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「鶏が巣に帰ってくる」とは? 自業自得を表す英語のイディオム

財経新聞 2024年8月18日 19時11分

 家畜に由来する英語イディオムシリーズ、今回はまた「鶏」に関するイディオムを取り上げる。日本語の「自業自得」の意味に近い「Chickens come home to roost」について、その起源や変遷を見ていこう。

■Chickens Come Home to Roost

 「Chickens come home to roost」とは、日本語の「自業自得」、「身から出た錆」に相当するイディオムだ。

 悪い言動は、それを行った者に悪い影響をもたらすという考えを表現したものだが、直訳すると、「鶏が巣に帰ってくる」となる。鶏が夜になると自分の巣に帰ってくるように、自分の行いが結果として自分自身に戻ってくることを表しているわけだ。

 このイディオムの起源を調べると、14世紀後半、ジェフリー・チョーサーにまでさかのぼる。チョーサーといえば『カンタベリー物語』で有名だが、その物語の一部、『The Parson's Tale』において、彼は以下のような文章を残している。

 And ofte tyme swich cursynge wrongfully retorneth agayn to hym that curseth, as a bryd that retorneth agayn to his owene nest.

 現代の英語とはかなり異なる中英語だが、直訳すれば「そしてしばしば、そのような呪いは誤って呪った人にふたたび戻ってくる。まるで鳥が自分の巣にふたたび戻るように。」とでもなるだろう。

 この最後の「as a bryd that retorneth agayn to his owene nest」のパート、現代の英語に直すと「as a bird that returns again to his own nest」のパートが、「Chickens come home to roost」の由来とされている。

 たとえば「自業自得」が仏教用語であるように、似たような意味のことわざやイディオムは、世界を探せばもっと古いものが見つかるだろう。それらの影響も否定できないが、英語圏では、チョーサーのこの記述が「Chickens come home to roost」の最初の起源と考えられている。

 ただチョーサーの場合、「bryd」(bird)であり、「chicken」ではなかった。「chicken」を使った現在に近い形で登場したのは、時代を下って、イギリスのロマン派詩人、Robert Southey(ロバート・サウジー)が1810年に発表した『The Curse of Kehama(ケハマの呪い)』においてだ。

 その扉ページにて、サウジーは「Curses are like young chicken: they always come home to roost.(呪いは若い鶏のようなもので、いつも巣に帰ってくる)」と書いている。

 なぜ鶏が悪いことの象徴として使われるのか不思議に思うかもしれないが、このように、もともとこのイディオムには「curse(呪い)」という言葉が含まれていたからというのが理由だ。

 今でも「Curses, like chickens, come home to roost」のように、「呪い」というワードを含めた形も見かける。ただ通常は、「Chickens come home to roost」という簡略化した形で用いられるのがほとんどだ。

 ・He cheated during the exam, and now he's facing expulsion—his chickens have come home to roost.  (試験中にカンニングをした彼は、今、退学処分に直面している—彼の行いが自分に返ってきた)

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