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相場展望10月14日号 米国株: インフレ鈍化が止まり、金利引下げどころが引上げの可能性増す 日本株: (1) 自民党選挙公約とコメント (2) 上値が重くなる日経平均

財経新聞 2024年10月14日 10時11分

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)10/10、NYダウ▲57ドル安、42,454ドル  2)10/11、NYダウ+409ドル高、42,863ドル

●2.米国株:インフレ鈍化が止まり、金利引下げどころが引上げの可能性が高まる

 1)インフレ鈍化の流れが止まり、金利引下げどころか引上げの可能性増す   ・米国消費者物価指数(CPI)の9月は予想を上回る伸びとなり、インフレ鈍化の流れが止まった。CPIは前年比で、9月+2.4%増、8月+2.5%。食料・エネルギー除くコアCPIは、9月+3.3%、8月+3.2%。いずれも、9月予想を+0.1%上回った。

  ・9月卸売物価指数(PPI)は前年同月比+1.8%上昇、予想+1.6%を上回った。食品・エネルギーを除いたコア指数は+2.8%上昇、予想を上回った。

  ・9/18にFRBは政策金利を▲0.50%引下げて景気を下支えする政策としたため、タイムラグを経てCPIを上昇に転じる施策を打ってしまった。9/18の政策金利は通常の倍に当たる金利を引下げたが、インフレ目標+2.0%を前にして、インフレ率が反転上昇する展開を迎えた可能性が出てきた。

  ・株式市場は、FRBが11月のFOMC会合で第2次利下げ▲0.50%を期待して株価は上昇していたが、状況変化により▲0.25%引下げ期待へと低下させている。しかし、9月CPIの数値をみると11月利下げは見送りした方が良さそうだ。

  ・米国長期金利は、FRBの政策金利▲0.50%引下げにもかかわらず、+4%台に上昇している。債券市場は、FRBの将来の政策金利引下げ方針撤回を読んでいるのかもしれない。

●3.米国9月のCPIは前年同月比+2.4%、コア指数は+3.3%(ロイター)

 1)9月消費者物価指数(CPI)は前年比で、+2.4%、8月は+2.5%だった。エコノミストの9月予想は+2.3%だった。2022年6月の+9.1%をピークに鈍化している。

 2)価格変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は、9月+3.3%、8月+3.2%だった。エコノミストの9月予想は+3.2%で予想を上回った。

●4.米国9月卸売物価指数は前年同月比+1.8%上昇、予想+1.6%を上回る(共同通信)

 1)サービスは+3.1%上昇、食品は+3.2%上がった。変動が激しい食品とエネルギーを除いたコア指数は+2.8%上昇し、予想を上回る。

●5.米国ミシガン大学消費者信頼感指数、10月は68.9に低下、物価懸念を反映(ロイター)

 1)10月消費者信頼感指数は68.9、前月70.1から低下、予想は70.8だった。

●6.米国新規失業保険申請件数は25.8万人増、前週比+3.3万件増、予想+23万件(ブルームバーグ)

●7.FRB高官の発言(ロイター)

 1)NY連銀総裁=FRBは一段の利下げを実施へ、物価圧力の緩和が続いている。  2)アトランタ連銀総裁=11月FOMCで利下げ見送りでも問題なし。

●8.ルービニ氏、トランプ勝利なら「スタグフレーション」、金保有を推奨(QUICK MONEY)

 1)米国経済学者のルービニしは、11月の米国大統領選でトランプ氏が再選すれば、景気減速とインフレ加速が同時に起こるスタグフレーションが高まるとみている。

 2)同氏は、米国住宅バブルの崩壊を予測したことで「破滅博士」とも呼ばれ、発言は注目されている。

●9.米国航空機大手ボーイング、従業員の約▲1割となる▲17,000人を削減へ(日テレ)

 1)ボーイングでは9/13から賃上げ幅を巡って、16年ぶりにストライキが行われており、今週行われた交渉も決裂し、終結は見通せない。

 2)開発中の新型機777Xの初納入が遅れることを顧客に通知しており、混乱は航空機業界全体に広がりそうだ。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)10/10、上海総合+43高、3,301  2)10/11、上海総合▲84安、3,217

●2.ヘッジファンド、10/8に過去最大規模の中国株売り=ゴールドマンサックス(ブルームバーグ)

●3.中国市場で苦戦の独VW、「南京工場」の閉鎖を検討(東洋経済)

 1)現地合弁の販売激減、生産能力の削減が急務に。

●4.中国9月新車販売、▲1.7%減、4カ月連続マイナス(時事通信)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)10/10、日経平均+102円高、39,380円   2)10/11、日経平均+224円高、39,605円 

●2.日本株:

 (1)自民党の衆院選挙公約とコメント  (2)上値が重くなる日経平均

 1)自民党の衆議院選挙公約と批判的コメント   自民党選挙公約    批判的コメント   (1)ルールを守る   リクルート問題で自ら作ったルールを破り、裏金つくり。              「政策活動費と旧交通費の公開」のどこがルール守るというのか?               リクルート問題で作った自民党ルールをなぜ守れなかったのか?その反省と原因究明がまったくなされていない。              政治資金の利権温存をします宣言、としか聞こえない。              裏金問題の解明は検察・警察ではないから限界があると言い訳する有力議員がいた。              自民党を「統治」するという考えを放棄した言葉だ。              統治力・統治意識を失った組織は、組織として存続できなくなるのは自明の理だ。

   (2)暮らしを守る    実質賃金のマイナスが最近では27カ月連続、暮らしが大変。                岸田政権3年のほとんどが実質賃金マイナスであった。                一時的な低所得者への給付金支給だけで、暮らしを守れると思っているのか?

   (3)国を守り、国民を守る 領海・領空を侵されても「遺憾」砲だけ。                 中国で日本男子が殺されても「遺憾」の空砲。                 自衛官の処遇改善するだけで「国・国民を守る」と言うのか?

   (4)未来を守る      高等教育の無償化拡大だけが「未来を守る」のか?

   (5)地方を守る      政策の中味が無く予算を2倍にするというバラマキ政策だけで「地方を守る」と言えるのか?                 シャッター商店街を開店させる活性策はないのか。

   (6)新たな時代を切り拓く 新たな時代を国民に明示せず、「何」を切り拓く?                 憲法改正の早期実現のどこが「新たな時代を切り拓く」のか?     ・総論     「守る」とあるが、薄っぺらい内容。     「守る」とは、石破首相自身と自民党を「守る」という意味にしか聞こえない。     「守る」ばかりで、『攻めの成長』が抜けている。

 2)石破・公約は総裁選から衆院選公約で変節、「有言不実行」で期待感が薄れる     総裁選前の主張     総裁選後に豹変     ・アジア版NATO    ⇒ 「防衛協力と交流を推進」にとどまる。     日米地位協定の改定 ⇒ 「あるべき姿を目指す」と棚上げし、後退。                  本気でやるつもりがない。     日朝連絡事務所開設 ⇒ 公約には一文字も触れず。     防災省の設置    ⇒ 「防災庁設置に向け準備」とやや前向き。     金融所得課税    ⇒ 公約から外した。     選択的夫婦別性   ⇒ 「議論の必要性を指摘」するにとどめただけ。                 自民党支持者の63%、野党支持者の70%以上が賛成というなかで、自民党保守の反発を優先した。     金融政策の正常化  ⇒ 「日銀の追加利上げを牽制」と豹変。     衆院選挙は議論周知後⇒ 党首討論だけで、予算委員会も経ず、わずか8日間経過後という突出した戦後最短の衆院解散。                 石破首相が好む「議論」を避け、早期選挙に逃げたとしか映らない。

 3)世襲が続く首相、今回の自民党総裁選でも多くの世襲議員、日本を成長できるか?   ・世襲議員は、親・親戚から受け継いだ選挙区の地盤・政治団体(政治資金)・支援団体を受け継ぎ、地元利益誘導型の古い政治体質の砂上に成り立っている。岸田氏自身も子供に譲って4世代議員を誕生させるべく見え見えの対応していた。政治家の「家業化」であり、政治利権の温存の象徴的存在である。政治家から「政治屋」になってしまった世襲議員で、痛みを伴う「日本の改革」はできるのか?「守る」ものが多い世襲議員に、「リスクを取って日本を成長に導けるか」?。

  ・石破・首相も、過去の日本の首相の多くと同様に「世襲議員」である。最近の首相をした岸田、安倍、麻生も世襲議員、世襲でないのは菅義偉の1人だけ。今回の自民党総裁選の候補者9名うち、世襲は小泉・林・加藤・石破・河野と過半数の5人。世襲でないのは高市・小林・茂木・上川の4人だけであった。

  ・石破氏は自民党総裁・首相になるころから「ひ弱い世襲議員の本性を現した」。自民党内の野党のときは威勢が良かったが、いざ主流トップになると豹変した。そして、自分の過去の主張は引っ込めた。加えて、岸田政権の路線踏襲を宣言し、岸田氏をキングメーカーに押し上げた。岸田政権の支持率が20%台とと不人気なのに、その路線を「踏襲する」と公表した段階で支持率が高くなることはありえない。岸田政権がなぜ倒れたのか、その原因究明と改革が霧消した。党・内閣の人事も偏ってしまった。高市氏など反対派の締め上げ・攻撃を鮮明にし、挙党体制とは真逆の運営を実行している。さらに、衆議院選で自民党非公認を6⇒12人と拡大したが、11人が安倍派だ。ターゲットにされた安倍派の石破憎しは最高潮に達しているだろう。これでは、自民党潰しにつながり、政治の安定化は望めない。石破政権の脆弱性と偏りを明らかにした人事をしたため、今後の政局は安定せず、自民党の分裂・闘争の激化を産む、波乱の幕開けを予想させる。野党から変節したと追及されると「自民党は民主主義であるため、総裁になったからといって独裁はできない」と変節の説明を避け、訳の分からない主張を述べるにとどまった。石破自身が長きにわたり要求していた「説明責任」を放棄した瞬間である。

  ・好ましいと信じていたネコが、牙を剥いた虎に変身し、危険性が増した。このような首相、自民党を、国民はみている。今回の衆議院選挙で、おそらく自民党・公明党は大幅議席を減らすだろう。自民党にとって、救いは野党の共闘ができないことだ。

  ・株式市場にとって、政治の混乱は好ましくない。「選挙」にまつわる株式相場の格言ははずれるだろう。とりわけ、海外投資家は「政治の混乱」は嫌う。

 4)10/11日経平均は7割超の銘柄が下落も、ファストリ1社が指数をプラスに押し上げ   ・値上がり銘柄数503、値下がり1,086と、値下がり数が70%を占めた。   ・株価指数別では、TOPIX▲6安、グロース250は▲1安、JPX日経は▲64安。日経平均だけが+224円高。   ・日経平均が+224円高の要因は、ファーストリテイリングの1銘柄で日経平均を+278円も押し上げたため。ファーストリテイリングの株価は+3,130円高と、日経平均を+278円も引上げる寄与をした。

 5)日経平均は、売買高が3兆円台が続き、上値は重くなってきており、注意   ・値がさ株の一角には力強さが見受けられるが、大勢は重くなってきた。   ・日経平均は40,000円台に接近し、持ち高調整や利益確定の売りが目立ち始めている。   ・東証プライムの売買高が3兆円台を4日連続と、エネルギーの減少が目立つ。        10/8    10/9    10/10    10/11         3兆9,410億円 3兆6,430  3兆5,288  3兆7,755   ・日経VIX恐怖指数も天井を示すといわれる30に、10/28は28.67と接近している。   ・経験則として「選挙は買い」優勢だったが、今回は外れそうな感じである。要因は、自民党をめぐる裏金問題・統一教会問題に端を発した案件が噴出、解明と解決に向けた道筋が不透明のままである。加えて、期待された星であった石破首相の「変節への豹変」と「有言不実行」との不信が増している。野党も団結することなく、政治の混乱に収拾のめどが立っていない。選挙は日本経済にとって前向きな政策が発表されて「選挙は買い」だったが、今回の自民党公約は「守る」ばかりのオンパレードで、盛り上がりに欠ける。石破首相の公言にも、未来の明るさを示す「経済成長戦略」がない。日本の希望と経済成長の力強さを与えられない総選挙の雰囲気が覆っている。これでは株式相場格言「選挙は買い」とは、ならない。期待していた石破カラーはくすみ、低支持率の岸田路線を継承すると発言し、国民の「変わって欲しい」という願いは無視された。石破政権の支持率が50%程度と、最近の政権発足時の支持率と比べ下から2番目と低い。新首相「ご祝儀」で支持率が上がるという、過去の経験則はみられなかった。売買高が3兆円台に落ち込んでいる理由は、ここに問題の要因がありそうだ。

●3.ファストリ、ユニクロ展開で売上が初の3兆円超え(NHK)

●4.セブン&アイ、コンビニが低調で減益予想で下方修正(ロイター)

 1)2025年2月期の営業利益予想を+5,450億円かた+4,030億円に下方修正した。物価高が続く北米でコンビニエンスストア事業の客数が減少し、前年比+2%の増益予想が▲24.6%の減益に転じる。

 2)イトーヨーカドーのネットスーパー事業撤退に伴い▲458億円、北米コンビニ事業の不採算店閉店で▲543億円の特別損失を計上する。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4502 武田薬品    業績好調。  ・4452 花王      業績好調。     ・4595 ミズホメディ― 業績好調。

執筆者プロフィール

中島義之 (なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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