宇宙空間から地球の大気圏に突入してくる物体の数は、上空で燃え尽きてしまうものを含めると無数にあるが、燃え尽きることなく地表にまで到達するものは、年間約1万7,000個程度とされる。
地表に落下した物体は一般的には隕石と呼ばれる。隕石の中には火星を起源とするものや月を起源とするものもあるが、多くは小惑星の破片だ。ネイチャーで公開された2つの研究論文によると、この隕石には興味深い由来があるという。
隕石は、石質隕石、石鉄隕石、鉄隕石の3種類に大別される。石質隕石に分類されるコンドライトは、地表に落下する隕石の約85%を占め、石鉄隕石は2%、鉄隕石は5%程度とされる。
チャールズ大学(チェコ共和国)の科学者の論文によれば、隕石の70%はかつて起こった3つの小惑星での衝突が起源であるという。その3つとは、コロニス、カリン、マッサリアだ。小惑星コロニスとカリンはHコンドライトの供給源で、マッサリアがLおよびLLコンドライトの供給源だとしている。
またヨーロッパ南天天文台の科学者の論文によれば、Lコンドライト(隕石全体の約20%を占める)は、今から4億6600万年前に衝突を起こした小惑星マッサリアを起源とする。この時の小惑星衝突の残骸は、最も大きいものが小惑星マッサリアで、これを含むより小さな破片群はマッサリア群と呼ばれている。
ちょうどそのころ地球にはLコンドライトが数多く飛来し、これが氷河期のきっかけとなり、さらには生物多様性をもたらしたという。その痕跡は、スウェーデンのオルドビス紀の石灰岩の中に多様な生物の化石となって残っている。
今回紹介した2つの研究におけるキーワードが、隕石の大半を占めるコンドライトだ。さらにコンドライト以外の隕石の起源を遡ることができれば、太陽系進化の歴史がより鮮明になるだけでなく、地球進化の歴史についても新たな発見につながるかもしれない。
また地球上の地質年代とそこから発掘される化石情報から、小惑星衝突のような未知の事件が新たに見いだされる可能性もある。