●資源枯渇リスクも!?
高い導電性や熱伝導性を備え、安価で加工できることで幅広く使われている銅。半導体、再生可能エネルギー、電気自動車など、コロナ禍以降特に銅の需要は高まっているが、さらに生成AIブームによってデータセンター建設と電気需要が銅需要に拍車をかけている。
今年5月にはロンドン金属取引所(LME)の3カ月先物が、一時1トン当たり1万1100ドル前後に上昇し、ウクライナ危機直後の2022年3月以来の高値を更新した。
銅価格は「ドクター・カッパー」とも言われ、世界経済の動きに敏感に反応し、景気を診断する指標としても注目されてきた。
一方で、2020年の三菱研究所のレポートでは、50年後に銅の供給量に限界が来るともあり、枯渇リスクも叫ばれている。
●銅線不足も?最近の国内の銅事情
2023年の8月から12月まで、一部の電線ケーブルが供給不足となり、大手メーカーが電線ケーブルの受注を一部停止するという事態に発展した。石油価格の高騰による運送料の値上げや電気代の高騰で、製造コストの値上がりなどもあった。
ここ数年、半導体需要が高まり、日本でも台湾TSMCの熊本工場が稼働し始めたが、工場建設だけでなく、周辺の住宅の増加や、交通インフラでも需要が高まった。
2025年の大阪万博や、2030年以降完成の福岡市・天神ビッグバンの開発など、長期的な大型開発による影響もあると見られている。
●解決策はあるのか?
銅需要の増加は今後も右肩上がりで続くだろう。ゴールドマンサックスが2021年に「新たな石油」と呼ぶなど、石油のように各国の奪い合いや、投機マネーの流入があることは、避けられない。埋蔵量は鉄やアルミに比べて極端に少ないと言われている。リサイクルで製造するか、鉄に銅をメッキしたCP線や、鉄と組み合わせた合金化など代行品の開発や普及が急がれる。
EV(電気自動車)は一般的なガソリン車の4倍の銅が必要と言われており、再生可能エネルギーも、太陽光や風力の蓄電池や送電網に大量の銅が必要となる。その需要のピークは、2050年と言われている。
脱炭素のために銅が枯渇するのは本末転倒ではあり、脱炭素が減速しつつある現状を鑑みても、供給面の克服には、リサイクル率の向上や技術革新が不可欠である。