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相場展望9月5日号 米国株: 人工知能人気は頭を打ったか? 米国景気は後退懸念増す 日本株: 日経平均はついに「弱気相場に逆戻り」で2番底を伺うか?

財経新聞 2024年9月5日 10時27分

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)9/2、祝日「レーバーデー」(労働者の日)で休場  2)9/3、NYダウ▲626ドル安、40,936ドル  3)9/4、NYダウ+38ドル高、40,974ドル

●2.米国株:人工知能(AI)人気は頭を打ったか? 米国景気は後退懸念が増す

 1)エヌビディア株価は軟調   ・エヌビディアは投資家の予想を驚異的に上回る決算を発表してきた。ところが、投資家は予想を上回る程度では満足しなくなってきた。8~10月期売上見通しの上振れ率は+2%にとどまり、投資家は満足しなくなった。高すぎる投資家の期待が外れ、利益確定売りにさらされることになった。   ・人工知能(AI)ならば、全ての株は買いの時代は終わった可能性がある。   ・9/3、エヌビディア株は▲9.5%安、時価総額▲2,790億ドル減(約▲40.5兆円)と、米企業の1日の減少幅として過去最大を記録した。

 2)米国FRBの金利引き下が幅が▲0.25%なら、米国長期金利が上昇するリスク   ・米国の市場金利は、FRBの利下げを▲0.50%と大幅引き下げを織り込んでいただけに、▲0.25%引下げが決定されると、長期金利が上昇するリスクがある。   ・長期金利が上昇すると、割高感のあるの半導体株が売られ、次いでハイテク株比率の高いナスダック総合指数が下落する可能性が高い。そうなれば、高値圏にあるNYダウやS&P500も連れ安となりやすい。

 3)米国景気が後退懸念が増す   ・米国サプライマネジメント協会(ISM)の8月の製造業景況指数は47.2と、7月の46.8を上回ったものの、好不況の節目の50以下であった。新規受注が減少したことで景気の先行き懸念に注目が集まった。

 4)9/3の米国主要株価指数の下落率   ・NYダウ     ▲1.51%安    S&P500     ▲2.12    ナスダック総合  ▲3.26    半導体株(SOX) ▲7.75   ・9/4にエヌビディア下落が波及した日本・台湾・韓国の主要株式指数    日経平均    ▲4.24%安    TOPIX     ▲3.65    台湾加権    ▲4.52    韓国KOSPI   ▲3.15   ・なお、9/4の米国主要株価指数は小幅な動きで終えた。

 5)次の焦点は、9/6発表の8月の雇用統計   ・民間エコノミストの予想では、非農業部門の雇用者数が+16万人程度増え、失業率は4.2%程度との見方が多い。

●3.TSMCなどAI関連銘柄が軒並み9/4急落、エヌビディアの売りが波及(ブルームバーグより抜粋

 1)台湾の加権株価指数は一時▲5.3%安、韓国総合株価指数は▲3%下落。  2)台湾TSMC▲5.5%安、日本アドテスト▲10.1%急落、韓国SKハイニックス▲9.2%下落。

●4.米国司法省、独禁法調査でエヌビディアに文書提出命令=報道(Quick Money)

 1)自社の人工知能(AI)半導体を独占的に使用しない購入者を不利な立場に置いていることを懸念しているという。

●5.米国ISM製造業景気指数、8月は47.2と先月を上回るが、弱いトレンド続く(ロイターより抜粋

 1)米国供給管理協会(ISM)が9/3発表の、8月製造業景気指数は8ヵ月ぶりの低水準だった7月の46.8から47.2に上昇した。  2)雇用が改善したが、新規受注のさらなる減少や在庫増加から、製造業の活動は当面低迷が続く公算が大きいことを示唆した。

●6.USスチール、日本製鉄の買収失敗なら数千人の雇用リスク・本社移転も(ロイター)

●7.オランダAMSL株の強気派が買い推奨を撤回、潜在的なAI収益に疑問(ブルームバーグ)

●8.米国求人件数、7月は767.3万件に減少、3年半ぶり低水準(ロイター)

 1)予想は810万件だった。  2)労働市場の減速は秩序だっており、米国連邦準備理事会(FRB)が9月の会合で▲0.50%の利下げを検討するほどの落ち込みではないとみられる。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)9/2、上海総合▲31安、2,811  2)9/3、上海総合▲8安、2,802  3)9/4、上海総合▲18安、2,784

●2.中国で爆発的に膨らむ商品在庫、景気不振の深刻さ表す(ブルームバーグ)

●3.中国自動車大手、上海汽車が「首位転落」の危機、VWとGNMとの合弁が販売不振(東洋経済)

 1)グループの7月販売台数は25.1万台と前年同期比▲37.2%減少。6月と7月の2ヵ月連続で、単月の販売台数首位の座を比亜迪(BYD)に明け渡した。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)9/2、日経平均+53円高、38,700円  2)9/3、日経平均▲14円安、38,686円  3)9/4、日経平均▲1,638円安、37,047円

●2.日本株:日経平均はついに「弱気相場に逆戻り」で2番底を伺うか?

 1)日経平均はついに「弱気相場入り」   ・9/2~3の日経平均は2日連続で「朝高後⇒上げ幅縮小」、弱気相場入りサインを発信。    9/2:朝高で日経平均+400円超高 ⇒ 終値は+53円高に上げ幅縮小。    9/3:朝高で日経平均+200円超高 ⇒ 終値で▲14円安とマイナスに転落。    9/2に日経平均は39,000円乗せで目標達成したとみた海外短期筋は売り越しに転換したと思われる。日本株の地合いの悪化を示した。

  ・9/4、米国株、特に半導体株の下落が波及し、円高による輸出関連株も売られ、日経平均は▲1,638円の大幅下落。空売り率は45.3と高いのは、海外短期筋の空売り攻勢があった証拠だろう。海外短期筋は、株価指数先物を使って9/2後場から売りスタートし、翌9/4朝高後から本格的売り攻勢を仕掛けてきたもの思われる。

 2)自民党総裁選で突然出てきた「金融所得課税の強化」は、株式相場に冷水   ・複数の総裁候補者から「金融所得課税強化」の発言があった。金融所得への課税は一律20%(所得税20%+地方税5%)だけである。所得税(個人住民税を含めた最高税率は55%)などのように累進課税でないため、高所得者にもたらす恩恵が大きい。今年初めにスタートした資産増加策「新NISA」とは逆流した発想である。新NISAの参加者にとっては、7/11の史上最高値からの暴落を経験させられ、8/6からの戻り相場があったものの、まだ最高値を回復していない。この状況の中での、金融所得課税の強化案は何の前触れもなかっただけに、市場参加者の心理に水を差し、不安感を増大させる増税発言である。これでは市場は、利益確定売りや持ち高調整の売りを促進する場を提供したとみて売り圧力を強めることになろう。8/6からの戻り相場は終焉を迎えた可能性がある。

  ・3年前の自民党総裁選で岸田候補は、当初、金融所得課税強化を主張していた。ところが不人気とあって、総裁選挙期間中に取り下げた案件である。そして、岸田首相は所得増加策を撤回して、資産増加策として「新NISA」を今年初めに発足させたばかりである。

  ・問題は、今回の総裁選候補者が「なぜ、金融所得課税強化」のをするのか必要性を説明していないことにある。

  ・岸田首相の在任3年間は、隠れ増税を含めて増税に邁進してきた。子育て支援金の財源を、医療保険料に上乗せして徴収する。税金を奪い取れる弱者のところから取った。結果として国民の租税負担率は限りなく50%に近付いた。江戸時代の農民の租税負担率は実質3割だったと言われている。税負担が、5割(5公5民)になれば一揆が起こったという。農民(国民)の逃散もあり、村が荒廃したケースも起きた。日本は移民として国外脱出が増進するリスクがある。現に、日本人の最近のノーベル賞受賞者の米国への移民が増えている。

  ・確かに、国民の一部の資産家にとって、金融所得税が低いことは魅力的だ。岸田首相の在任3年間は、貯蓄もままならない庶民から増税して巻き上げ、富裕層の資産家に優しい政策をしてきた。首相になる3年前の自民党総裁選の候補者のときは「所得増」を唱えていたが、総裁⇒首相に選出されると「国民の所得増を捨て」て、貧しい庶民を増税で切り捨てた。ここに、上級国民である世襲議員の本性が現れた。昭和の高度成長期の時代は、「1億総中流意識」と言われたが、今はその姿はない。今は「多くの国民が貧しい国」になってしまった。日本の活力も消え、実質国内総生産(GDP)も横ばいが精一杯の日本になった。GDPは550兆円⇒600兆円に増加させたと岸田首相は自慢したが、実態は円安でインフレを引き越して600兆円に膨らんだだけである。インフレの結果、物価が上がり、消費税が増収したため、国の税収が増えたのだ。国民、特に庶民はこの2年以上、物価高と増税で実質所得が減り、生活に苦しんでいる。賃上げで、累進課税で税率区分が上昇して増税にもつながった。岸田首相が進めた賃上げは、増税に直結する事案である。日本の所得税率は累進課税のため、賃上げは高い税率への適用につながる。岸田首相は自分の功績として、今年の賃上げを挙げた。しかし、賃上げの約5割は、所得税と保険料などで国に納付される。自分の功績を述べたが、誰に自慢したのか?昭和の高度成長期にみられた「所得税の減税」は今の国の政策から消えた。

  ・今回の自民党総裁選の一部候補者は、富裕の資産家への課税強化としての「金融所得課税強化」を主張し始めたが、貧しい庶民を豊かにする政策の発信が聞こえてこないのは残念である。

 3)日経平均は「2番底」に向かう可能性が増す   ・もともと経験則で「9~10月は弱い」局面に立たされてきたという歴史がある。    ・1987年10月 ブラックマンデーで世界同時株価暴落。    ・1998年09月 LTCM破綻ショック   ・また、日経平均は暴落⇒反発し、リズム的に次は反落の流れとなりやすい。その反落、しかも「2番底」の時期が訪れた可能性がある。   ・海外短期筋が9/3に売り転換した可能性大    ・安定した買い筋は、自社株買いを中心とした事業会社筋である。だが、日経平均の上下に大きな主導権を握ってきたのが海外短期筋だ。海外短期筋は8/6から買い一筋で日経平均を押し上げる主導権を握っていたが、それから4週間経過した。    ・海外短期筋の行動パターンからすると、売り越しに転換するタイミングでもある。

●3.4~6月期の法人企業統計、経常利益は前年同期比+13.2%増の35兆7,680億円(読売新聞)

●4.トヨタとスズキ、インドの主要州でハイブリッド車の販促本格化(ロイター)

●5.中国、半導体輸出規制強化すれば報復と、日本に警告=ブルームバーグ(ロイター)

 1)トヨタには、自動車生産に必要な鉱物へのアクセスを制限する可能性があると、非公式に伝えたという。

●6.日本製鉄、米国USスチール買収後は経営人の中枢や取締役の過半数を米国籍(ロイター)

●7.富士ソフト、買収に米国投資ファンド同士が争う異例の展開へ(NHK)

 1)米国投資ファンド「KKR」が5,600億円で買収し、非上場化を8月に発表。   「ベインキャピトル」がKKRの提案に+5%上回る買収を9/3に想定。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・3182 オイシックス・ラ・大地  業績好調。  ・7951 ヤマハ          業績好調。  ・9603 エイチ・アイ・エス    業績好調。

執筆者プロフィール

中島義之 (なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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