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日銀点検を読む:ETF購入、ESG投資と本質的に矛盾=白井・元審議委員

ロイター / 2021年2月1日 15時36分

 2月1日、元日銀審議委員の白井さゆり慶應義塾大学教授は、ロイターのインタビューで、日銀の上場投資信託(ETF)買い入れについて、市場が動揺する場面でのみ積極化するなどの柔軟化が必要だと述べた。写真は2020年5月、日銀本店前で撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 1日 ロイター] - 元日銀審議委員の白井さゆり慶應義塾大学教授は、ロイターのインタビューで、日銀の上場投資信託(ETF)買い入れについて、市場が動揺する場面でのみ積極化するなどの柔軟化が必要だと述べた。政府が脱炭素に向けた動きを強める中、日銀のETF買い入れは「ESG(環境・社会・企業統治)投資と本質的に矛盾している」と語り、環境や社会のための企業の取り組みが株価に適切に反映されにくくなっているとした。

白井教授は「政策点検に当たって日銀がいちばん懸念しているのはETF買い入れだと思う」と指摘。「日銀の株主としての存在感が増し、これ以上買っていくと市場の機能がさらに歪む」とし、「今のような(株高の)状況の時には買わなくていいと思う。昨年の3月から5月にかけて買い入れを増やしたように、本当に必要な時だけ柔軟に実施すればいい」と提案した。

白井教授は、新型コロナウイルスへの対応で買い入れを積極化したときに掲げた12兆円という上限は残し、従来の買い入れ上限である6兆円は外せばいいと話した。

白井教授は現在、英国に本拠を置くESG関連のアドバイザリー会社で上級顧問を務め、日本企業との対話を通じて環境や社会への取り組みを促す活動を行っている。

「ESGの観点からも日銀が大量に株式を保有するのは良くないことだ」と指摘。買い入れによって「流通株が減ることで、企業に環境や社会の観点で行動を促そうとしても(株価に反映されにくくなり、企業の行動変革が)難しくなってしまう」と話した。

<マイナス金利の弊害>

白井教授は日銀審議委員時代の2016年1月、マイナス金利の導入に反対した。インタビューでは「日本の文脈では、マイナス金利は副作用の方が効果より大きかった」と説明した。

同じくマイナス金利政策を採用する欧州では、銀行の寡占化が進み、利ザヤの縮小がそこまで進んでおらず、移民向けの住宅ローンも伸びている半面、日本ではマイナス金利の導入で金利の預貸スプレッドが一段と縮小したことで貸出金利が非常に低下。利ザヤが相当減っている中で、貸し出しは大きくは増えなかったと指摘した。

白井教授は、新型コロナウイルス対策で日銀が打ち出した民間の資金繰り支援のオペでプラス0.1%の付利を実施していることについて「マイナス金利政策について銀行に対する負担が大きいことを日銀が自ら認めたということだ」とする。その一方で、「マイナス金利の撤廃は、効果がなかったことを世界に発信することになり、海外中銀がマイナス金利の導入を議論する中で非常にインパクトが大きいのでできない」とも述べた。

政策点検ではイールドカーブ・コントロール(YCC)の運営見直しも1つの柱になる。白井教授は「YCC見直しの方向としては金利の変動幅の拡大だと思う」と話し、「5年金利をゼロに誘導することにすれば明白な利上げになる。10年金利の変動幅を拡大していくのが妥当な考えではないか」とした。

円高進行時のマイナス金利深掘りの可能性については「投資家の見方はとても変わりやすく、日銀のマイナス金利深掘りの受け止め方は予測しづらい。銀行からの批判もあり、マイナス金利の深掘りは行わないのではないか」と語った。

*このインタビューは1月29日に実施しました。

*ロイター編集部では、今年3月にかけて日銀が行う金融政策の点検について、識者に聞くインタビューシリーズ〔日銀点検を読む〕を本日から配信します。

(和田崇彦、木原麗花 編集:石田仁志)

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