東京海上日動火災保険は5日、ドライブレコーダーのデータなどを活用し、事故時の車両損傷度や修理の可否を推定する独自アルゴリズムを構築したと発表した。一定要件を満たす事故の場合、最短1日で全損認定が可能になり、早期に保険金を受け取れる。同社のドライブレコーダー付き自動車保険の契約者が対象で、2024年12月より導入を開始した。
車両の損傷度合いなどの推定には、事故時にドライブレコーダーが検知した衝撃データと、過去の保険金支払いデータを活用する。端末が一定以上の強い衝撃を検知した場合、衝撃値と自動車の車種などのデータから、アルゴリズムが全損事故(修理不可)の可能性を判定。さらに担当者による端末の事故映像の確認を経て、全損認定となる。
事故調査員による判定が不要になるため、通常では平均1~2週間かかる全損認定の期間を最短1日まで短縮できる。
新たなフローは、同社のドライブレコーダーを貸与する特約を付けた契約者が対象となる。その内、普通・小型・軽乗用車の自動車で、かつ車両保険の保険金額が100万円以下の契約に限られる。
また対象事故は、過失割合が100:0で責任の所在が明確な場合か、単独事故のいずれか。現時点では対象範囲が制限されているが、運用状況によっては範囲拡大の可能性もありそうだ。
東京海上日動がドライブレコーダー付き保険の提供を開始したのは、2017年4月。国内大手損保では初の取り組みであり、事故の強い衝撃を検知すると、事故受付センターへの自動連絡と事故映像の自動送信ができる点が主な特徴だ。
提供にあたりオリジナルのドライブレコーダーを開発。事故時の負担を減らす目的で、送信映像からAIが事故状況を再現し、責任割合の参考値を算出するシステムも構築している。
自動連絡の後、センターとの直接通話で事故対応サポートを受けられる点も評価され、契約台数は23年3月で累計100万台を超えた。同社はこれまで、ドライブレコーダーから得たデータの活用可能性に関して研究を続けてきており、今回のアルゴリズム開発に至った。
開発の発端となったのは、同社の社内副業制度「プロジェクトリクエスト制度」だったという。同制度は20年9月より開始。所属部署の業務を行いながら本店・管理部門のプロジェクトに参加できる。
今回、商品開発部門のプロジェクトに参画した社員の発案で、アルゴリズムを開発。新たな全損認定フローの構築を実現した。