【激動 安全保障の危機】「中国の軍事力は世界平和のため…」白々しいプロパガンダ 「米軍に戦って勝つ」中国・人民解放軍の増強に米厳重警戒

夕刊フジ / 2019年12月2日 17時11分

 中国の習近平国家主席は、米国を超える「世界一の国家」の建設に邁進(まいしん)している。その一環として、「米軍に戦って勝つ」人民解放軍を目指して軍の大改革を行っている。

 その結果、ロケット軍のミサイル戦力の増強、海軍の水上艦艇や潜水艦の増強、宇宙やサイバー空間での作戦能力の向上、AIの軍事適用などの成果を得ている。人民解放軍は質量ともに目覚ましい進歩を遂げていて米軍は危機感を募らせている。

 米軍、特に海軍は、中国・ロケット軍が保有する多種多様なミサイル戦力を警戒している。このミサイル戦力が、中国の「A2/AD(接近阻止/領域拒否)戦略」(=米軍、特に海軍の中国本土方向への接近を阻止し、列島や海洋の利用を拒否する戦略)を支える中核兵器になっている。

 中国のミサイルの能力は、米国のレベルと同等か、それを凌駕していると評価する専門家がいる。地上発射型の射距離500キロから5500キロの中距離弾道ミサイルと巡航ミサイル(=中距離核戦力全廃条約で米国が保有できなかった兵器)は、事実上、中国の「独壇場」になっている。

 例えば、「東風21D」(=『空母キラー』と呼ばれ、移動中の米空母を攻撃できると主張している)や、「東風26」(=『グアムキラー』と呼ばれ、グアムの米軍基地を攻撃するのみならず、移動中の米空母を攻撃できると主張している)が有名だ。

 また、地上攻撃巡航ミサイル「長剣10」は射程が約1500キロで、韓国と日本にある米軍基地がターゲット圏内に入る。

 さらに、中国建国70周年パレードでは、極超音速滑空弾道ミサイル「東風17」や、長距離巡航ミサイル「長剣100」なども登場した。東風17は、マッハ5以上で飛翔し、途中で軌道を不規則に変えるために、日米の既存のミサイル防衛網では対処が難しいと言われている。「長剣100」のターゲットは米国の空母などの大型艦艇だ。

 極超音速滑空ミサイル技術については、米国と中国、ロシアがしのぎを削っているが、正式に実戦配備した国はなかった。もしも中国が「東風17」を実戦で使用できる兵器として完成させているのであれば世界初の快挙となるが、実際はどうか検証する必要がある。

 以上のミサイルの性能などは中国の主張で、中国一流の宣伝戦の可能性があるので、継続的な分析が必要だ。

 最後に、中国はその国防白書の中で「中国の強力な軍事力は、世界平和と人類の未来を共有するコミュニティー建設のため」と白々しいプロパガンダを行っていることを指摘したい。

 ■渡部悦和(わたなべ・よしかず) 元陸上自衛隊東部方面総監、元ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー。1955年、愛媛県生まれ。78年、東京大学卒業後、陸上自衛隊に入隊。その後、外務省安全保障課出向、ドイツ連邦軍指揮幕僚大学留学、第28普通科連隊長(函館)、防衛研究所副所長、陸上幕僚監部装備部長、第2師団長、陸上幕僚副長を経て2011年に東部方面総監。13年退職。著書・共著に『日本の有事-国はどうする、あなたはどうする?』(ワニブックスPLUS新書)、『言ってはいけない!? 国家論』(扶桑社)など。

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