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鴻池運輸は単なる物流企業にあらず 企業ソリューション事業に注力 課題はPBR1倍割れ

財経新聞 2024年9月6日 9時16分

 鴻池運輸(9025、東証プライム)。堅調な収益動向が目を引く。21年3月期こそ社会経済の停滞で5.9%の減収/58.7%の営業減益も、その後は前期まで「1.5%余の増収、71.5%余の営業増益」「3期連続増配」と、しっかりと稼ぎ株主還元と果たす。

 今期の計画は、8月9日に中間期の利益を上方修正。「7.9%の増収(3400億円)、8.2%の営業増益(180億円)、5.7%の最終増益(120億円)」。通期予想は据え置きとした。

 今期の計画達成は=進めてきた至25年3月期の中計の上振れを意味する。田辺茂樹常務執行役員(経営企画本部長)は、「2030年の長期ビジョンを、売上高4500億円、営業利益250億円、ROE10%以上であり、達成に向けた通過点である」と言い及んだ。

 鴻池運輸の事業範囲は「鉄鋼」「エンジニアリング」「食品関連定温物流」「食品プロダクツ」「生活関連」「メディカル」「空港」「国際物流」と、幅広い。かつ「物流(運輸/倉庫)事業」に留まっていない。各現場の請負サービス(ソリューションサービス)にウエイトを置いている。

 例えば「100年以上に及ぶ付き合い」の鉄鋼業界(製鉄所)とは、「原材料受入~製造工程、検査・梱包・配送の出荷」に至るまでの一連の請負業務を担っているという次第。

 「注力中」(田辺氏)というメディカルマターでは言葉を借りれば「医療機関向けでは、医療器材の洗浄・滅菌・院内物流・手術室支援業務、各種システムの販売等で経営フォローの役割を果たしている。医療関連メーカー・卸売業者向けでは、物流センターの設計から運営までを行い、検体・再生医療品の輸送や医療機器の輸入から製品検査・輸配送・再生医療機器のメンテナンスまでの一貫物流を提供している」。

 横串という表現が適当かどうかは疑問だが、こんな新しい施策を始めている。サントリーとダイキン製品の異業種間の、往復輸送の取組を開始した。ダブル連結トラックを活用した、いわゆる「24年問題」への対応だ。10tトラック2台での輸送に比べCO2の排出量は年間約35%の削減が可能という。

 海外進出にも意欲的だ。35の現法を展開(今年8月1日時点)しているが、目下の注目はインドの深耕。力の入れようは、今年6月に「医療機器の滅菌事業会社をM&Aした」点などにも窺える。

 田辺氏を取材した日の株価は、終値2362円。予想税引き後配当利回り2.37%。が予想PERは10.44倍と割安感が感じられる。またPBRは0.90倍。田辺氏は「重要な経営課題」と言い切った。IFIS目標平均株価は算出者の5人中3人が強気の2702円。「収益力の更なる向上」「IR活動への積極化」が不可欠と言えよう。

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