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混乱する世界で 日本の長所を生かして【私の雑記帳】

財界オンライン 2025年2月1日 11時30分

日本の共生の思想に・・・


一木一草に命が宿るー。古来より日本にある生命観であり、自然と共に生きるという共生哲学でもある。

 それはいつしか神道という形に集約され、大自然や宇宙の営みの中で人は生かされているという認識になっていったのだと思う。

 人は動植物の命を"いただく"ことで、自らの命を永らえる。この"いただく"という考え方も、自然への感謝や崇敬の念があるからこそ生まれてきた言葉なのだろう。

 人は、自分一人だけでは生きてはいけない。周りの人々や自然との共生があってこそ、人類社会は成り立つ。

 価値観が多様化する時代だと言われ、世界で分断・対立が深まる。

 敵か味方かと世界を二分する生き方とは違い、相手と自分の共生を図るという人世観、世界観が日本社会には根付いている。

 もちろん、日本にも戦いや争い事は絶えず存在した。先の大戦では敗戦国となり日本は焦土と化した。

 その敗戦(1945)から、今年は80年という節目の年。『対立と分断』の様相が濃くなる世界にあって、『共生の思想』を持つ日本の役割は大きい。


リーダーの使命と覚悟


「行先不透明」、「何が起きるか分からない」ー。こうした言葉が経済リーダーからも聞かれる。

 米トランプ政権が今年1月、再び発足。タリフマン(関税男)と言われ、あらゆる国からの輸入品に10%から20%の関税をかける事を公言してきたトランプ氏。 "米国ファースト"を掲げ、国ごとに米国第一主義の政策を取る。

 ただ、米国も自国だけでは経済は成り立たない。最大の貿易相手国である中国からの輸入品に、トランプ氏の公言通り60%の関税をかけたとすると、生活雑貨・日用品は高価格になり、インフレ要因になる。そうなれば、米国民の生活にも影響が出てくる。

 敵、味方という発想では、自らが繰り出した策がボディーブローとなって自らにハネ返ってくる。

 因果応報ー。人や自然の営みにもこれが必ず付きまとう。

 ロシアがウクライナに侵攻して約3年が経つ。相手を侮って侵入したものの、「自らの国を守る」という覚悟を持ったウクライナ国民から想定外の反撃を受け、戦況は膠着状態にある。

 ロシアを率いるプーチン大統領もこの因果応報の"法則"を早く悟るべきだが、残念なことに現状ではそうした様子は見られない。

 こうした混乱の中をどう生き抜くかを問われている今、リーダーの『使命』と『覚悟』が問われる。


日本の立ち位置


 ひるがえって、日本の現状はどうかー。世界の中での立ち位置は自由主義・民主主義、法の支配を掲げる陣営の主要国である日本。米国とは同盟関係にありながら、欧州(EU)やアジア、豪州などとどう連携を取っていくかという役割を担う。

 かつての東(社会主義)と西(自由主義)の東西対立という冷戦構造から、自由主義対専制主義という構図に世界情勢は変化。

 ロシアや中国が中心となって構築した、いわゆるBRICS(ブラジル、インドや南アフリカを含む)に、最近はアジアからタイ、マレーシア、ミャンマーなどが参加を表明。さらにインドネシアも参加の意向といわれ、一大新興国連合体の出現となりそうだ。

 専制主義対自由主義という図式で見れば、「75%対25%という勢力図になり、自由主義・民主主義の勢力が弱い」と指摘する専門家もいる。

 こうした状況にあって、「世界から日本に対する期待は高まっている」という声が、経済人だけでなく、学界や国際交流関係者からも聞かれる。

 日本の存在意義と使命がここでも問われる。


成長と衰退の歴史の中で


 国、企業や人は、成長と衰退の歴史をたどる。

 例えば、繊維産業はその代表例。日本が開国した明治維新(1868)で日本が掲げた国是は『富国強兵』と『殖産興業』であった。

 日本が、他の国々と同様に欧米の植民地とはならずに、独立主権国家として生き抜くために不可欠のテーゼ(命題)として、『富国強兵』と『殖産興業』が掲げられた。

 繊維は、世界遺産の富岡製糸場(群馬)に象徴されるように、日本の近代化と共に興隆し、当時の日本を代表する産業であった。以来、第2次世界大戦で敗戦国となった時も、戦後復興の代表産業として、その役割を果たしてきた。

 しかし、戦後80年の間に、繊維産業は新興国に取って代わられ、衰退の道をたどる。

 名門繊維の日清紡績(現日清紡ホールディングス)にしても、今やブレーキ摩擦材などの自動車関連、無線通信、半導体など、繊維以外の事業に転換し、繊維事業の比率は全体の7%程度になっている。

 一方で、合成繊維で戦後復興期、そして高度成長期を支えた東レや旭化成などは、繊維で蓄えた技術を発展させながら、"素材産業の雄"として、グローバル企業に成長。

 衣料販売の領域では、『ユニクロ』のファーストリテイリングは、"失われた30年"と言われる低迷期の間に成長、グローバル世界に進出していった。いわば、逆境の中でも成長する代表企業である。

 要は、逆境を生き抜く経営哲学、経営の基本軸が問われているということである。


日本の公益資本主義を


「日本はもっと内外に情報発信していくべき」と語るのは東レ会長の日覺昭葊さん。

「素材には社会を変える力がある」と言う日覺さんは、「20年~30年前には、繊維は成熟産業というか、衰退産業と言われたのですが、まだまだ新しく変わり続けている」と語る。

 炭素繊維にしても、短期志向の欧米企業は研究開発の途中でそれを断念してきている。デュポンなども断念組だ。

 日本の製造業は、その点、中長期志向で新事業領域の開拓に取り組んできている。マネーゲームが強くなると、経営も短期志向になりがちで反省点もある。

 中長期視点で、イノベーション(技術革新)を起こす。これは日本型経営の特徴でもある。この特徴をグローバル経済で活かしていけないものか。

 昨今、コーポレートガバナンスや"新しい資本主義"の名の下、経営改革論議も活発になってきた。

「ええ、欧米も日本の公益資本主義の考え方を一生懸命勉強しているんですよね」と日覺さんは語り次のように続ける。

「ただ、気懸かりなのは、彼らがまたルールを作って、それをまた日本が導入することになるのじゃないかと。われわれが作って実際に運営しているこの生き方、公益資本主義を、なぜ日本から発信できないのかということです」

 混乱・混迷の中、日本の真価もまた問われている。

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