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【厚生労働省】止まらぬ社会保障費の増加 薬価改定頼みの財源捻出も限界?

財界オンライン 2025年2月5日 18時0分

昨年末に閣議決定した政府の2025年度一般会計予算案で、社会保障関係費は前年度比5585億円増の38兆2778億円となった。物価高を踏まえた高齢化に伴う自然増は6500億円程度と見込んだが、厚生労働省が制度改革を講じて約1300億円を圧縮した。

 制度改革のうち、約650億円の削減に貢献したのが医薬品の公定価格「薬価」のマイナス改定だ。

 市場実勢価格と薬価の価格差を解消することで、財源を捻出できる仕組みだが、同省幹部は「薬価引き下げは製薬業界の経営に悪影響を及ぼすため、創薬力低下や薬の供給不安といった深刻な副作用も引き起こしてしまう」と悩ましげに語る。

 薬価は従来、診療報酬と共に原則2年に1回改定してきたが、政府は21年度から毎年改定している。医薬品の取引現場では卸業者と医療機関の価格交渉により、市場実勢価格は薬価より一定程度安くなる。

 厚労省は薬価の引き下げによって生み出された財源の一部を、診療報酬の医療技術料の引き上げなどに充てている。

 今年9月分の取引の集計では、実勢価格が薬価を平均で約5・2%下回っていた。こうした価格差は「平均乖離率」と呼ばれ、1990年代には20%前後もあった。

 しかし、「数々の制度改革による薬価抑制や近年の物価高によって製薬会社や卸業者が薬を安売りできなくなってきた」(製薬関係者)という。

 自民党内の一部や国民民主党は25年度の薬価改定を見送るよう主張。国民民主党の議員は「製薬業界は採算が取れなくなり国民に必要な薬が届かなくなる」と訴えた。政府は毎年の社会保障費の削減に加え、子育て支援策の充実などに充てる財源も捻出する必要がある。

 そこで従来は一律適用していた引き下げルールを見直し、品目ごとの性格に応じてメリハリを付けて改定した。とはいえ、平均乖離率の低下も限界に近く、冒頭の厚労省幹部は「薬価改定頼みの予算編成は考え直す時期に来ている」と話す。


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