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相場展望2月10日号 米国株: トランプ関税は後退、覇権国・中国に絞るか? 日本株: ホンダ・日産自との統合破談は、ホンダは正しい決断だが、日産自は不幸

財経新聞 2025年2月10日 14時3分

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)2/6、NYダウ▲125ドル安、44,747ドル  2)2/7、NYダウ▲444ドル安、44,303ドル

●2.米国株:トランプ関税は後退、覇権国・中国に絞るか?

 1)トランプ大統領の関税方針が株式相場の重荷へ   ・関税の賦課分が販売価格に上乗されるため、インフレの要因となる。そうなった場合、米国消費者の消費支出が減少⇒米国景気の後退⇒米国企業の業績悪化する可能性が高い。   ・それは、米国株価にマイナス要因が膨らむことになる。

 2)トランプ氏の関税進捗が鈍化   ・当初、トランプ氏は(1)メキシコ、カナダに25%、(2)中国に10%の追加関税、(3)欧州・日本含む同盟国にも10~20%の関税適用方針を打ち出していた。   ・ところが、(1)メキシコ・カナダとは、麻薬取締・不法移民防止の合意で1カ月延期を決めた。   ・(3)欧州等の諸国への10~20%関税賦課については、黙ったままである。石破首相との首脳会談でも、関税について触れていない。   ・結局、2月に実施したのは(2)中国への10%追加関税のみと縮小した。世界を震撼させた「関税拡大」の進捗がとどまった。

 3)中国の関税報復も「限定的」にとどまっている   ・米国は、中国からの輸入品5,250億ドルに対して10%の追加関税を発動する状況にある。   ・ところが、中国の報復措置は米国製品140億ドルに平均12%の追加関税を課しただけである。   ・つまり、中国の報復措置は「報復とは言えない」レベルにある。

 4)世界は、今後のトランプ氏の次の一手を様子見する姿勢   ・メキシコ・カナダとの25%関税問題は、実施を1ヵ月延長した。   ・両国が(1)不法移民対策と(2)麻薬の米国への流入阻止の進捗次第であるが、おそらく両国は国境に1万人の兵隊を派遣するとするなど、対策を進めている。   ・メキシコの対米国向け輸出は全輸出の8割を占めている。カナダは全輸出の7割が米国向けである。25%もの関税賦課は、両国にとって致命的な痛手を負う可能性がある。   ・米国にとっても、両国からの輸入は全体の3割を占める。もし、両国からの輸入品に25%もの高率関税を賦課すると、米国の物価上昇圧力が増すことになる。

 5)トランプ関税対象は、敵性国家・中国に限られる   ・トランプ氏は、米国を脅かす覇権主義の中国の存在は許さない。   ・カナダ・メキシコ、欧州・日本などの同盟国とは、「関税」をテコにして貿易赤字などの米国諸問題の解決に向けた取引にとどまる。   ・そのスタンスが、石破首相との会談にあらわれたとみる。  

●3.貿易相手国が米国製品に課している関税と同率の関税を課す(ロイター)

●4.一定期間の金利据え置きは「賢明」=クーグラーFRB理事(ロイター)

●5.米国1月雇用者14.3万人増、予想下回る、失業率4.0%で5月以来の低水準(ロイター)

 1)エコノミスト予想の17万人増を下回った。  2)4%の失業率は非常に低いとみなされ。FRBが短期的に金利を据え置く根拠となるとの声が聞かれた。

●6.米国新規失業保険申請21.9万件で、+1.1万件増と小幅増加(ロイター)

 1)緩やかに増加し、労働市場の状況が徐々に緩和しているとの見方と整合した。  2)エコにミスト予想は21.3万件だった。

●7.制約的な政策の緩和は急がず、米国政権の政策見極めへ=FRB副議長(ロイター)

 1)ジェファーソンFRB副議長は2/5、トランプ政権の関税・移民・規制緩和・税制に関する政策による影響が明確になるまで、現行の政策金利を維持することを支持する姿勢を示した。

●8.メキシコ、米国から強制退去の移民約1.1万人受入れ、トランプ氏就任以降(ロイター)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)2/6、上海総合+41高、3,270  2)2/7、上海総合+33高、3,303

●2.トランプ氏は2/5、中国からの800ドル未満の小口輸入品免税停止を延期(ロイター)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)2/6、日経平均+235円高、39,066円  2)2/7、日経平均▲279円安、38,787円

●2.日本株 : ホンダ・日産自との統合破談は、ホンダは正しい決断・日産自は不幸

 1)業績好調の決算発表でも、利益確定売りが目立つ   ・KDDI、4~12月期営業利益が前年同期比+2%増でも、市場予想に届かず2/6に一時▲6.03%急反落。

 2)日経平均は、好決算発表を受け個別物色が濃い   ・主な値上がり銘柄     ・ルネサス、日電硝子、野村など   ・負の要因     ・金利高     ・円高     ・トランプ関税     ・実質賃金がマイナス成長が続き、消費支出減少

 3)円高進行   ・円相場の推移  2/3   2/6  2/7(日本)(米国)     円・ドル  155.78円 152.47  151.76  151.41     ・日銀は金利引上げ方向にあり、日本・米国の長期金利差は縮小している。このことから、円高が進展している。   ・米国FRBの金利引上げが見込めるまで、円高方向は変わらないとみる。

 4)ホンダ・日産自との統合破談は、ホンダにとって正しい決断・日産自は不幸   ・トヨタに対比して、この2社の統合は弱者連合である。

  ・ホンダは経営力・開発力・新車販売において、トヨタの後塵を拝している。ホンダは「フィット」「Nボックス」以外、新車販売でヒット車を数多く上市できていない。燃費でもトヨタの後塵を拝している。これでは顧客から支持を受けられない。主力の米国市場でも販売を伸ばせず、中国では後退が著しい。

  ・日産自は経営能力は低く、プライドが高いだけで、重厚長大で、自助回復は難しい。「スカイライン」「フェアレディZ」以降、若者が憧れるような目立った新車発売が長期間できていない。ゴーン追放後も、経営は落ち着きがなく、明確な経営指針が出せていない。仏ルノーとの後ろ向きな闘争にエネルギーを使い果たしてきた。ゴーンのイエスマンが後釜争いするばかりで内向きで、新進気鋭の経営陣の育成・構築を怠ってきた。よって、経営の新機軸を打ち出せず、新車開発・新技術追及・販売網の整備に背を向けてきた。株主も社外取締役も、企業経営の正常化への取り組みをしなかった。

  ・企業風土はあまりにもかけ離れている。ホンダは、「自主独立」。日産自は、「官僚的」で「天下り人事・支持待ち」。特に、日産自は旧・日本興業銀行からの天下り、労働組合の経営への圧力が強かった時期が長い。対等の統合は、組織風土からみても根本的にあり得ない。

  ・ホンダは自助努力で、トヨタ追撃を図るべきである。ホンダの日産自の統合は、図体ばかり大きくなって、血の巡りが悪くなるばかりである。

  ・日産自はホンダにもたれ掛かり、ホンダの生き血を吸う姿が見えた。日産自が打ち出した、(1)人員削減9,000人(2)生産ライン2割減も甘い合理化策であった。現在の販売台数からみると、生産台数は3割削減策が最低ラインである。生産性向上策が織り込まれていない。鈍よりした企業風土の改革には一歩も踏み込んでいない。現状からみて、痛みの少ない合理化しか策定できていないため、企業再生の観点からみて「不合格」である。

  ・この日産自の経営陣の本音は、「ホンダから赤字補填」を期待したもので経営陣の「自己保身を図った」経営統合であった、ようにみえる。とても、対等の地位を求められる状況ではない。いずれ、日産自は倒産もしくは、分解・吸収から逃れられない。

  ・ホンダの新提案「ホンダの子会社化」は、ホンダによる日産自の経営改革であった。日産自は、このホンダの子会社化を受入れることが、日産自の従業員・系列会社・協力会社を守る術であった。どうも、日産自の現・経営陣の自己保身に走って「統合合意の破棄」を決めたようにみえる。より不幸を生む意思決定であった。

 5)台湾・鴻海精密工業の傘下入りは、日産自にとって最悪の選択   ・鴻海精密工業は中国企業との関係強化にある点が懸念材料である。しかも、中国共産党とも近く、前代表は習近平国家主席とも会談できる人物であった。   ・鴻海は水平分業型のビジネスモデルを指向し、日本の自動車メーカーの垂直統合型とは違う。日産自は鴻海の傘下に入れば、国内部品メーカーに大きな変化と混乱を強いる可能性がある。

●3.政府の備蓄米を早く放出へ、専門家「3~4割安くなる可能性」(FNN)

 1)2024年夏の令和の米騒動以来、コメの価格は上昇を続けている。   ・コメ5kgのスーパーでの販売価格は、2024年2月に2,018円⇒9月に3,114円。   ・その後、新米が出荷され、価格が落ちつくと思われたが、結局下がらず2025年1月には3,650円まで上昇した。

 2)政府の備蓄米放出で、専門家は「今から▲3割から▲4割安くなる可能性がある」としている。

●4.台湾・鴻海精密工業、日産自と提携可能性を協議=台湾メディア(NHK)

●5.三菱ケミカル、田辺三菱製薬を米国ベインに5,100億円で売却(時事通信)

 1)三菱ケミカルは半導体関連材料など本業の化学事業の強化に注力する。田辺三菱はベイン傘下で新薬開発に必要な投資資金を確保し、医薬品会社としての成長を目指す。

●6.マクドナルド、2024年通期は売上は8,291億円と+6.6%増、純利益319億円と27.0%増と、過去最高(FNN)

●7.JFE、通期純利益1,300⇒950億円黒字に下方修正、中国内需低迷で市況停滞(ロイター)

 1)アナリスト予想は1,449億円だった

●8.日銀の利上げ観測強まる、30年債順調で債券高(ブルームバーグ)

●9.日産自、ホンダに統合協議の白紙化を伝達、子会社化案のめず(ロイター)

 1)日産はホンダの次のパートナー探る、リストラ策も強化へ(ブルームバーグ)

●10.三菱商、洋上風力へ日本にも「逆風」、第3四半期に▲522億円の減損(ブルームバーグ)

 1)ゼロからの見直しも。

●11.東京エレクトロン、宮城県に半導体製造生産棟に1,040億円投資(時事通信)

 1)2027年完成、地上5階、延べ床面積8.86万m2。

●12.農林中金、2024年4~12月期は外債運用で赤字1.4兆円と巨額損失(時事通信)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・6561 HANATOUR 業績好調  ・7269 スズキ  業績好調  ・7951 ヤマハ  業績回復

執筆者プロフィール

中島義之 (なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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