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新技術の発見が電力消費を増大させて、電力の需給環境が悪化する皮肉!

財経新聞 2024年8月18日 19時25分

 世界の大勢は、地球温暖化を防止するために脱炭素に向かっている。自動車がEV(電気自動車)への転換を始めたのも、内燃機エンジンから脱却してCO2を削減するためだった。もっともEVが抱える様々な弱点が、自動車ユーザーに広く認識されたためEV推進が足止めを食った。

 現在は、「もう少し様子をみよう」という心理が優勢だが、いずれ弱点が改善されたと評価される時期が来るだろう。そうなればCO2は削減されるが、EVによる電力消費が飛躍的に増加する筈だ。

 インターネットやスマホは「なければ不便」の時代から、ないことが想像すらできない「なければ無理」の時代に変わった。

 インターネット技術を背景にした生成AIは、「学習するために世界中の知識を集める時」と「回答するための文章精査をする時」に、大量の電力を消費する。国際エネルギー機関の調査によると、生成AIで検索した場合の消費電力とGoogleの検索機能を使った場合のそれを比較すると、生成AIはおよそ10倍の電力を消費するという。

 暗号資産(仮想通貨)も取引の検証作業に多大の電力を消費する。マイニング(作業の報酬として新たに発行された暗号資産を受け取ること)を求めて、多数の高性能PCを並べて作業しても、作業地点の電気料金が安くなければ事業として成立しない、と言われるほど大量の電力を消費する。

 米国では暗号資産関連の消費電力が、最大で米国全体の電力需要の2.3%に及ぶとの試算もあり、600万世帯分の電力に相当すると指摘されたことから、政治問題化の様相を見せている。

 今夏の日本は電力予備率が3%以上を確保する見通しがついたことから、3年ぶりに節電要請が行われなかった。熱中症を警戒するため、マスコミがエアコンの積極的な使用を勧めているのは、電力事情が逼迫していないことの象徴だ。

 予備率3%以上を確保するために、既に退役していた老朽火力発電所を再稼働させたり、新規の石炭火力発電所が稼働しているから、なんとか節電要請を受けずに済んでいることを忘れてはならないだろう。脱炭素の時代に石炭の燃焼を増やして電力を賄う矛盾は、あまり意識されていない。

 そんな背景を考えると、NTTが電力使用料を1/100に減らす革新的な省電力技術として、「光電融合技術」の開発を進めているのは心強い。切ないのは、電力の消費が「確実に増加」する見通しなのに対して、省電力技術は2032年のゴールを目指して開発中であることだ。

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