●TSMCとサムスン電子がUAEに半導体工場建設を検討
ロイター通信によると、半導体受託生産最大手の台湾積体電路製造(TSMC)と、世界的半導体メーカーの韓国・サムスン電子が、今後数年以内にアラブ首長国連邦(UAE)に半導体工場建設を検討しているという。UAEが工場建設に必要な費用を支援し、工場が建設される複合施設のプロジェクト規模は、1000億ドル(約14兆3000億円)になるとみられている。
世界を代表する半導体メーカー2社がUAEに半導体工場を建設すれば、半導体価格や半導体市場も大きく変化するのだろうか?
●UAEと半導体
UAEはアラビア半島の東南端に位置し、油田を持つアブダビや、観光地として有名なドバイなど7つの首長国から構成される連邦国家である。1950年代に石油が発見されて以来、急激な経済成長を遂げ、1人当たりのGDPでは日本とほぼ同じである。関税や外国人労働者の自由化など、規制緩和を積極的に行い、世界中から資本・人材を集めることに成功している。
太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーへの投資も積極的に進めるなど、石油依存の経済対策からの脱却を目指している。
ただ、政府系企業の積極的投資による債務問題も抱えており、デフォルトリスクもある。
●一筋縄ではいかない!?建設には高いハードルも?
協議はまだまだ初期段階といい、技術面などが支障となり、実現しない可能性も大いにある。チェコやベトナムなども誘致に名乗りを上げており、誘致合戦は熾烈になっている。半導体製造にはTSMC熊本工場のようにきれいな真水が欠かせないが、UAEでは海水を淡水化する必要があり、そのコストも弊害となる。
UAEにはサプライチェーン(供給網)が無く、一から構築しないといけない。UAEが補助金を出しても、初期投資に費用がかかりすぎて、優位性がなくなりかねない。
AIブームでまだまだ需要は期待できるが、米半導体大手エヌビディアの株価も頭打ちになっている。さらに失速が顕著となれば、追加での半導体工場建設には二の足を踏むことになるかもしれない。
まだ具体的な計画は無いが、実現すれば世界最大規模になり、半導体価格を抑えることができ、ゲームチェンジャーになることも期待される。