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【金属?それともゴム?】「生物模倣技術」で開発された三菱マテリアルの『金属ゴム』

財界オンライン 2021年10月1日 18時0分

「ゴムは耐熱性のものでも融点が300度程度。『金属ゴム』ならアルミの場合は600度、鉄の場合は1500度まで対応できます」──。

 三菱マテリアルが、金属と同等の高温環境で使用でき、ゴムと同等の柔軟性を発揮する新素材『金属ゴム』を開発した。

『金属ゴム』とは三菱マテリアルが発明した技術・部材に対する商標で、「耐熱性を維持したまま、表面にゴム特性を付与した」新素材。

 これまで耐熱性が求められる用途にはゴムではなく金属材料が使われてきたため、新事業開発部が〝耐熱性〟と〝柔軟性〟を両立する新材料の開発に着手。自社の技術を棚卸し、中央研究所で技術開発に成功した。

 開発のカギとなったのが「バイオメティクス」という生物模倣技術。古くから注目されている分野だが、電子顕微鏡の進歩で技術開発が進んでいるという。

 例えば、撥水加工は従来の発想ではフッ素ゴムを活用するが、生物模倣ではハスの葉の凹凸形状を模倣して撥水機能を出す。

 今回の『金属ゴム』では、接着機能を〝粘着剤〟ではなく、〝ヤモリの足裏の剛毛〟から発想し、表面高機能化技術を実現した。

 金属やセラミックでは三菱マテリアルが創業以来、培ってきた技術がある。そこに成膜、蒸着、めっき、エッチング、レーザー、切削加工など様々な微細形状技術を組み合わせ、「金属材料の表面に微細構造を施すことで機能性を付与」している。

 サンプルを配布し、航空宇宙や半導体、医療などの分野で用途開発を進めており、「2023~24年には商用化したい」という。

「現用品のない」画期的な新素材のため、幅広い用途開発も期待できる。そこで「技術の進展をサイトを通じて公表する」など、市場の声を積極的に取り入れて用途開発を進めていく方針。

 メーカーにとって成長の原動力は新製品。小野直樹社長のもと、構造改革を進めている同社だが、新たな発想で生まれた『金属ゴム』は同社の変革の表われとも言えそうだ。

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