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相場展望12月9日号 米国株: 今後の米国株を支える材料は「FRBによる利下げ」観測のみ 日本株: 今年の日経平均の上昇は事業会社の「自社株買い」が貢献大

財経新聞 2024年12月10日 11時1分

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)12/5、NYダウ▲248ドル安、44,765ドル  2)12/6、NYダウ▲123ドル安、44,642ドル  3)12/9、NYダウ▲240ドル安、44,401ドル

●2.米国株 : 今後の米国株を支える材料は「FRBによる利下げ」観測のみとなる

 1)米国株は11月の急伸の反動で12月が押される展開が続く   ・12/4にNYダウが最高値となる45,000ドルに乗せ、一服感が出やすい。     ・NYダウの推移   12/4     12/5   12/6  12/9              +308ドル高 ▲248ドル安 ▲123  ▲240   ・もともと、11月NYダウは+3,147ドル高・+7.5%高と急伸して反動が出やすく、12月は軟調なスタートを切っていた。   ・NYダウの推移             10/31終値 ⇒ 11/29   上昇幅    上昇率     NYダウ     41,763ドル  44,910  +3,147ドル高・+7.5%上昇   ・NYダウの12/2~9までの6営業日では、上昇は1日に対して下落は5日と市場の弱さを表している。     NYダウの12/2~9までの推移 11/29 ⇒ 12/9  下落幅   下落率                  44,910ドル 44,401 ▲509ドル安・▲1.1%安

 2)米国株を支える材料は、FRBの利下げ観測のみとなった   ・トランプ氏の大統領選勝利の祝賀ラリーも終わった。   ・四半期決算発表シーズンが終了し、好材料が出尽くした。

 3)12月中旬までは、株式相場にとってマイナス要因に注目される時期   ・トランプ次期政権の最大のリスク「インフレ再過熱」が意識され始めること。   ・12月末を控え、節税対策として損切りの売りが優勢となる季節を迎えた。   ・年末の運用評価を上げるための「お化粧買い」が始まるまでは軟調な相場になると予想する。

●3.マスク氏、トランプ氏に2.6億ドルの献金、ホワイトハウス返り咲に寄与(ロイター)

●4.米国・雇用統計、11月の非農業部門(サービス)雇用者数は22.7万人増(ブルームバーグ)

 1)失業率は4.2%と悪化、市場予想と前月は4.1%だった。  2)平均時給は前月比+0.4%増で、市場予想+0.3%増。前年同月比では+4%増、市場予想は+3.9%増・前月は+4%増だった。

●5.米国新規失業保険申請件数は前週比+0.9万件増の22.4万件、予想21.5万件(ブルームバーグ)

●6.米国10月貿易赤字、▲738億ドルに縮小、2022年11月以来の大幅輸入減で(ロイター)

 1)トランプ次期大統領の関税案を懸念する企業が輸入を前倒しする可能性がある。

●7.OPECプラス、原油の協調減産を2026年末まで延長、自主減産は2024年3月まで(ロイター)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)12/5、上海総合+4高、3,386  2)12/6、上海総合+35高、3,404  3)12/9、上海総合▲1安、3,402

●2.米国GM、約7,500億円規模の費用・減損を計上、低迷する中国事業関連で(ブルームバーグ)

●3.11月の中国新車販売、トヨタが前年同月比+7.0%増で10カ月ぶりプラス(産経新聞)

 1)トヨタは、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)など商品ラインアップの拡充が寄与した。  2)ホンダは▲18.0%減と10カ月連続のマイナス。日産自動車は▲15.1%減で8カ月連続の前年割れ。  3)中国EV最大手の比亜迪(BYD)の11月は+68%増の50万台で2カ月連続で50万台を上回った。  4)1~11月累計では、トヨタが前年同期比で▲7.7%減の158.8万台、ホンダは▲30.7%減の72万台、日産自動車は▲10.5%の62.1万台だった。

●4.ヤクルト、上海工場を閉鎖、天津や無錫工場に集約、経営効率向上を目指す (時事通信)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)12/5、日経平均+119円高、39,395円   2)12/6、日経平均▲304円安、39,091円   3)12/9、日経平均+69円高、39,160円  

●2.日本株 : 今年の日経平均の株高は「自社株買い」が貢献大

 1)日経平均株価は、12月に入ってNYダウ下落とは逆に上昇に転じた   ・NYダウと日経平均の動向              11/29 ⇒ 12/9    変化額   変化率       NYダウ   44,910ドル 44,401  ▲509ドル安 ▲1.13%安       日経平均   38,208円  39,160  +952円高  +2.49%高     ・NYダウは、12/4に+308ドル高したが、12/2・3・5・6・9と5日下落し累計で▲817ドル安、12月に入って▲509ドル安となった。     ・日経平均は12/6に▲304円安と反落したものの、12/2~9の上昇幅は累計で+1256円高と、NYダウに比べて逆行高となった。   ・株高の要因    ・米国FRBが来週の会合で追加利下げに踏み切り、米国景気を支えるとの見方から買いが入った。    ・企業の自社株買いが一貫して続いている。    ・最高値を更新する米国株に比べて割安感がある。      ・NYダウは直近の12/4に45,014ドルと史上最高値を付けた。      ・日経平均は7/11に42,224円と最高値を更新したが、12/9は39,160円と高値から▲3,064円安と安値感がある。   ・株安の要因    ・NYダウは12月に入って以降、12/4以外の5営業日で高値警戒感が意識され売られている。    ・米国相場ではトランプ・ラリー終了、四半期決算発表シーズンも終わり、好材料が乏しくなり、米国株と連動しやすい日本株にとって支えが低調なのが気懸り。    ・日経平均は、中間配当金の再投資で株高の期待感があったが、期待外れとなっており、失望売りが出やすい状況となった。

2)2024年の日経平均の上昇は、事業会社による「自社株買い」が要因  ・日経平均の年初からの推移            昨年末  ⇒  12/9    上昇幅    上昇率     日経平均   33,463円   39,160円  +5,697円高・+17.02%高   ・海外投資家、年金基金は大幅な売り越し。したがって、今年の日経平均の上昇は「自社株買い」が大きく貢献した。  ・年初~11月4週(1/4~11/29)の累計売買金額     事業会社(自社株含む) +7兆1,382億円買い     海外投資家       ▲5兆7,776億円売り     年金基金        ▲4兆0,210億円売り     個人(現金・信用)   ▲  5,778億円売り   ・日経平均の2024年1~11月の上昇は、「自社株買い」によるもの。ただし、「自社株買い」は「株価の高値追い」はしないことに留意したい。

 3)本日12/10の日経平均は「横ばい」が軸になると予想   ・株価を押し上げる要因     ・円安が進むため、輸出関連株が買われやすい。        12/9東京 150.11 円 ⇒ 12/9NY 151.21円     ・短期海外勢の買い攻勢の状況にあり、上値追いの可能性がある。   ・株価にとってマイナス要因     ・米国10年債利回りが12/9に上昇したため、相対的に株価の割高感が出て売られやすい環境にある。       米国10年債り回り 12/6 4.153% ⇒ 12/9 4.203%   ・以上の観点から、日経平均は朝高の後に注目したい。

●3.日銀が1月の会合前に異例の懇談会、年明け利上げ観測高まる可能性(ブルームバーグ)

 1)日銀は12/18~19、来年1/23~24に金融政策決定会合を開催する。  2)日銀のウオッチャーの8割が1月までの追加利上げを予想している。

●4.今年11月までの倒産件数は全国で9,000件超、昨年同期比+17%増(NHK)

 1)物価高や人手不足を背景にした倒産件数が増加傾向にある。

●5.JERA、英国BPと洋上風力発電事業を統合、58億ドル出資し世界4位規模に(ブルームバーグ)

 1)世界的なインフレや金利上昇の影響で開発コストは増加傾向にあり、採算が悪化するなか、洋上風力事業が難しくなっている。統合によりスケールメリットを活かした競争力向上を図る。  2)JERAは、東京電力と中部電力が折半出資し、2035年までに現行の約6倍となる20ギガワットとする目標を打ち出している。

●6.キオクシア、公開価格を1,455円に決定、時価総額約7,840億円(ブルームバーグ)

●7.政府・与党、在職老齢年金見直し、収入増の人に一定の税負担を検討(NHK)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・6856 堀場製作所      業績堅調。  ・8113 ユニ・チャーム    業績堅調。  ・8358 スルガ銀行      業績堅調。

執筆者プロフィール

中島義之 (なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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