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【ソースネクスト:松田憲幸会長兼CEO】米シリコンバレー移住を通じて

財界オンライン 2021年8月15日 18時0分

2012年の米シリコンバレー移住から9年近くが経ちました。外から日本を見ると、いろいろなことに気づかされます。中でも最も大きな違いは「多様性」に対する考え方です。

 例えば、休日。日本では夏休み、年末年始、ゴールデンウィークと全国一律が当たり前です。その結果、特定した日に人々が集中し、観光地の混雑や宿泊施設の料金が上がるといった課題を抱え続けています。

 しかし、米国ではわずか20キロも離れていないところで夏休みの日程が2週間違うことも普通です。地域ごとに長期休暇を分散させて設定しています。そのため、旅行先も混雑することなく、ゆっくりと過ごせるのです。家族を大切にするための配慮と言えます。

 学校のハロウィンパレードで仮装をしていない子供がいても、それを咎められることはありません。仮装をしない自由が認められているのです。しかし日本だったらどうでしょうか。周りと違う行動をしたら協調性がないといった色眼鏡で見られてしまうのではないでしょうか。

 これらは一例ですが、米国を見ることを通じて多様性の大切さを学びました。今後、日本の人口は減少していきますが、世界の人口は増えていきます。日本からの視点に立っているだけでは、グローバルな競争で生き残ることは難しいと思います。

 シリコンバレーでは、20代の若者でもリスクを背負ってチャレンジすることが当たり前です。シリコンバレーが全て正しいわけではありませんが、日本にいると、そういう発想がなかなか出てこないのではと思います。

 私もシリコンバレーに出張するのではなく、実際に住むことで米国の文化・風習などを肌感覚で多少なりとも知ることができました。また、日本という世界的に見て非常に偏った場所で作った製品を米国で売ろうとしても、失敗することが多いのは普通だということにも気づいたのです。そこで私が考えたことは、製品を米国で売ることではなく、まず、米国から製品を仕入れることに集中する戦略でした。

 この戦略はコロナ禍でも成果につながりました。それまで当社の売上高の約半分をAI翻訳機「ポケトーク」が占めていたのですが、コロナ禍で海外旅行やインバウンド需要が一気にしぼみ始めました。私も2月頭に梅田の家電量販店の店頭に立ってポケトークの販売をしていたのですが、この需要喪失には危機感を感じました。

 次の柱となる製品が必要だ──。こんな問題意識を持って、販売しようと思った製品が、オンライン会議に必要なカメラやマイク、スピーカーを搭載し、持ち運びもできる「ミーティングオウル」でした。まさに、このパンデミックの時代の中、潜在的な需要にマッチした製品だと感じました。

 3月初めには米国で同製品の会社のCEOに交渉を持ち掛け、50日後に契約を締結。7月末から日本での販売を開始しました。このコロナ禍で発売した新製品は1台10万円以上の製品にもかかわらず、1・5万台を売り上げ、ポケトークが厳しい中でも40四半期連続黒字の実現に寄与してくれました。6月に発表したリモート会議向け製品の新ブランド「KAIGIO(カイギオ)」にも期待しています。

 当社は今年8月、創業25周年を迎えます。今後も「挑戦を楽しむ」という当社の掲げるスローガンの通り、「日本初」「業界初」にこだわり、世界中の人々に製品を通じて喜びと感動を広げていけるように全社員で、全力で取り組んで参ります。

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