追加利上げの行方は?
日銀はいつ追加利上げに踏み切り、どこまで金利は上がるのか。2025年の日本経済の大きな注目点である。
総裁の植田和男氏は「経済・物価情勢の改善が続いていけば、金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」と金融正常化路線の推進に意欲を示す。
だが、眼前には少数与党政権による国内政治の不安定化と、「予測不能」のトランプ米政権発足という波乱要因が立ちはだかる。いずれも動向次第では、国内外の経済や市場を混乱させるリスクがある。
法的には金融政策の独立性が認められているとは言え、日銀も政治状況の激変の影響からは逃れられない。物価上昇率が目標の2%を上回り、景気も堅調という理由だけでは、追加利上げに対する政治の納得を得るのが厳しい状況になっている。
日銀にとって政局の流動化が「前門の虎」なら、「後門の狼」は1月20日の第2次トランプ政権の発足。厄介なのは、高関税、大規模な減税や不法移民の強制送還などトランプ政権が公約に掲げる政策がいずれもインフレ要因であること。これらの政策が実行に移されれば、景気の過熱や人手不足による賃金上昇を招き、米国のインフレ圧力が再び高まると懸念されている。
悩ましいのは、1ドル=160円台に向けて円安・ドル高がさらに加速すれば、輸入物価の上昇を通じて家計を圧迫する「悪い円安」が再燃しかねないことだ。24年7月に1ドル=161円台まで円安が進行した局面では、財務省が大規模な円買い・ドル売り介入に踏み切り、相場を押し戻した。ただ、巨額のドル売りには米国の事前了解が必要だ。今後、財務省が再度、円安阻止の介入に動こうとした場合、トランプ政権がすんなりと容認してくれるかは不透明。
最悪のシナリオは政治の顔色を気にして日銀が追加利上げに動けない一方、米国ではトランプインフレが顕在化してFBRが高金利政策の長期化を余儀なくされる事態。日米金利差は大きく開いたままとなり、円安に歯止めがかからなくなる恐れも杞憂ではない。利上げで「金利のある世界」への道筋を拓いた植田日銀だが、25年は視界不良と言わざるを得ない。
日銀はいつ追加利上げに踏み切り、どこまで金利は上がるのか。2025年の日本経済の大きな注目点である。
総裁の植田和男氏は「経済・物価情勢の改善が続いていけば、金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」と金融正常化路線の推進に意欲を示す。
だが、眼前には少数与党政権による国内政治の不安定化と、「予測不能」のトランプ米政権発足という波乱要因が立ちはだかる。いずれも動向次第では、国内外の経済や市場を混乱させるリスクがある。
法的には金融政策の独立性が認められているとは言え、日銀も政治状況の激変の影響からは逃れられない。物価上昇率が目標の2%を上回り、景気も堅調という理由だけでは、追加利上げに対する政治の納得を得るのが厳しい状況になっている。
日銀にとって政局の流動化が「前門の虎」なら、「後門の狼」は1月20日の第2次トランプ政権の発足。厄介なのは、高関税、大規模な減税や不法移民の強制送還などトランプ政権が公約に掲げる政策がいずれもインフレ要因であること。これらの政策が実行に移されれば、景気の過熱や人手不足による賃金上昇を招き、米国のインフレ圧力が再び高まると懸念されている。
悩ましいのは、1ドル=160円台に向けて円安・ドル高がさらに加速すれば、輸入物価の上昇を通じて家計を圧迫する「悪い円安」が再燃しかねないことだ。24年7月に1ドル=161円台まで円安が進行した局面では、財務省が大規模な円買い・ドル売り介入に踏み切り、相場を押し戻した。ただ、巨額のドル売りには米国の事前了解が必要だ。今後、財務省が再度、円安阻止の介入に動こうとした場合、トランプ政権がすんなりと容認してくれるかは不透明。
最悪のシナリオは政治の顔色を気にして日銀が追加利上げに動けない一方、米国ではトランプインフレが顕在化してFBRが高金利政策の長期化を余儀なくされる事態。日米金利差は大きく開いたままとなり、円安に歯止めがかからなくなる恐れも杞憂ではない。利上げで「金利のある世界」への道筋を拓いた植田日銀だが、25年は視界不良と言わざるを得ない。