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「 若者のクルマ離れ!」を憂うより、「所有」から「利用」へのパラダイムシフトを図るべき!!

財経新聞 2024年9月14日 16時40分

 「若者のクルマ離れ」が注目されて久しい。

 「クルマが嫌い」という理由ではない。クルマを持つことの経済的な負担が大きい反面、大都市圏では公共の交通機関が充実していて、移動手段の選択肢が多様なので自家用車がなくても移動に大きな不便がないからだ。家の側に駐車場があるとは限らないし、出先での駐車にも苦労するのは大都市の宿命である。

 クルマの所有に関わるコストとして、(1)整備費用・(2)車検・(3)定期点検・(4)修理費・(5)保険料・(6)ガソリン代・(7)駐車場料金などが考えられる。いずれの費用もクルマを維持する上で欠かせないと共に、既に割高であることは否めないし、今後も逓増していくことは避けられないだろう。

 保険料は加入が義務付けられ選択の余地がない自賠責保険と、ユーザーが自発的に加入する任意保険がある。いざというときの備えをケチるわけにはいかない。

 ガソリンは原油として輸入されるから、モロに為替相場の影響を受ける。円安の危機が喧伝されていたついこの間、1ドルはおよそ160円だった。最近は1ドルが140円程度だから、円の購買力が概ね10%程度上昇した。タイムラグを排除することは出来ないが、理論的には従来よりも10%以上割安になる勘定だ。もちろん、将来の変動は誰にも分からない。

 東京都内で自宅に駐車場を備えている人は限られている。ほとんどの人はマンション内の駐車場も含めて、高額な駐車料金を支払っている。

 クルマの維持費を一律に語ることは難しい。クルマのサイズによって税金が違うし走行距離は千差万別だからガソリンの消費量も全く違うが、あえて目安を示せば軽自動車で47万円(年間、以下同じ)、普通自動車で約65万円、ミニバンで70万円程度だろう。1カ月平均で5万5000円~6万円弱というところだ。

 蓄えがなくて社会人としても経験の浅い若者にとって、必需品と言えるのがスマホであり、本体の分割払いと通信費が毎月の負担になる。住居費用と衣食費の支払いも一人暮らしの場合は必須だ。

 給料が大して上がらない状態で、固定的な支出項目が目白押しになっていたら、クルマの購入費用を捻出して(分割払いが多いだろうが)、1カ月平均6万円程度の維持費を払える人が限られた存在だというのは容易に想像がつく。

 今までと同じように、クルマを所有することを前提にすると、若者の給料を増やしてクルマの価格や維持費を引き下げる必要があるが、出来の悪い政治家の公約みたいに、八方美人になって実現不能に陥るのが関の山だ。

 今後はクルマを、JRや地下鉄、航空機などの公共交通機関と同等に考えるべきかもしれない。リース、レンタル、シェアリング等々形態は様々だが、必要な時だけ使用料を支払って利便性を享受することだ。究極の自動運転が実現すると、やんちゃな高速運転はクルマが認めてくれない筈だから、クルマを運転する楽しみもなくなる。

 利用する時に、自動運転で自宅前まで来てもらえれば、今までよりも確実に利便性が向上することは間違いない。

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