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プライマリーバランス黒字化は、日本経済上向きの兆候か!?

財経新聞 2024年8月9日 15時16分

●プライマリーバランスが2025年度に黒字化

 内閣府が7月に発表した2033年度までの経済財政試算では、2025年度のプライマリーバランス(PB、基礎的財政収支)が黒字化する見通しであることが示された。

 岸田政権は2025年度のPB黒字化を掲げている。1月時点での試算では赤字だったが、税収増の見直しを入れると、黒字に改定された。

 PB黒字化は歴代政権が掲げてきたが、少子高齢化により社会保障費が膨らんでおり、実現は困難だった。

 税収は4年連続で過去最高を記録しているが、実質賃金はマイナスだった。6月の実質賃金がようやくプラス転換したが、日本経済が上向いている兆候となり、さらなる回復が期待されるのだろうか?

●プライマリーバランス(PB)とは?

 プライマリーバランスとは、社会保障や公共工事などの行政サービスを提供するための政策的経費を税収等で賄えているかどうかを示す指標である。

 日本はずっとPBは赤字で、赤字の分は国債発行などの借金で補ってきた。

 バブル経済崩壊後の1990年代からは国債残高が急増しており、2024年度末には1,105兆円に上ると言われている。

 公債残高の対GDP比では日本が突出しおり、250%を超えている。2位のイタリアでも約150%でその差は歴然としている。

 ただし、アルゼンチンはPBを黒字化しても翌年に債務不履行になったという例もある。

●PB黒字化ありきは危険

 岸田首相は「経済あっての財政」で、「賃金の拡大に向けた取り組みを確実に実行する」と強調している。

 今回の試算では、今秋に策定を目指している経済対策は織り込んでいない。

 高市早苗経済安保相の主張のように、そもそもPBは政府の一部だけを取り出しており、正しくないという意見もある。バランスシート(貸借対照表)を反映していないとも言われている。

 PB黒字化は財政健全化のためではあるが、財政健全化のために岸田首相が目指す異次元の少子化対策予算や防衛費が削られてしまう恐れもある。

 黒字化のために行政サービスが低下してしまう、ということにもなりかねない。

 PB黒字化で日本経済が上向いているとは言えないだろう。

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