恒星系トラピスト1は、地球から41光年と比較的近くにある。赤色矮星を主星とし、7つの地球型惑星の存在が判明しており、知的生命存在の期待がかけられている。
米国SETI協会は16日、この恒星系で頻繁に起きる惑星相互食(ある惑星の前を他の惑星が横切る現象)を利用して実施した、惑星間通信電波をキャッチする試みの結果を発表した。
ある惑星から他の惑星に電波送信する場合、その電波は惑星相互食が起こっている状況では、地球に向かって進んでいく。今回の試みでは、2022年10月下旬から11月上旬にかけてアレン望遠鏡アレイ(ATA)によって受信された約28時間分の電波を解析し、知的生命体が発した電波を探索している。
ATAは波長数cmの電波を受信する電波望遠鏡で、構造的には単一の電波望遠鏡ではなく小口径(数mクラス)の電波望遠鏡を多数配列した電波干渉計の形態をとっている。その特徴は視野角が広く、一度に観測できる周波数の幅も広い点(0.5~11.2GHzまで連続的にカバーできる)で、今回のような知的生命探査にはうってつけだ。
今回の探査で候補となる信号は、当初約2500万個存在していたが、これらからトラピスト1以外からの信号を排除し、約600万個にまで絞り込んだ。この中から惑星相互食が起きていた期間の電波をさらに絞り込み、最終的に2264個の信号について知的生命体の発した電波の有無を精査した。
結果的には、今回は残念ながら知的生命体が発した電波と思われる信号は検出できなかった。だが従来のように、宇宙のあらゆる方向からやってくる電波をくまなく調べるという気の遠くなるような作業とは違い、ターゲットとなる恒星系を具体的に絞り込み、デジタル信号処理技術を駆使し、短時間での解析を可能にした探査方法は画期的だ。
また太陽系の惑星や衛星で進められている地球外生命探査と比べても、探査活動は容易に実践できるため、本技術を他の恒星系にも積極的に適用し、効率の良い知的生命探査につなげてほしいものだ。