首相が求める国づくりとは何か─。石破茂にとって初めての通常国会が始まった。少数与党の政権運営が続くが、石破が自ら辞任する気配は全くなく、新たなスローガンを掲げ、意欲満々だ。しかし、7月の参院選を展望した場合、石破政権の続行について自民党内で議論が沸騰するのは必至だ。折しも米国ではトランプ新政権が発足。日本製鉄のUSスチール買収問題や関税引き上げの懸念のほか、安全保障面で日本側に想像もつかない要求をしてくる可能性もあり、国内外とも予断を許さない状況が続く。
空疎なスローガン
石破は1月6日、首相の恒例行事である伊勢神宮(三重県伊勢市)の参拝を終えた後、年頭の記者会見に臨んだ。そこで提唱したのが「令和の日本列島改造」だ。
「これからは1人ひとりが『楽しい日本』を目指すべきだ。世界平和の下、全ての人々が安心と安全を感じ、多様な価値観を持つ1人ひとりの国民が今日より明日は良くなると実感し、自分の夢に挑戦し、自己実現を図っていける。互いが大切にし合う活力ある国家だと考えている」
石破らしい長々とした抽象論の末に、具体的な柱の筆頭として挙げたのが「令和の日本列島改造」だった。石破は「これを成功させなければ、日本に将来はないという危機感を強く持って進めていく」と意気込んだが、新味はない。石破の持論である「地方創生2.0」を推進するということでしかない。
新たなスローガンは、石破が政治の師と仰ぐ元首相・田中角栄の著書『日本列島改造論』にあやかった。
田中が1972年の自民党総裁選への立候補直前に出版した同書は、新幹線や高速道路といった高速交通網を整備し、地方の工業化も進めて都市部への集中と地方の過疎化を解消、国民全般が豊かになることを目指す内容だ。ベストセラーとなって田中は総裁選に勝利。土地投機の弊害や、オイル・ショックの影響もあって完全に実現はしなかったが、現在に至るインフラ整備を促進した。
多くの国民に夢を与えた田中と異なり、令和版のスケールは小さい。石破が具体論として示したのは、新設を目指す防災庁を含む政府機関の地方移転だった。国民が都市と地方の2拠点で活動することを支援するとも表明し、まずは政府の若手職員による2拠点活動を支援する制度を新設すると述べた。
なぜこれが列島改造につながるのかが分かりにくい上、田中と異なり、多くの国民が実利を享受できるとの想像もしがたい。
政府関係者によると、この打ち出しは石破本人の発案だという。石破は、鳥取県知事や参院議員を務めた父・二朗が死去した際、父の友人だった田中に国会議員になるよう「命令」され、銀行をやめて83年に当時の田中派の秘書になった。86年の衆院初当選は選挙区の事情などで中曽根派所属だったが、田中の言葉とされる「握った手の数しか票は出ない」をモットーとするほど敬愛している。
少数与党の困難な政権運営に加え、報道機関の世論調査で内閣支持率が不支持率を下回ることが常態化する中、師にすがる思いなのだろうが、「令和の日本列島改造」を大きく取り上げた報道はほとんどなかった。
記者会見で触れた「楽しい日本」も作家の故・堺屋太一の受け売りだ。会見では、田中のほか、石橋湛山、大平正芳、竹下登と歴代首相の名前を挙げた石破の頼みは、もはや先人しかいないとも受け止められた。
石破おろしは4月以降か
新スローガンが不発気味の石破にとって、通常国会はいばらの道となる。他党との協議では当面、年収103万円の壁(対国民民主党)、高校無償化(対日本維新の会)、企業・団体献金のあり方(対立憲民主党)が焦点となる。
昨年の臨時国会同様、野党の協力を得なければ法案は成立しない。国会で最大の壁となるのは2025年度予算案の成立だ。個別政策で国民民主、維新などと妥協できれば、予算案への賛成を得られる可能性が高くなる。
野党は予算案に反対するのが通例だが、国民民主は岸田文雄政権だった22年に、同年度予算案に賛成した過去がある。昨年の衆院選で大幅に議席を伸ばした立民も、「議論の余地もなく予算案に反対というわけではない」(党幹部)との態度で、交渉の余地はある。
なんとか3月中に予算が成立したとして、問題はその後である。大政局の号砲となる可能性が高い。
参院選は7月3日公示、20日投開票の日程で行われる見通しだ。参院選の試金石となる東京都議選は直前の6月29日投開票となる方向だ。通常国会の閉会日は6月22日まで。同日は日曜日なので、事実上は金曜日の20日に閉じることになる。参院選が行われる年の通常国会は会期を延長しないのが一般的だ。20日は都議選告示の日でもある。
ここでポイントとなるのが、立民が検討するであろう内閣不信任決議案の提出時期だ。これまでは会期末直前の提出が多い。昨年の衆院選で自民、公明両党を少数与党に転落させた立民が今回、提出を回避するとは考えにくい。与党と国民民主、維新の関係は不安定であり、両党が不信任決議案に賛成すれば可決される。すると、憲法の規定に基づき、石破は内閣総辞職か衆院解散の選択を迫られることになる。
会期末に石破内閣が総辞職した場合、自民は直ちに新たな総裁を選ばなければならない。しかし、時間がない。参院選の公示は約2週間後の7月3日に迫っている。9人が乱立し、候補者が全国を遊説した昨年のような大規模な総裁選の実施は困難で、国会議員による投票で、短期間で決めることになるだろう。
新総裁が決まれば、今度は首相指名となる。国会は6月22日で閉じるため、それまでに新総裁選出が間に合わなければ臨時国会を召集する必要がある。臨時国会開会にこぎつけたところで、先に不信任決議案で足並みをそろえた野党を相手に新総裁が首相に指名される確約はない。臨時国会を開かず、首相の石破と新総裁による「総・総分離」で参院選に臨む選択肢もあるが、自民の事情による奇策を有権者がどこまで受け入れるか。
石破が内閣総辞職ではなく衆院解散を選択した場合はどうか。おそらく衆参ダブル選に突入することになる。衆院選は7月12日公示、投開票日は参院選と同じ20日になる。
最後の衆参ダブル選は1986年で、当時の衆院は中選挙区制だった。1つの選挙区に複数の当選者が出る仕組みで、政党間の政権交代が起きにくかった。一方、96年以降の現在の小選挙区制の当選者は各選挙区1人のみ。風や勢いによって勝敗が左右されやすく、政権交代も起きやすい。現に民主党政権の誕生と下野は劇的だった。小選挙区制でのダブル選は1回も行われていない。
そもそも今回のダブル選は、石破内閣の不信任決議案が可決されることが前提となる。当然、与党に追い風が吹いているはずもなく、衆院でさらに議席を減らすどころか、現在は過半数を維持する参院でも少数与党に転落する可能性をはらむ。つまり自民、公明が野党に転落しかねない極めてリスクの高い判断となる。
決断迫られる自民
これらの日程を探ると、よほど支持を拡大しない限り、石破で参院選に臨むことは自民の下野を意味することになり得る。自民が石破を交代させるためには6月に入ってからでは遅い。2025年度予算成立後の4月には、いよいよ石破おろしを始めなければ手遅れになる。
だが、現時点では衆目の一致する有力な「ポスト石破」は見当たらない。
昨年の総裁選の決選投票で石破に惜敗した元総務相の高市早苗は次期総裁選に立候補するとみられるが、露骨な石破批判を避けている。総裁選後に自民の選対委員長に就任した小泉進次郎は衆院選敗北の責任をとって辞任した。
石破内閣の官房長官である林芳正が石破おろしに加担するとは考えにくい。総裁選で5位に食い込んだ元経済安全保障担当相の小林鷹之は「次も挑戦する」と意欲を示すが、石破批判を控えている。
本人が辞意を固めない限り、現職の首相を引きずりおろすことは容易ではない。とはいえ、このまま座して下野を待つのか、それとも石破おろしを始めて新総裁を選ぶのか。ポスト石破ら自民議員は4月以降、重大な決断を迫られることになりそうだ。
混迷必至の国際情勢
国内の政局をよそに、国際社会は激動している。トランプは大統領に就任する前の時点で、全世界に一律の輸入関税導入に向けた緊急事態宣言を検討していると報道された。
前大統領のバイデンが阻止命令を出した日本製鉄によるUSスチール買収問題もくすぶる。買収計画の破棄期限は6月18日まで延長されたが、トランプが強硬な態度に出る可能性はある。
米国第一主義を掲げた前回の任期中、トランプは日本に駐留する米軍の経費負担増加を求めた。実際に負担増となることはなかったが、再び同様の要求をしてくるかもしれない。
ウクライナに侵攻したロシアについて、トランプは大統領のプーチンとの直接交渉による早期解決に意欲を示す。ロシアとの「ディール(取引)」で何らかの譲歩をした場合、欧州各国がトランプと足並みをそろえられるかどうかは怪しい。
日本政府は、開戦時の首相だった岸田も、現在の石破も「今日のウクライナは明日の東アジアだ」と訴え、ウクライナに積極的な支援を行う。防衛費の増額で防衛力の強化にも努めているが、トランプが自国第一主義の下、米国の東アジアでのプレゼンスを弱めれば、日本の安全保障政策は抜本的な転換が必要となる。
安倍晋三政権時の政府高官だった自民議員は「1期目のトランプ氏は確かに無理な要求をしてきた。しかし、安倍さんが理路整然と『米国にとっても得だ』と説明したことで、なんとか円満な関係を築くことができた」と振り返る。しかし、22年に凶弾に倒れた安倍はもういない。
安倍と言えば、トランプの前回の大統領就任前、世界に先駆けて面会し、信頼関係構築の端緒を開いた。昨年12月に安倍の妻・昭恵の来訪を受けたトランプは石破との早期面会を受け入れると表明した。
しかし、石破は就任後の2月以降に先送りした。大統領就任前の面会では「実績が作りにくい」と外務省などが難色を示したとの話がもっぱらだが、政府高官によると、石破本人も早期訪米に消極的だったという。
訪米を再検討している2月上旬は予算案審議で連日のように石破の国会出席が続く。週末を利用した弾丸日程で訪米することも可能だが、そもそも果たしてどこまで成果を打ち出せるか。「石破構文」とも揶揄される回りくどい話法がトランプにどこまで響くのかは実に心もとない。
世界の中で日本がどんな立ち位置を目指すのか。石破には国づくりの手腕が問われている。(敬称略)
【政界】年明け通常国会でも苦境は必至 3野党との合従連衡で切り抜け図る石破首相
空疎なスローガン
石破は1月6日、首相の恒例行事である伊勢神宮(三重県伊勢市)の参拝を終えた後、年頭の記者会見に臨んだ。そこで提唱したのが「令和の日本列島改造」だ。
「これからは1人ひとりが『楽しい日本』を目指すべきだ。世界平和の下、全ての人々が安心と安全を感じ、多様な価値観を持つ1人ひとりの国民が今日より明日は良くなると実感し、自分の夢に挑戦し、自己実現を図っていける。互いが大切にし合う活力ある国家だと考えている」
石破らしい長々とした抽象論の末に、具体的な柱の筆頭として挙げたのが「令和の日本列島改造」だった。石破は「これを成功させなければ、日本に将来はないという危機感を強く持って進めていく」と意気込んだが、新味はない。石破の持論である「地方創生2.0」を推進するということでしかない。
新たなスローガンは、石破が政治の師と仰ぐ元首相・田中角栄の著書『日本列島改造論』にあやかった。
田中が1972年の自民党総裁選への立候補直前に出版した同書は、新幹線や高速道路といった高速交通網を整備し、地方の工業化も進めて都市部への集中と地方の過疎化を解消、国民全般が豊かになることを目指す内容だ。ベストセラーとなって田中は総裁選に勝利。土地投機の弊害や、オイル・ショックの影響もあって完全に実現はしなかったが、現在に至るインフラ整備を促進した。
多くの国民に夢を与えた田中と異なり、令和版のスケールは小さい。石破が具体論として示したのは、新設を目指す防災庁を含む政府機関の地方移転だった。国民が都市と地方の2拠点で活動することを支援するとも表明し、まずは政府の若手職員による2拠点活動を支援する制度を新設すると述べた。
なぜこれが列島改造につながるのかが分かりにくい上、田中と異なり、多くの国民が実利を享受できるとの想像もしがたい。
政府関係者によると、この打ち出しは石破本人の発案だという。石破は、鳥取県知事や参院議員を務めた父・二朗が死去した際、父の友人だった田中に国会議員になるよう「命令」され、銀行をやめて83年に当時の田中派の秘書になった。86年の衆院初当選は選挙区の事情などで中曽根派所属だったが、田中の言葉とされる「握った手の数しか票は出ない」をモットーとするほど敬愛している。
少数与党の困難な政権運営に加え、報道機関の世論調査で内閣支持率が不支持率を下回ることが常態化する中、師にすがる思いなのだろうが、「令和の日本列島改造」を大きく取り上げた報道はほとんどなかった。
記者会見で触れた「楽しい日本」も作家の故・堺屋太一の受け売りだ。会見では、田中のほか、石橋湛山、大平正芳、竹下登と歴代首相の名前を挙げた石破の頼みは、もはや先人しかいないとも受け止められた。
石破おろしは4月以降か
新スローガンが不発気味の石破にとって、通常国会はいばらの道となる。他党との協議では当面、年収103万円の壁(対国民民主党)、高校無償化(対日本維新の会)、企業・団体献金のあり方(対立憲民主党)が焦点となる。
昨年の臨時国会同様、野党の協力を得なければ法案は成立しない。国会で最大の壁となるのは2025年度予算案の成立だ。個別政策で国民民主、維新などと妥協できれば、予算案への賛成を得られる可能性が高くなる。
野党は予算案に反対するのが通例だが、国民民主は岸田文雄政権だった22年に、同年度予算案に賛成した過去がある。昨年の衆院選で大幅に議席を伸ばした立民も、「議論の余地もなく予算案に反対というわけではない」(党幹部)との態度で、交渉の余地はある。
なんとか3月中に予算が成立したとして、問題はその後である。大政局の号砲となる可能性が高い。
参院選は7月3日公示、20日投開票の日程で行われる見通しだ。参院選の試金石となる東京都議選は直前の6月29日投開票となる方向だ。通常国会の閉会日は6月22日まで。同日は日曜日なので、事実上は金曜日の20日に閉じることになる。参院選が行われる年の通常国会は会期を延長しないのが一般的だ。20日は都議選告示の日でもある。
ここでポイントとなるのが、立民が検討するであろう内閣不信任決議案の提出時期だ。これまでは会期末直前の提出が多い。昨年の衆院選で自民、公明両党を少数与党に転落させた立民が今回、提出を回避するとは考えにくい。与党と国民民主、維新の関係は不安定であり、両党が不信任決議案に賛成すれば可決される。すると、憲法の規定に基づき、石破は内閣総辞職か衆院解散の選択を迫られることになる。
会期末に石破内閣が総辞職した場合、自民は直ちに新たな総裁を選ばなければならない。しかし、時間がない。参院選の公示は約2週間後の7月3日に迫っている。9人が乱立し、候補者が全国を遊説した昨年のような大規模な総裁選の実施は困難で、国会議員による投票で、短期間で決めることになるだろう。
新総裁が決まれば、今度は首相指名となる。国会は6月22日で閉じるため、それまでに新総裁選出が間に合わなければ臨時国会を召集する必要がある。臨時国会開会にこぎつけたところで、先に不信任決議案で足並みをそろえた野党を相手に新総裁が首相に指名される確約はない。臨時国会を開かず、首相の石破と新総裁による「総・総分離」で参院選に臨む選択肢もあるが、自民の事情による奇策を有権者がどこまで受け入れるか。
石破が内閣総辞職ではなく衆院解散を選択した場合はどうか。おそらく衆参ダブル選に突入することになる。衆院選は7月12日公示、投開票日は参院選と同じ20日になる。
最後の衆参ダブル選は1986年で、当時の衆院は中選挙区制だった。1つの選挙区に複数の当選者が出る仕組みで、政党間の政権交代が起きにくかった。一方、96年以降の現在の小選挙区制の当選者は各選挙区1人のみ。風や勢いによって勝敗が左右されやすく、政権交代も起きやすい。現に民主党政権の誕生と下野は劇的だった。小選挙区制でのダブル選は1回も行われていない。
そもそも今回のダブル選は、石破内閣の不信任決議案が可決されることが前提となる。当然、与党に追い風が吹いているはずもなく、衆院でさらに議席を減らすどころか、現在は過半数を維持する参院でも少数与党に転落する可能性をはらむ。つまり自民、公明が野党に転落しかねない極めてリスクの高い判断となる。
決断迫られる自民
これらの日程を探ると、よほど支持を拡大しない限り、石破で参院選に臨むことは自民の下野を意味することになり得る。自民が石破を交代させるためには6月に入ってからでは遅い。2025年度予算成立後の4月には、いよいよ石破おろしを始めなければ手遅れになる。
だが、現時点では衆目の一致する有力な「ポスト石破」は見当たらない。
昨年の総裁選の決選投票で石破に惜敗した元総務相の高市早苗は次期総裁選に立候補するとみられるが、露骨な石破批判を避けている。総裁選後に自民の選対委員長に就任した小泉進次郎は衆院選敗北の責任をとって辞任した。
石破内閣の官房長官である林芳正が石破おろしに加担するとは考えにくい。総裁選で5位に食い込んだ元経済安全保障担当相の小林鷹之は「次も挑戦する」と意欲を示すが、石破批判を控えている。
本人が辞意を固めない限り、現職の首相を引きずりおろすことは容易ではない。とはいえ、このまま座して下野を待つのか、それとも石破おろしを始めて新総裁を選ぶのか。ポスト石破ら自民議員は4月以降、重大な決断を迫られることになりそうだ。
混迷必至の国際情勢
国内の政局をよそに、国際社会は激動している。トランプは大統領に就任する前の時点で、全世界に一律の輸入関税導入に向けた緊急事態宣言を検討していると報道された。
前大統領のバイデンが阻止命令を出した日本製鉄によるUSスチール買収問題もくすぶる。買収計画の破棄期限は6月18日まで延長されたが、トランプが強硬な態度に出る可能性はある。
米国第一主義を掲げた前回の任期中、トランプは日本に駐留する米軍の経費負担増加を求めた。実際に負担増となることはなかったが、再び同様の要求をしてくるかもしれない。
ウクライナに侵攻したロシアについて、トランプは大統領のプーチンとの直接交渉による早期解決に意欲を示す。ロシアとの「ディール(取引)」で何らかの譲歩をした場合、欧州各国がトランプと足並みをそろえられるかどうかは怪しい。
日本政府は、開戦時の首相だった岸田も、現在の石破も「今日のウクライナは明日の東アジアだ」と訴え、ウクライナに積極的な支援を行う。防衛費の増額で防衛力の強化にも努めているが、トランプが自国第一主義の下、米国の東アジアでのプレゼンスを弱めれば、日本の安全保障政策は抜本的な転換が必要となる。
安倍晋三政権時の政府高官だった自民議員は「1期目のトランプ氏は確かに無理な要求をしてきた。しかし、安倍さんが理路整然と『米国にとっても得だ』と説明したことで、なんとか円満な関係を築くことができた」と振り返る。しかし、22年に凶弾に倒れた安倍はもういない。
安倍と言えば、トランプの前回の大統領就任前、世界に先駆けて面会し、信頼関係構築の端緒を開いた。昨年12月に安倍の妻・昭恵の来訪を受けたトランプは石破との早期面会を受け入れると表明した。
しかし、石破は就任後の2月以降に先送りした。大統領就任前の面会では「実績が作りにくい」と外務省などが難色を示したとの話がもっぱらだが、政府高官によると、石破本人も早期訪米に消極的だったという。
訪米を再検討している2月上旬は予算案審議で連日のように石破の国会出席が続く。週末を利用した弾丸日程で訪米することも可能だが、そもそも果たしてどこまで成果を打ち出せるか。「石破構文」とも揶揄される回りくどい話法がトランプにどこまで響くのかは実に心もとない。
世界の中で日本がどんな立ち位置を目指すのか。石破には国づくりの手腕が問われている。(敬称略)
【政界】年明け通常国会でも苦境は必至 3野党との合従連衡で切り抜け図る石破首相