「創業者のチャレンジ精神を今一度学ぶ」─大成建設社長・相川氏は話す。大成建設は、新たな企業の姿を描くべく検討を進めている。「ゼネコンでありながら、エンジニアリング分野へも、総合的に取り組む」といった事業の方向性や、成長のあり方、企業価値とは何なのかという根本を問い直す取り組み。その中ではリベラルアーツ教育や創業者・大倉喜八郎翁の精神の見直しも進める。「ゼロカーボンビル」など新たな挑戦も進む中、相川氏が描く将来像とは─。
川上から川下まで一括して事業を手掛ける
─ 人口減の中で、建設業界を巡っては様々なマイナス環境がありますが、将来に向けてどう取り組んでいますか。
相川 当社は221年度に中長期的に目指す姿を描いた「TAISEI VISION 2030」をつくりました。過去の当社のあり方とは違う中長期的な姿を社員と共有し、それに共感してもらった上で、そのビジョンに向かっていこうという狙いです。
新中期経営計画の基本的な考え方としては、私達が持つ技術を生かして建設、開発、エンジニアリング、そしてかねてから訴えている業界再編を見据えた取り組みも含めて、より国内事業の質を高め、幅を広げていくことを目指していきます。
特に今はエンジニアリング事業に力を入れています。生産施設の川上から川下、つまり基本計画・設計施工、運営サポート・維持管理、さらには最終的な解体まで一括して手掛けることを意識して取り組んでいます。
─ どの領域の生産施設が多いんですか。
相川 今は製薬関連施設が最も多く、他には半導体関連施設、物流関連施設もあります。従来は建物を受注して、その中のエンジニアリングを少し手掛けるという姿でしたが、今後はエンジニアリング分野の受注と同時に建築・設備も獲得していくという方向で受注活動を進めています。
─ 今後は事業に占めるエンジニアリングの割合が重くなるということですね。
相川 ええ。実質的に、全体の受注額に占めるエンジニアリング分野の受注を、より多くしていきたいと考えています。
これまでの日本のエンジニアリング事業のビジネスモデルは、発注者がエンジニアリングと建築設備を別々の会社に依頼したり、受注者(エンジニアリング会社)が一括受注し、建築設備工事を建設会社に発注する形態が一般的でした。
その理由は、エンジニアリング会社は建築設備工事を手掛けられませんし、建設会社はエンジニアリング関連部分を手掛けられなかったからです。しかし、当社はそのどちらも対応してきた実績があり、その中で培った高い専門性が最大の強みです。
─ 建物の効率的な使用につながりそうですね。
相川 そうですね。エンジニアリング部分を含めて、施設全体で設計し、施工していきますから、最も効率的な生産施設ができるということになります。
─ エンジニアリング人材の拡充や育成も必要になってきますね。
相川 人材育成が必要であることは言うまでもありません。しかし、育成には相応の時間を要することから、M&A(企業の合併・買収)も睨んで、並行して検討を進めている最中です。
人手不足問題にはどう対応するか?
─ 全産業的に担い手不足が深刻化していますが、どのように対処していきますか。
相川 人口減に伴う就業者の減少は、他産業同様、建設業も非常に深刻です。当社の社員である技術者や専門工事会社の建設技能者の両面の問題があります。
まず、技術者獲得のために取り組んでいるのは、新卒採用だけでなく、キャリアを積み重ねてきた経験者の通年採用を増やすことです。また、今までは土木・建築技術者に絞っていましたが、様々な領域の技術者が必要になっていますから、採用の幅を広げています。
─ 社員教育のあり方も変わってきていますが。
相川 我々は24年8月から全管理職を対象とした人材育成のための「リベラルアーツ思考ビジネスプログラム」を導入しています。
─ 社員にリベラルアーツを身につけてもらおうと考えた理由は?
相川 私が社長に就任する以前から、社員の人間力を高めるためには人文科学、社会科学、自然科学、歴史、芸術などのリベラルアーツが必要だと考えて、社員に対して自己啓発として取り組んで欲しいという話をしていたんです。
ただ、個人で取り組むには、やはり限界があると考えました。
─ 人材教育の面ではどういうメリットがありますか。
相川 当社の技術系社員も、事務系社員も、それぞれ専門分野では非常に優秀な人財です。いざ現場から出ると、一般教養、人文科学、社会科学といった、社会人として身につけておくべき重要な教養を備える必要があります。
リベラルアーツ思考を研修で学ぶことで、初めて我々のお客様が期待する以上の対応ができると考えています。社員にとってもキャリアパスにおいて、きっかけの一つにもなると思います。
─ 専門工事会社の建設技能者の不足は、各社も頭を悩ませている問題です。
相川 そうですね。この最も大きな理由は、人口減が背景にありますが、やはり建設技能者の年収が全産業平均に比較し低いことです。
建設技能者の賃金水準引き上げについては、日本建設業連合会(日建連)としても担い手確保に向けた最重要課題として取り組んでいます。
日建連の活動とともに、我々の協力企業の集まりである倉友会に対しても、加盟企業に所属している建設技能者の報酬をいかに引き上げるかという活動をしているところです。
次の150年に向けて創業精神をどう生かす?
─ 大成建設は23年に創業150周年を迎えるなど、歴史を重ねてきていますが、次の100年、150年に向けた思いを聞かせて下さい。
相川 創業者である大倉喜八郎翁が1873年(明治6年)に「大倉組商会」を設立したわけですが、その会社が150年以上続いているのは、お客様のおかげだと思っています。
また、150周年を迎えた際には大倉喜八郎翁と、その息子である大倉喜七郎の精神を見直す活動を行いました。喜八郎翁は、今の新潟県新発田市から出てきて事業を始めたわけですが、そのチャレンジ精神を今一度学ぶ必要があると考えました。
どうしても今の大成建設は保守的になり過ぎている面がありますから、チャレンジ精神を取り戻そうと企業風土改革に取り組んでいます。その原点には、やはり大倉喜八郎翁があります。
─ これからの大成建設を、どういうスタンスで経営していこうと考えていますか。
相川 先ほどお話ししたエンジニアリング事業の強化など今後、会社の将来については、社内で継続して議論しなければなりません。
その過程では企業としての成長を、もう一度考え直そうと思っています。企業の成長、企業価値向上とはどういうものなのか、常に模索しています。
考え方としては、企業価値とは企業の質の向上や、ステークホルダーからの信頼向上を、継続させていくものだと思っています。
世の中には様々な形で拡大している企業がありますが、当社は社員が財産であります。社員の数を増やさない限りは企業としての規模拡大はできません。
─ このさらなる拡大に向けて取り組んでいくと。
相川 そうです。これ以上規模拡大したいという時にはM&A(企業の合併・買収)しか道はないと考えています。しかも、単に拡大するのではなく、そこにシナジーがなければいけません。
シナジーを生みながら、大成建設の質をどんどん向上させ、企業価値を上げていく。単なる売上拡大だけが成長ではなく、いかにサステナブルに、将来にわたって事業継続していくかという観点が重要だと思います。
また、そういう会社をどのようにつくっていくかが、我々の課題だと思っています。
─ 産業界では30年の停滞から、ようやく従業員の賃上げに踏み切る流れができました。今後の方向性は?
相川 この30年間、ほとんど給与は上がってこなかったわけですが、デフレからインフレの世の中に変わりましたから、マインドを変えなければいけません。給与は社員のモチベーションを上げる1つの材料ですから、当社もベースアップ、賞与のアップを進めました。
加えて、会社の環境をよくすることが大事だということで、本社はもちろんですが、全国に約700カ所ある現場の執務環境をさらによくするべく取り組んでいるところです。
─ 人材の流動化が言われる昨今ですが、企業と個人の関係をどう考えますか。
相川 2年前から、社員が会社を信頼してくれているか、共感を持って仕事をしてくれているかという調査を始めたのですが、まだまだ標準的な数字です。今後も継続して、社員のエンゲージメントの向上に、取り組んでいきます。
また、よりよい職場環境づくりに向けて「心理的安全性」のある職場をつくって欲しいということを社員に伝えています。職場で誰に何を言っても、どのような指摘をしても、拒絶されることがなく、罰せられる心配もない状態のことを言います。
部長クラス以上の年配者等は、どうしても自分だけが喋る形になりがちですから、そういう人達には部下の話を最後まで聞いてから発言することを心がけるように伝えています。
社員として入ってくれた以上は、できるだけ長く働いて欲しいというのが経営者としての希望です。ですから、社員がいかに働き甲斐を持っていてくれるかが大事になります。
その考えを踏まえて、25年から当社始まって以来の大幅な人事制度の改革に向けた設計を進めているところです。
脱炭素に向けた「ゼロカーボンビル」
─ 全産業的に脱炭素がキーワードになっていますが、どう取り組みますか。
相川 建設業としてはカーボンニュートラルに前向きに取り組まなくてはならないと思いますし、環境関連技術では業界でもトップクラスにあると考えています。
建築物のライフサイクルにおけるCO2排出量を正味ゼロ以下にする「ゼロカーボンビル」に取り組んでいる他、それに並行して「ゼロウォータービル」の開発も進めています。
─ 水を使わないビルというのはどういうものですか。
相川 上水を使わず雨水を利用し、節水と排水再利用で建物の水消費実質ゼロを目指すというビルです。
日本では水に対する意識はあまり高くないかもしれませんが、中国、インド、アフリカなどでは今後、水が最も重要な資源になってきます。そうした需要に向けて、「ゼロウォータービル」を海外でも展開できればと考えています。
日本でも、例えば能登半島地震で災害時には水が重要であることが再認識されたと思います。ですからできるだけ上水を使わない建築物をつくるという取り組みは重要になります。
─ 業界再編は相川さんの持論ですが、今後の展開は?
相川 私は建設業の企業自体が多過ぎると考えています。今の状況は建設業界全体としては経営効率が悪い。
例えば、ある会社に工事部門が1万人、2万人いたとして、そこに必ず管理部門がついてくる。これが1つになれば効率化します。
また、先程お話した環境技術、DX技術開発にしても、それを実現できる会社は大手に集中しています。中小の企業でも、例えば大成建設の技術を使えるようにすれば投資を抑制できますし、建設業界全体の技術レベルも上がり社会貢献の質を高めることになります。
社長就任以来言い続けて、まだ業界全体の機運にはなっていませんが、少しずつ変わり始めていると思います。
川上から川下まで一括して事業を手掛ける
─ 人口減の中で、建設業界を巡っては様々なマイナス環境がありますが、将来に向けてどう取り組んでいますか。
相川 当社は221年度に中長期的に目指す姿を描いた「TAISEI VISION 2030」をつくりました。過去の当社のあり方とは違う中長期的な姿を社員と共有し、それに共感してもらった上で、そのビジョンに向かっていこうという狙いです。
新中期経営計画の基本的な考え方としては、私達が持つ技術を生かして建設、開発、エンジニアリング、そしてかねてから訴えている業界再編を見据えた取り組みも含めて、より国内事業の質を高め、幅を広げていくことを目指していきます。
特に今はエンジニアリング事業に力を入れています。生産施設の川上から川下、つまり基本計画・設計施工、運営サポート・維持管理、さらには最終的な解体まで一括して手掛けることを意識して取り組んでいます。
─ どの領域の生産施設が多いんですか。
相川 今は製薬関連施設が最も多く、他には半導体関連施設、物流関連施設もあります。従来は建物を受注して、その中のエンジニアリングを少し手掛けるという姿でしたが、今後はエンジニアリング分野の受注と同時に建築・設備も獲得していくという方向で受注活動を進めています。
─ 今後は事業に占めるエンジニアリングの割合が重くなるということですね。
相川 ええ。実質的に、全体の受注額に占めるエンジニアリング分野の受注を、より多くしていきたいと考えています。
これまでの日本のエンジニアリング事業のビジネスモデルは、発注者がエンジニアリングと建築設備を別々の会社に依頼したり、受注者(エンジニアリング会社)が一括受注し、建築設備工事を建設会社に発注する形態が一般的でした。
その理由は、エンジニアリング会社は建築設備工事を手掛けられませんし、建設会社はエンジニアリング関連部分を手掛けられなかったからです。しかし、当社はそのどちらも対応してきた実績があり、その中で培った高い専門性が最大の強みです。
─ 建物の効率的な使用につながりそうですね。
相川 そうですね。エンジニアリング部分を含めて、施設全体で設計し、施工していきますから、最も効率的な生産施設ができるということになります。
─ エンジニアリング人材の拡充や育成も必要になってきますね。
相川 人材育成が必要であることは言うまでもありません。しかし、育成には相応の時間を要することから、M&A(企業の合併・買収)も睨んで、並行して検討を進めている最中です。
人手不足問題にはどう対応するか?
─ 全産業的に担い手不足が深刻化していますが、どのように対処していきますか。
相川 人口減に伴う就業者の減少は、他産業同様、建設業も非常に深刻です。当社の社員である技術者や専門工事会社の建設技能者の両面の問題があります。
まず、技術者獲得のために取り組んでいるのは、新卒採用だけでなく、キャリアを積み重ねてきた経験者の通年採用を増やすことです。また、今までは土木・建築技術者に絞っていましたが、様々な領域の技術者が必要になっていますから、採用の幅を広げています。
─ 社員教育のあり方も変わってきていますが。
相川 我々は24年8月から全管理職を対象とした人材育成のための「リベラルアーツ思考ビジネスプログラム」を導入しています。
─ 社員にリベラルアーツを身につけてもらおうと考えた理由は?
相川 私が社長に就任する以前から、社員の人間力を高めるためには人文科学、社会科学、自然科学、歴史、芸術などのリベラルアーツが必要だと考えて、社員に対して自己啓発として取り組んで欲しいという話をしていたんです。
ただ、個人で取り組むには、やはり限界があると考えました。
─ 人材教育の面ではどういうメリットがありますか。
相川 当社の技術系社員も、事務系社員も、それぞれ専門分野では非常に優秀な人財です。いざ現場から出ると、一般教養、人文科学、社会科学といった、社会人として身につけておくべき重要な教養を備える必要があります。
リベラルアーツ思考を研修で学ぶことで、初めて我々のお客様が期待する以上の対応ができると考えています。社員にとってもキャリアパスにおいて、きっかけの一つにもなると思います。
─ 専門工事会社の建設技能者の不足は、各社も頭を悩ませている問題です。
相川 そうですね。この最も大きな理由は、人口減が背景にありますが、やはり建設技能者の年収が全産業平均に比較し低いことです。
建設技能者の賃金水準引き上げについては、日本建設業連合会(日建連)としても担い手確保に向けた最重要課題として取り組んでいます。
日建連の活動とともに、我々の協力企業の集まりである倉友会に対しても、加盟企業に所属している建設技能者の報酬をいかに引き上げるかという活動をしているところです。
次の150年に向けて創業精神をどう生かす?
─ 大成建設は23年に創業150周年を迎えるなど、歴史を重ねてきていますが、次の100年、150年に向けた思いを聞かせて下さい。
相川 創業者である大倉喜八郎翁が1873年(明治6年)に「大倉組商会」を設立したわけですが、その会社が150年以上続いているのは、お客様のおかげだと思っています。
また、150周年を迎えた際には大倉喜八郎翁と、その息子である大倉喜七郎の精神を見直す活動を行いました。喜八郎翁は、今の新潟県新発田市から出てきて事業を始めたわけですが、そのチャレンジ精神を今一度学ぶ必要があると考えました。
どうしても今の大成建設は保守的になり過ぎている面がありますから、チャレンジ精神を取り戻そうと企業風土改革に取り組んでいます。その原点には、やはり大倉喜八郎翁があります。
─ これからの大成建設を、どういうスタンスで経営していこうと考えていますか。
相川 先ほどお話ししたエンジニアリング事業の強化など今後、会社の将来については、社内で継続して議論しなければなりません。
その過程では企業としての成長を、もう一度考え直そうと思っています。企業の成長、企業価値向上とはどういうものなのか、常に模索しています。
考え方としては、企業価値とは企業の質の向上や、ステークホルダーからの信頼向上を、継続させていくものだと思っています。
世の中には様々な形で拡大している企業がありますが、当社は社員が財産であります。社員の数を増やさない限りは企業としての規模拡大はできません。
─ このさらなる拡大に向けて取り組んでいくと。
相川 そうです。これ以上規模拡大したいという時にはM&A(企業の合併・買収)しか道はないと考えています。しかも、単に拡大するのではなく、そこにシナジーがなければいけません。
シナジーを生みながら、大成建設の質をどんどん向上させ、企業価値を上げていく。単なる売上拡大だけが成長ではなく、いかにサステナブルに、将来にわたって事業継続していくかという観点が重要だと思います。
また、そういう会社をどのようにつくっていくかが、我々の課題だと思っています。
─ 産業界では30年の停滞から、ようやく従業員の賃上げに踏み切る流れができました。今後の方向性は?
相川 この30年間、ほとんど給与は上がってこなかったわけですが、デフレからインフレの世の中に変わりましたから、マインドを変えなければいけません。給与は社員のモチベーションを上げる1つの材料ですから、当社もベースアップ、賞与のアップを進めました。
加えて、会社の環境をよくすることが大事だということで、本社はもちろんですが、全国に約700カ所ある現場の執務環境をさらによくするべく取り組んでいるところです。
─ 人材の流動化が言われる昨今ですが、企業と個人の関係をどう考えますか。
相川 2年前から、社員が会社を信頼してくれているか、共感を持って仕事をしてくれているかという調査を始めたのですが、まだまだ標準的な数字です。今後も継続して、社員のエンゲージメントの向上に、取り組んでいきます。
また、よりよい職場環境づくりに向けて「心理的安全性」のある職場をつくって欲しいということを社員に伝えています。職場で誰に何を言っても、どのような指摘をしても、拒絶されることがなく、罰せられる心配もない状態のことを言います。
部長クラス以上の年配者等は、どうしても自分だけが喋る形になりがちですから、そういう人達には部下の話を最後まで聞いてから発言することを心がけるように伝えています。
社員として入ってくれた以上は、できるだけ長く働いて欲しいというのが経営者としての希望です。ですから、社員がいかに働き甲斐を持っていてくれるかが大事になります。
その考えを踏まえて、25年から当社始まって以来の大幅な人事制度の改革に向けた設計を進めているところです。
脱炭素に向けた「ゼロカーボンビル」
─ 全産業的に脱炭素がキーワードになっていますが、どう取り組みますか。
相川 建設業としてはカーボンニュートラルに前向きに取り組まなくてはならないと思いますし、環境関連技術では業界でもトップクラスにあると考えています。
建築物のライフサイクルにおけるCO2排出量を正味ゼロ以下にする「ゼロカーボンビル」に取り組んでいる他、それに並行して「ゼロウォータービル」の開発も進めています。
─ 水を使わないビルというのはどういうものですか。
相川 上水を使わず雨水を利用し、節水と排水再利用で建物の水消費実質ゼロを目指すというビルです。
日本では水に対する意識はあまり高くないかもしれませんが、中国、インド、アフリカなどでは今後、水が最も重要な資源になってきます。そうした需要に向けて、「ゼロウォータービル」を海外でも展開できればと考えています。
日本でも、例えば能登半島地震で災害時には水が重要であることが再認識されたと思います。ですからできるだけ上水を使わない建築物をつくるという取り組みは重要になります。
─ 業界再編は相川さんの持論ですが、今後の展開は?
相川 私は建設業の企業自体が多過ぎると考えています。今の状況は建設業界全体としては経営効率が悪い。
例えば、ある会社に工事部門が1万人、2万人いたとして、そこに必ず管理部門がついてくる。これが1つになれば効率化します。
また、先程お話した環境技術、DX技術開発にしても、それを実現できる会社は大手に集中しています。中小の企業でも、例えば大成建設の技術を使えるようにすれば投資を抑制できますし、建設業界全体の技術レベルも上がり社会貢献の質を高めることになります。
社長就任以来言い続けて、まだ業界全体の機運にはなっていませんが、少しずつ変わり始めていると思います。