自分の人生をどう締め括るか──。スマートフォンで不動産の相続手続きを完結できるサービスや家族間で財産を信託できるクラウドサービスなど、高齢化社会の課題解決を図る「エイジテック」サービスが続々登場している。クラウドファンディングの先駆者であるREADYFORも今年4月、新たに遺贈寄付サービスを開始。人生最期の思いを託す遺贈寄付サービスとは──。
本誌・北川 文子 Text by Kitagawa Ayako
国庫に入る遺産は603億円
「遺贈寄付となると、その方の人生の集大成を受けることになるので、遺言も含めて、その方の終活と言いますか、諸々のご相談を受けて対応しています」
こう語るのは、レディーフォー遺贈寄付コンサルタントの北山陽一氏。
北山氏はみずほ信託銀行出身。信託銀行を通じた寄付の場合、遺言の受託がメインだが、遺贈寄付からスタートすると「人生の集大成のご相談を賜るというイメージです」とその違いを語る。
インターネットを通じて、広く個人から資金を募るクラウドファンディングの大手・READYFORが新たに始めたのが「遺贈寄付」事業。
一般的に「遺贈寄付」は遺言書を作成し、財産を特定の個人や団体に無償で贈与することだが、レディーフォーでは遺言による寄付だけでなく「相続財産」や「生命保険・信託による寄付」も含めて遺贈寄付と呼び、生前寄付の相談も受けている。
遺贈寄付というと、財産をたくさん持っている人の話と思われがちだが、金額の制限はなく、生きている限り、相続と無関係の人もいない。
だが、「気軽に相談できる場所がなかった」り、「手続きが難しかった」り、「遺言書が有効でなく思いが届かなかった」ということが起きている。
また、寄付を受け入れる団体側も「リソースや知識の面で受け入れが困難」だったり、非営利団体だと「意義のある活動をしていても活動内容が知られていない」ということもある。
レディーフォーは2011年の創業以来、2万件のプロジェクトで約200億円の支援金を集めてきた経験から「社会的な活動をされている団体さんのデータや情報をたくさん持っている」。
そこで、クラウドファンディングで”個人”と”組織や団体”をつなげてきたノウハウを活かし、”遺贈寄付をしたい人”と”寄付を受ける団体”をマッチングすることで「最期に少しだけでも気持ちを実現できる方を増やしていきたい」という。
実は、2020年度、相続人不在で国家に入った遺産は603億円にのぼる。生涯未婚率が増えていることに加え、「家族はいるが相続させたくない」という人も増えている。
家族がいても同居はしていなかったり、仲が良いわけでもなく「遺産を残す関係ではない」という人も一定数いる。
レディーフォーは遺贈寄付事業を今年4月からスタートしたが、こうした時代背景もあり、「相談の電話や問い合わせ、資料請求などの反響が月100件近くある」という。
すでに成立した案件も出てきている。
誰もがやりたいことを実現できる世の中に!
「家族をがんで亡くされたので、がん患者さんを支援している団体に寄付したいという方がおられ、直筆の遺言書でそれを適えたいということで、司法書士をご紹介して、お手伝いさせていただきました」(北山氏)
このケースでは、依頼者はすでに寄付先の団体をある程度決めていたが、団体にどう連絡をし、どう遺言を書けば良いのかがわからず、レディーフォーに相談をしてきたという。
そこで、レデイーフォーは司法書士を紹介し、遺言を再作成し、寄付を完了した。
別のケースでは、姉妹で母親の遺産を相続したが、有価証券のまま寄付したいという要望。姉妹はすでに様々な団体に連絡を入れて相談をしていたが、有価証券の寄付は受け入れられず、レディーフォーに相談。
レディーフォーが有価証券で現物寄付できる受け入れ先を探し、遺贈を実現した。
その他にも「特定の生徒さんに奨学金を出したい」という相談には自治体や地域の支援団体に相談をしながら受け入れ先を探したり、
「自宅を処分して、老人ホームに入ってから寄付先を決める」という相談では、老人ホーム関連のサービスを提供している業者を紹介。
また、死後事務委任のサービス提供業者を紹介したり、地域包括センターに連絡をするなどして幅広い相談に対応している。
レディーフォー1社だけでは対応しきれない部分も多いため、他社との協業も進め、三菱UFJ信託銀行と遺贈寄付で業務提携。今後も地銀の他、税理士や司法書士などの士業とも連携し、遺贈寄付できる環境を整備していく。
現在、「がん検診の推進や患者・家族の支援」「アジアの子どもたちへの小児医療支援」
「虐待、格差下の子どもたちへの支援活動」「人とサンゴと地球を100年後に残す」「介助犬そして犬たちの個性を活かした活動」など70以上の寄付先があるが、寄付先として手を挙げた団体があれば「寄付者が安心して寄付できるか」など、一定の審査をしたうえで寄付先に加えていく。
寄付する側の個人としては、寄付先の信頼性は重要な確認事項だが、「あなたの団体は信頼できますか? 」といったことは直接聞きづらい。
団体側も、遺言が有効でなければ受け入れられず、受け取りにくい財産への対応など個別の対応はハードルが高い。
その意味でも、レディーフォーが間に入り、仲介役を果たす意義は大きい。
レディーフォーのビジョンは「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」こと。
人生最期の思いを実現させるプラットフォームの構築で、そのビジョンの達成を進めている。
【倉本聰】捨てる
本誌・北川 文子 Text by Kitagawa Ayako
国庫に入る遺産は603億円
「遺贈寄付となると、その方の人生の集大成を受けることになるので、遺言も含めて、その方の終活と言いますか、諸々のご相談を受けて対応しています」
こう語るのは、レディーフォー遺贈寄付コンサルタントの北山陽一氏。
北山氏はみずほ信託銀行出身。信託銀行を通じた寄付の場合、遺言の受託がメインだが、遺贈寄付からスタートすると「人生の集大成のご相談を賜るというイメージです」とその違いを語る。
インターネットを通じて、広く個人から資金を募るクラウドファンディングの大手・READYFORが新たに始めたのが「遺贈寄付」事業。
一般的に「遺贈寄付」は遺言書を作成し、財産を特定の個人や団体に無償で贈与することだが、レディーフォーでは遺言による寄付だけでなく「相続財産」や「生命保険・信託による寄付」も含めて遺贈寄付と呼び、生前寄付の相談も受けている。
遺贈寄付というと、財産をたくさん持っている人の話と思われがちだが、金額の制限はなく、生きている限り、相続と無関係の人もいない。
だが、「気軽に相談できる場所がなかった」り、「手続きが難しかった」り、「遺言書が有効でなく思いが届かなかった」ということが起きている。
また、寄付を受け入れる団体側も「リソースや知識の面で受け入れが困難」だったり、非営利団体だと「意義のある活動をしていても活動内容が知られていない」ということもある。
レディーフォーは2011年の創業以来、2万件のプロジェクトで約200億円の支援金を集めてきた経験から「社会的な活動をされている団体さんのデータや情報をたくさん持っている」。
そこで、クラウドファンディングで”個人”と”組織や団体”をつなげてきたノウハウを活かし、”遺贈寄付をしたい人”と”寄付を受ける団体”をマッチングすることで「最期に少しだけでも気持ちを実現できる方を増やしていきたい」という。
実は、2020年度、相続人不在で国家に入った遺産は603億円にのぼる。生涯未婚率が増えていることに加え、「家族はいるが相続させたくない」という人も増えている。
家族がいても同居はしていなかったり、仲が良いわけでもなく「遺産を残す関係ではない」という人も一定数いる。
レディーフォーは遺贈寄付事業を今年4月からスタートしたが、こうした時代背景もあり、「相談の電話や問い合わせ、資料請求などの反響が月100件近くある」という。
すでに成立した案件も出てきている。
誰もがやりたいことを実現できる世の中に!
「家族をがんで亡くされたので、がん患者さんを支援している団体に寄付したいという方がおられ、直筆の遺言書でそれを適えたいということで、司法書士をご紹介して、お手伝いさせていただきました」(北山氏)
このケースでは、依頼者はすでに寄付先の団体をある程度決めていたが、団体にどう連絡をし、どう遺言を書けば良いのかがわからず、レディーフォーに相談をしてきたという。
そこで、レデイーフォーは司法書士を紹介し、遺言を再作成し、寄付を完了した。
別のケースでは、姉妹で母親の遺産を相続したが、有価証券のまま寄付したいという要望。姉妹はすでに様々な団体に連絡を入れて相談をしていたが、有価証券の寄付は受け入れられず、レディーフォーに相談。
レディーフォーが有価証券で現物寄付できる受け入れ先を探し、遺贈を実現した。
その他にも「特定の生徒さんに奨学金を出したい」という相談には自治体や地域の支援団体に相談をしながら受け入れ先を探したり、
「自宅を処分して、老人ホームに入ってから寄付先を決める」という相談では、老人ホーム関連のサービスを提供している業者を紹介。
また、死後事務委任のサービス提供業者を紹介したり、地域包括センターに連絡をするなどして幅広い相談に対応している。
レディーフォー1社だけでは対応しきれない部分も多いため、他社との協業も進め、三菱UFJ信託銀行と遺贈寄付で業務提携。今後も地銀の他、税理士や司法書士などの士業とも連携し、遺贈寄付できる環境を整備していく。
現在、「がん検診の推進や患者・家族の支援」「アジアの子どもたちへの小児医療支援」
「虐待、格差下の子どもたちへの支援活動」「人とサンゴと地球を100年後に残す」「介助犬そして犬たちの個性を活かした活動」など70以上の寄付先があるが、寄付先として手を挙げた団体があれば「寄付者が安心して寄付できるか」など、一定の審査をしたうえで寄付先に加えていく。
寄付する側の個人としては、寄付先の信頼性は重要な確認事項だが、「あなたの団体は信頼できますか? 」といったことは直接聞きづらい。
団体側も、遺言が有効でなければ受け入れられず、受け取りにくい財産への対応など個別の対応はハードルが高い。
その意味でも、レディーフォーが間に入り、仲介役を果たす意義は大きい。
レディーフォーのビジョンは「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」こと。
人生最期の思いを実現させるプラットフォームの構築で、そのビジョンの達成を進めている。
【倉本聰】捨てる