途をつけられるかが勝負になる。
ウェイモと自動運転の実験へ
様々な公共交通機関がある中で、タクシーが乗用車よりも早く進化する可能性が出てきている。それが自動運転だ。米最大のロボタクシー企業のウェイモが2025年初頭に東京で初の海外での試験走行を開始すると発表した。
日本交通とGOと提携し、都心7区の公道で日本交通の運転手がウェイモの車両を運転。特定の条件下で人が運転に関わらない「レベル4」の商用化を見据え、地図データの取得などを行う。ロボタクシーを巡っては、ホンダが米GM傘下のクルーズと提携していたが、事故などが原因で中止に追い込まれている。ウェイモの商用化の時期は明言されていないが、実用化すれば運転手不足の解消にもつながる。
「(この1年でタクシーの)規制緩和が進み、それに(ITなどの)技術が追い付いてきた」と川鍋氏が語るように、相乗りや自動運転は技術革新によって生まれたサービスとなる。
今後も人手不足はより一層厳しくなり、タクシー運転手の確保も難しくなる。解決策をどう講じるのか。新たなテクノロジーを駆使して現場の効率化を図ると同時に、運転手の賃上げの原資を稼ぐためにも、"選ばれる交通手段"になることが第一歩となる。
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