フジテレビジョンを傘下に持つフジメディアHD(フジHD)の株価が、1月17日以降謎の株価上昇を続けている。
昨年末、元タレントの中居正広氏による女性トラブルで、フジテレビ幹部社員の関与があったと週刊文春が報じた。
1月17日にフジテレビは港浩一社長が記者会見を開いたが、報道機関を限定、テレビ取材・生中継を認めないなどの異例の会見となり、事態に火に油を注ぎ、世間の批判を浴びる結果となった。
フジHDの大株主であるダルトン・インベストメンツの関連会社が、書簡で批判するほどだった。
この会見を受けて、フジテレビからCMスポンサー各社の撤退が相次ぎ、中居氏が引退を表明してからも収束の気配はない。
スポンサーの撤退により、番組の継続が困難となり、会社としても大幅な減収減益が避けられないにも関わらず、株価が上昇しているのはなぜなのか?
●過去にもあった企業の不祥事でも株価上昇
今回のフジHDも、週刊誌の報道が出た時点では株価が約14%下落した。過去には2016年に東芝が不正会計問題で50%超下落したが、2年以内に戻した。
2014年に情報流出問題が発覚した発覚したベネッセも一時30%超下落したが、1年後には株価が戻り、その後不祥事前の株価を大きく上回って上昇した。
相場には「事故は買いで事件は売り」という格言があり、突発的な事故は短期的な企業業績に影響が出てもすぐに回復するが、事件は根本的な問題が影響していることがあるので売りになりやすいと言われている。
●フジHDがなぜ株価上昇?
フジテレビは、27日には10時間超の記者会見を開催したが、これですぐに信頼回復とはならない。SNS上でさらなる疑惑も拡散され、近年のテレビ全体に対する見方は厳しく、膿を出すには時間がかかる。株価上昇の背景には、短期売買を狙う海外投資家の思惑も囁かれている。また実業家の堀江貴文氏がSNSで同社株を購入したことを明かすなど、著名人の動向もある。
6月に行われる株主総会で意見を言うため、議案を提出するための“出席チケット”として買っている投資家もいると見られている。
そもそもフジHDは、不動産業の営業利益が全体の約65%を占め、売上高では全体の75%を占めるメディア・コンテンツ事業の営業利益は、約30%に過ぎない。
スポンサーの撤退は、実質“不動産会社”であるフジHDにとっても影響は小さくは無いが、存続の危機までにはならないと言われている。
今回の不祥事による経営陣の一掃により、改革への期待もあると言われており、かなり先を見据えた買いが異例の株価上昇を引き起こしていると思われる。