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「豚が空を飛ぶとき」? あり得ないことを表す英語の成句

財経新聞 2024年7月4日 10時52分

 英語には豚に関することわざや成句がたくさんある。前回は「high on the hog」、「贅沢に暮らす」という意味の成句を紹介したが、今回紹介するのは豚を使ってあり得ないことを表現する成句だ。起源や使用例も併せて解説したい。

■When Pigs Fly

 「when pigs fly」は、文字通りに訳すなら「豚が飛ぶとき」となるが、一般的には「あり得ないこと」や「絶対に起こり得ない出来事」を指す表現として用いられる。

 現実には不可能な事態をユーモラスに表現しているわけだ。日本語で似た表現を探すなら、「へそで茶を沸かす」のニュアンスに近いだろうか。

 この成句の歴史はかなり長く、もともとはスコットランドの古いことわざに由来していると言われている。ただ具体的な起源については、はっきりしたことはわからない。「when pigs fly」という形に落ち着く以前にも、似たような表現がいくつも確認できる。

 たとえば、フランソワ・ラブレーの「ガルガンチュアとパンタグリュエル」(1532-1552年)では、巨人パンタグリュエルの戦う相手として、「大きくて太い翼を持つ豚(huge, fat, thick, grizzly swine, with long and large wings)」が登場している。これが「when pigs fly」の起源と断言はできないが、何らかの影響を与えた可能性は否定できない。

 はっきりしたところでは、Walter Haddonが1581年に発表した著作で確認することができる。ただ、単に豚が飛ぶだけでなく、尻尾を前にして飛ぶという今より少し長いフレーズで用いられていた(when pigges flye with their tayles foreward)。

 同じく1616年の、John Withalsによるラテン語-英語辞典「A Shorte Dictionarie for Yonge Begynners」でも、「pigs fly in the ayre with their tayles forward」という記述が見られる。

 豚が空を飛ぶだけでもあり得ないことなのに、それが「尻尾を前にして飛ぶ」、つまり、「後ろ向きに飛ぶ」とすることで、より事態の不可能性が強調されているわけだ。しかし17世紀以降、この長いバージョンはほとんど見られなくなり、「when pigs fly」という今の形で定着していった。

 現在もこの成句は広く使われており、日常会話や文学、映画などさまざまな場面に見られる。具体的な使用例を確認しよう。

 ・He says he's going to clean his room every day from now on? Yeah, when pigs fly!  (彼はこれから毎日部屋を掃除するって言ってるけど、豚が飛ぶときにね!)

 ・You think they'll ever lower the prices at this store? When pigs fly, maybe.  (この店の価格が下がると思う? うん、豚が飛ぶときかもね。)

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