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通期上方修正/トップ人事発表の武田薬品を、どう読むか

財経新聞 2025年2月5日 11時57分

 武田薬品工業(4502、東証プライム市場)が、1月末に相次いでニュースを発信した。一つは今3月期の上方修正。具体的には「売上高4兆5,900億円(前回予想比2.5%増)、営業利益3440億円(29.8%増)、純益1180億円(73.5%増)」。

 一つはトップ人事。「2015年以降長らく武田薬品を、売上高ワールド10入りを牽引してきたクリストフ・ウェバー社長が2026年6月に退任。新たなCEO社長に、U.S.ビジネスユニットプレジデントのジュエリー・キム氏が着任」。ちなみにキム氏はM&Aを経営手法として中軸に据えてきた点を象徴するように、2019年に買収したシャイアー社出身。

 二つのニュースには、共通項が重なる。主戦場の一角とする武田薬品をこれまで引っ張ってきた薬品に、注意欠陥/多動性障害治療剤:ビバンゼがある。23年8月に独占販売期間が満了した。が、後発系医薬品の浸透が想定以上に遅い。「その影響に加え、他の医薬品の好調、円安効果で・・・」と上方修正は説明された。

 一方の「キム氏へのトップ交代」は、「ビバンゼ効果の減少、26年以降に予定されている新医薬品上市への備え、かつキム氏の現職の後継者探し」がある。

 武田薬品の説明では、上記のニュースは述べたように整理される。が前3月期(5.9%増収、56.4%営業減益)を詳細に見ると、「?」部分が払拭しきれないのも事実。例えば為替相場の円安/消化器系疾患/希少疾患及びオンコロジー(がん)領域の好調は、ニューロサイエンス(神経性疾患)治療剤や日本市場での高血圧治療剤アジルバの減収で相殺されている。

 また地域別売上高で見ると規模的に上位3地域は「米国:前年比2.2%減、欧州&カナダ:4.5%増、日本:12.1%減」とまだら模様で、全エリアでも1.5%増に留まっている。

 無論、大腸がんの抗癌性腫瘍薬の国内の承認取得といった前向きなニュースも出ている。

 まあ一口で言えば、「大型新薬開発・登壇」を軸にした医薬品業界共通の環境下で武田薬品もまた「3歩進んで2歩下がる」といった歩みでジリジリと右肩上がりの収益動向を歩んでいるということだろう。

 ただ株式投資という観点から見ると本稿作成中の時価4000円台入り口に対し、過去9年余の修正済み株価パフォーマンスは2000円近く下値にある。ただIFIS目標平均株価は算出者12人中6人が強気、6人が中立ながら、時価より500円方上値。時価の予想税引き後配当利回りは3.8%強を享受するのが賢明か・・・、またPBR0.91倍は株価材料になるか・・・

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