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『DX』で中小企業の生産性向上をどう進めていくか? 答える人・ミロク情報サービス社長 是枝 周樹

財界オンライン 2021年8月6日 18時0分

経営改善につなげていく様々なサービスを提供

 ―― コロナ禍で中堅・中小企業の経営には大きな打撃となっているのですが、この辺の中小企業の現状を是枝さんはどのように捉えていますか。

 是枝 政府は持続化給付金や時短要請に応じた飲食店への協力金など、新型コロナウイルス感染症に関連した様々な経済対策を打ち出しています。

 ただ、これはすでに給付金が配られているところと配られていないところがあって、企業によっても申請しているところ、申請していないところがバラバラです。政府や官僚を批判するわけではありませんが、やはりこれはオペレーションに問題があったのだろうと思います。

 こうした手立てを打つということは必要なことだと思いますが、財政投融資などを加えた財政支出は40兆円になる。これらは企業が借り入れしやすいようにするために政策的な保護をしてきた方と、いわゆるバラマキをした方の2つの意味合いがあると思うんですね。

 資金を借り入れたということは、タダであげるお金とは違うわけで、そろそろ支払い期間を迎えるようになるわけですから、こうしたファイナンスの問題がこれからまたクローズアップされてくるだろうと思います。

 ―― あと1年くらいはある程度の財政措置もやむを得ない面があるでしょうね。

 是枝 ええ。その意味では、会計事務所がしっかり顧客企業のお金の管理をしてあげることがとても重要なことなのではないかと思います。

 もう一つは、すでにそういう形で貸し出しをしているので、追加融資がなかなかできないという問題もあります。ですから、必ずしも銀行だけではなく、ノンバンクの力も借りたりしながら社会全体で回復を目指していく他ないだろうと思います。

 やはり、大事なことはスピード感をもって対応していくことですから、DX(デジタルトランスフォーメーション)というのはここでもカギになります。

 ―― 日本経済を活性化するためには、中小企業の生産性向上がカギですから、まだまだやるべきことはあるということですね。

 是枝 やはり、中小企業は定量的なデータというものが無かったりするので、自分たちの業界の中でどこのポジションにいて、強いものは何なのかとか、弱いものが何なのかというのが、分からない企業も多いと思うんですよ。ですから、そういったところをしっかり分かるような指標を出して、経営改善につなげていくサービスを提供していきたいですね。

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会計事務所を町のCFOに

 ―― デジタル化、DX化といってもやることは多いと思うんですが、企業はどんなところから手を付けていけばいいと考えますか。

 是枝 やらなければならないことは本当にたくさんあるんですが、まずは経済の全体観をきちんと捉えなければならない。例えば、アフターコロナの商取引はどうなるのか? そこの決済はどうなるのかということを考えなければならない。

 Eコマース(電子商取引)だとアマゾンなど、いろいろな企業が参入していますが、中小企業間の取引をいかにDX化していくかということも考えなければなりません。

 これをもう少し深く考えると、商取引を起こすまでの行為と、発生させる商談をどうするべきか? それから最終的にはおのおのの中小企業の情報発信力ですね。製品やサービスのメリットをきちんと発信していかないといけない。企業を強くするというのは、こうしたトータルな戦略が求められますので、どこから手を付けるというよりは、全てをやる必要がある。

 ―― そうなると、ビジネスのあり方そのものがガラリと変わってくる。

 是枝 仰る通りです。われわれが考えているDXというのは、業務システムの刷新を含めて、経営のあり方を改善していくことです。

 ―― ということは、中小企業はもちろん、会計事務所もそれに合わせた経営が求められるようになりますね。

 是枝 ええ。これからの会計事務所に必要なことは、顧問先企業の体力が厳しいのであれば、地域の金融機関とも連携してローンを組むとか、新たな身の丈に合った財務戦略を一緒につくっていく必要があると思います。

 つまり、会計事務所はこれから町のCFO(最高財務責任者=Chief Financial Officer)にならなければならない。会計事務所というのは当然、顧問先企業の財務状況を理解していますので、顧問先企業のCFOとしての役割を果たせるかどうかが、会計事務所にとっても非常に大事になってくると思います。

 ―― 多くの中小企業ではCFOを置く余裕もないので、会計事務所の方にその役割を担ってもらえると有難いですね。

 是枝 そうなんです。ですから、会計事務所がCFOの役割を担い、財務戦略、ファイナンス戦略を支援できれば、大きな付加価値を生むことができる。そして、顧問先の企業が安心して本業に打ち込めるような環境をつくっていくことが、これからの会計事務所には求められるのだと思います。

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