木村皓一さんの思い
「世界の子供に笑顔と安心を! 」──。本誌で連載中のミキハウスグループ代表・木村皓一さんの経営理念である。
将来の社会を背負う子供や乳幼児たちに至福を与えたいという思いで、木村さんは1971年(昭和46年)に創業。乳幼児たちには肌にやさしく、温かく身を包んでくれる肌着を、子供たちには1年1年と健やかに育つ服をという思いで、木村さんは会社を興した。
1971年といえば、日本の敗戦から26年が経ち、いわば時代の転換期。同年、ニクソン・ショックが起き、ドルは金との交換停止となり、ドルの通貨価値は切り下げられる方向で動き、73年には変動相場制へ移行。いわば世界の経済システム、制度の大きな変革が起きた時期である。
世界最高の子供服を
木村さんは、ひたすら、「子どもたちに至福を届けよう」との思いで事業に打ち込んできた。
最高級の品質をつくり上げ、顧客の親と子供たちに喜んでもらえれば、世界中で受け入れてもらえるはずという木村さんの固い信念。
最高の品質の品をそれなりの値段で売る──。いい品質のものは必ず、その地に根を下ろす。
「はい、特にオギャーと生まれた赤ちゃんを包むということですから、安全とか安心が売りになると思います。ですから、気が付いてみたら、ベビーシューズでも毎年100万足売っていますし、地道にやってきたことが、世界中の人たちに認められたというか、いいシューズだねということで世界中に売れています。100万足のうち、55万足、55%は海外で使われています」
信頼感、そして共存共栄
ネット通販の時代といわれるが、これについてはどうか?
「全体で約10%はネット通販ですが、子供服、特に赤ちゃんのところは難しくて、お客様も手に取って確かめられます。やはり風合いとかにこだわりがあるんですよ」
木村さんはこう続ける。
「だから、肌着1つにしたって、シルクからウールから、綿でも海島綿やらオーガニックやら、こだわりを持って取り扱っています」
海島綿。高級綿として知られ、糸が長く、ふわふわして柔らかいという特徴を持つ。太陽の光を燦燦と浴び、海の香りの中で育つカリブ海産の綿である。赤ちゃんの敏感な肌を包み込むために、こうした素材選択までこだわるという経営。顧客との間にある『信頼感』を大事にする経営でもある。
そして海外店を担う現地のオーナーたちとの『信頼感』の醸成。
「少子化を見越して、海外への布石を打ってきました。30年前からフランスに直営店を作って運営してきて、そこでうちのファンになったお客さんがロンドン、モスクワ、トロント、キエフなど世界各地でショップオーナーになって、ミキハウスを広げてくれました」
日本人スタッフを現地の店に派遣するというやり方では現地に根を下ろすのは難しいとして、現地の人たちとの連携で市場開拓をしてきた。
それに加え、海外籍で日本に留学している学生の新規採用にも注力。正社員600人のうち、約100人は海外籍の社員である。
「毎年、2万人位の学生さんから就職の申し込みがありますが、海外籍の方は本当に優秀ですよ。日本語も流暢だし、日本の歴史や文化もよく知っています。何より自分の成長や報酬に対しても貪欲です。今では新卒で採用させていただく学生さんのうち、半数は海外籍ですね」とダイバーシティ経営を心がけているという。
創業当初から、グローバル市場を意識してきた木村さんの思想は、人材採用面でも花開いている。
ソニー好調の背景に〝感動〟
コロナ危機の中で、ソニーグループの業績が好調。2021年3月期は連結純利益が1兆円を超え、前の期の2倍になった。今期(22年3月期)も攻めの経営が続く。
同社CEO(最高経営責任者)で会長兼社長の吉田憲一郎さんは、同社の主要収益源であるエンターテインメント部門(ゲーム、映画、音楽など)の顧客基盤を「10億人とつながるものにしたい」と語る。
同社傘下のアニプレックスが企画制作したアニメ『鬼滅の刃』は昨年映画化され、国内で最高興行実績をあげた。
同社はコンテンツ制作(メーカー)としては強い存在だが、配信サービスはまだ課題もある。
例えば、映像配信サービスでは、有料会員数2億700万人の米ネットフリックス、同2億人のアマゾンプライム、同1億5900万人のウォルト・ディズニーなどなどが大手だが、ソニーの場合、プレイステーションネットワークを中心に、現在、直接繋がっているのは約1億6千万人。
「10億人の顧客基盤づくり」と言っても、既存の巨大プラットフォーマーと敵対するわけではなく、吉田さん自身、「音楽はスポティファイ・テクノロジーや米アップルと組んだ方が世界に感動を届けられます」とこれらプラットフォーマーと連携していく方向だ。
ただ、顧客と直接つながる独自の道も徐々に構築していく考えも示す。「ええ、日本の人口は約1億2000万人ですが、世界には70億人以上の人がいます。日・米・欧はもちろん、インドでもソニー・ピクチャーズ(映画)がチャンネル事業をやっていますし、世界の人たちに感動してもらう作品を届けたいですね」と語る。
「Fill the world with emotion,through the power of creativityand technology(クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす)」をPurpose(存在意義)と定め、攻めの経営が続く。
ドン・キホーテの活躍に
国という存在をどう捉え、企業活動のカジ取りをどう進めていくか──。
国民の消費生活に直結する業界で異彩を放ってきた『ドン・キホーテ』(社名はパン・パシフィック・インターナショナル・ホールディングス)の創業会長兼最高顧問、安田隆夫さん(1949年生まれ)は今、シンガポールを中心にASEAN諸国で事業を展開中。
同社は1978年の創業以来、消費者の関心が高い生活用品、雑貨を開発、急成長を遂げてきた。
その安田さんは今、シンガポールに居を移し、アジアをにらむ経営を展開。安田さんは、「日本から商材を輸入して売っていて、これだけの品がこの値段で買えるとアジア諸国で喜ばれています」と事業に手応えを感じつつも、「日本が円安傾向になっているのが気懸りです」とも付け加える。
普通、円安は輸出での手取りが増えて喜ばれるが、一方で〝国力の低下〟という側面を持つ。
安田さんの事業にとっても、円安は好都合な面もあるが、日本の経営者として、「国力の低下は気懸りです」ということ。日本の立ち位置を考えさせられる話である。日本という国の針路とあるべき姿を考えるときである。
【おすすめ記事】社会課題解決を資金面で支える【READY FOR・米良はるか】のコロナ危機の今こそ、「人と人のつながりを」
「世界の子供に笑顔と安心を! 」──。本誌で連載中のミキハウスグループ代表・木村皓一さんの経営理念である。
将来の社会を背負う子供や乳幼児たちに至福を与えたいという思いで、木村さんは1971年(昭和46年)に創業。乳幼児たちには肌にやさしく、温かく身を包んでくれる肌着を、子供たちには1年1年と健やかに育つ服をという思いで、木村さんは会社を興した。
1971年といえば、日本の敗戦から26年が経ち、いわば時代の転換期。同年、ニクソン・ショックが起き、ドルは金との交換停止となり、ドルの通貨価値は切り下げられる方向で動き、73年には変動相場制へ移行。いわば世界の経済システム、制度の大きな変革が起きた時期である。
世界最高の子供服を
木村さんは、ひたすら、「子どもたちに至福を届けよう」との思いで事業に打ち込んできた。
最高級の品質をつくり上げ、顧客の親と子供たちに喜んでもらえれば、世界中で受け入れてもらえるはずという木村さんの固い信念。
最高の品質の品をそれなりの値段で売る──。いい品質のものは必ず、その地に根を下ろす。
「はい、特にオギャーと生まれた赤ちゃんを包むということですから、安全とか安心が売りになると思います。ですから、気が付いてみたら、ベビーシューズでも毎年100万足売っていますし、地道にやってきたことが、世界中の人たちに認められたというか、いいシューズだねということで世界中に売れています。100万足のうち、55万足、55%は海外で使われています」
信頼感、そして共存共栄
ネット通販の時代といわれるが、これについてはどうか?
「全体で約10%はネット通販ですが、子供服、特に赤ちゃんのところは難しくて、お客様も手に取って確かめられます。やはり風合いとかにこだわりがあるんですよ」
木村さんはこう続ける。
「だから、肌着1つにしたって、シルクからウールから、綿でも海島綿やらオーガニックやら、こだわりを持って取り扱っています」
海島綿。高級綿として知られ、糸が長く、ふわふわして柔らかいという特徴を持つ。太陽の光を燦燦と浴び、海の香りの中で育つカリブ海産の綿である。赤ちゃんの敏感な肌を包み込むために、こうした素材選択までこだわるという経営。顧客との間にある『信頼感』を大事にする経営でもある。
そして海外店を担う現地のオーナーたちとの『信頼感』の醸成。
「少子化を見越して、海外への布石を打ってきました。30年前からフランスに直営店を作って運営してきて、そこでうちのファンになったお客さんがロンドン、モスクワ、トロント、キエフなど世界各地でショップオーナーになって、ミキハウスを広げてくれました」
日本人スタッフを現地の店に派遣するというやり方では現地に根を下ろすのは難しいとして、現地の人たちとの連携で市場開拓をしてきた。
それに加え、海外籍で日本に留学している学生の新規採用にも注力。正社員600人のうち、約100人は海外籍の社員である。
「毎年、2万人位の学生さんから就職の申し込みがありますが、海外籍の方は本当に優秀ですよ。日本語も流暢だし、日本の歴史や文化もよく知っています。何より自分の成長や報酬に対しても貪欲です。今では新卒で採用させていただく学生さんのうち、半数は海外籍ですね」とダイバーシティ経営を心がけているという。
創業当初から、グローバル市場を意識してきた木村さんの思想は、人材採用面でも花開いている。
ソニー好調の背景に〝感動〟
コロナ危機の中で、ソニーグループの業績が好調。2021年3月期は連結純利益が1兆円を超え、前の期の2倍になった。今期(22年3月期)も攻めの経営が続く。
同社CEO(最高経営責任者)で会長兼社長の吉田憲一郎さんは、同社の主要収益源であるエンターテインメント部門(ゲーム、映画、音楽など)の顧客基盤を「10億人とつながるものにしたい」と語る。
同社傘下のアニプレックスが企画制作したアニメ『鬼滅の刃』は昨年映画化され、国内で最高興行実績をあげた。
同社はコンテンツ制作(メーカー)としては強い存在だが、配信サービスはまだ課題もある。
例えば、映像配信サービスでは、有料会員数2億700万人の米ネットフリックス、同2億人のアマゾンプライム、同1億5900万人のウォルト・ディズニーなどなどが大手だが、ソニーの場合、プレイステーションネットワークを中心に、現在、直接繋がっているのは約1億6千万人。
「10億人の顧客基盤づくり」と言っても、既存の巨大プラットフォーマーと敵対するわけではなく、吉田さん自身、「音楽はスポティファイ・テクノロジーや米アップルと組んだ方が世界に感動を届けられます」とこれらプラットフォーマーと連携していく方向だ。
ただ、顧客と直接つながる独自の道も徐々に構築していく考えも示す。「ええ、日本の人口は約1億2000万人ですが、世界には70億人以上の人がいます。日・米・欧はもちろん、インドでもソニー・ピクチャーズ(映画)がチャンネル事業をやっていますし、世界の人たちに感動してもらう作品を届けたいですね」と語る。
「Fill the world with emotion,through the power of creativityand technology(クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす)」をPurpose(存在意義)と定め、攻めの経営が続く。
ドン・キホーテの活躍に
国という存在をどう捉え、企業活動のカジ取りをどう進めていくか──。
国民の消費生活に直結する業界で異彩を放ってきた『ドン・キホーテ』(社名はパン・パシフィック・インターナショナル・ホールディングス)の創業会長兼最高顧問、安田隆夫さん(1949年生まれ)は今、シンガポールを中心にASEAN諸国で事業を展開中。
同社は1978年の創業以来、消費者の関心が高い生活用品、雑貨を開発、急成長を遂げてきた。
その安田さんは今、シンガポールに居を移し、アジアをにらむ経営を展開。安田さんは、「日本から商材を輸入して売っていて、これだけの品がこの値段で買えるとアジア諸国で喜ばれています」と事業に手応えを感じつつも、「日本が円安傾向になっているのが気懸りです」とも付け加える。
普通、円安は輸出での手取りが増えて喜ばれるが、一方で〝国力の低下〟という側面を持つ。
安田さんの事業にとっても、円安は好都合な面もあるが、日本の経営者として、「国力の低下は気懸りです」ということ。日本の立ち位置を考えさせられる話である。日本という国の針路とあるべき姿を考えるときである。
【おすすめ記事】社会課題解決を資金面で支える【READY FOR・米良はるか】のコロナ危機の今こそ、「人と人のつながりを」