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アングル:コロナ拡大のアフリカでオンライン送金が急増

ロイター / 2020年11月3日 7時44分

10月26日、経済危機のジンバブエから脱出したブライトン・タカウィラさん(写真)は、南アフリカで創業した小さな香水事業で得た収入の一部を、母国で暮らす母親に渡して支援してきた。南ア・パインタウンの自宅で21日撮影(2020年 ロイター/Rogan Ward)

[ヨハネスブルグ 26日 ロイター] - 経済危機のジンバブエから脱出したブライトン・タカウィラさんは、南アフリカで創業した小さな香水事業で得た収入の一部を、母国で暮らす母親に渡して支援してきた。

ところが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により、国境が閉鎖された。タカウィラさんが母親に送金するために使ってきたバスは運行を停止した。

収入はわずかでパン代さえ事欠くこともあるタカウィラさんだが「数ドルでもいいので、送らないといけなかった」。そこで友人の薦めにより、オンライン送金企業を利用することにした。

タカウィラさんは新型コロナのパンデミックを契機に、オンライン送金サービスを初めて使うようになった多くのアフリカ系移民の1人だ。

世界銀行は新型コロナのパンデミックによる世界的な経済悪化が響き、今年の貧困国への送金が4450億ドル(約46兆6400億円)と、前年比20%減の記録的な落ち込みになると予測した。しかし、アフリカで事業を手掛ける送金企業の利用は急拡大している。

フランスの通信会社、オレンジ で中東とアフリカ向けのモバイル決済事業の責任者を務めるパトリック・ルーセル氏は「(民族が離散した)ディアスポラによる家族を助けようとする動きが広がったため、送金の取り扱いが拡大した」と説明する。オレンジはアフリカのフランス語圏のモバイル決済事業で独占的な市場シェアを握っている。

アナリストや企業関係者は、タカウィラさんの場合のように多くの人たちが家族への送金のために貯金を切り崩したり、他の犠牲を払ったりする必要が生じたと指摘する。

新型コロナのパンデミックにより、送金企業はアフリカでの他の主な競合相手に比べて優位に立った。大勢の移民たちは母国に送金するため、貿易商、バス運転手、旅行者という非公式の幅広い送金ネットワークなどを活用してきた。

タカウィラさんが現在利用している送金会社、ムクルのアンディ・ジュリー最高経営責任者(CEO)は「当社には新規顧客が流入しており、主に非公式市場から入ってきている」と説明する。

ジュリーさんや他の企業幹部はオンライン送金サービスに関し、政府が規制するのが難しい非公式な送金ネットワークと比べて手数料が比較的安く、より迅速に、より安全に送金できるため、利用者の流入が続く可能性が高いとの見方を示す。

ムクルはアフリカでの送金事業を主に手掛けており、顧客は現金と生鮮食品の両方を送ることが可能。同社の事業の伸び率は加速し、前年比で約75%増となった。

<希望の光>

世界銀行によると、サハラ砂漠以南のアフリカへの昨年の送金は総額480億ドルとなった。しかし、専門家によると、この金額は実際の送金額の一部しか反映していない。

アフリカ系移民の大部分は非公式なネットワークを通じて母国に送金しており、これらは公式な統計に盛り込まれていないからだ。

そうした非公式なネットワークが新型コロナのロックダウン(都市封鎖)の期間中に停止し、オンライン基盤を中心とする公式の送金サービスが突如として、唯一利用できる送金手段となった。

ケニアの中央銀行のデータによると、同国への今年1─8月の送金は前年同期比6.5%増だった。ジンバブエへの1─7月の送金は33%増加した。

オンライン送金企業のワールドレミットは先週、同社を利用したジンバブエへの送金は過去6カ月間に倍増したと発表した。

ナイジェリア、ガーナ、ケニアといったアフリカ諸国を主力とし、英国に本社を置く送金企業のアジモは、4─6月の新規顧客が想定を2倍近く上回った。

アジモのマイケル・ケントCEOは「パンデミックは嫌だ」と前置きしつつ、「起きていることを見ると、あらゆる所で金融サービスがデジタル化していると思う」とロイターの取材に答えた。

新型コロナのパンデミックが起きた当初段階で、送金企業はさらなる追い風を受けていた。アフリカの中央銀行は人々が社会的距離を置きやすいオンラインサービスを使うのを後押しするため、デジタル送金の費用を引き下げ、利用制限を緩和したからだ。

MFSアフリカの創業者、デアー・オクージュー氏は「(送金の)総額が減るという世界銀行の予測は当たっているかもしれない」としながらも「デジタル業界にいる者はだれでも市場シェアを伸ばし、取扱量を増やすことになる」と語った。

同社はアフリカの36カ国でモバイル現金口座間の送金を手掛けており、2020年の取り扱い実績は前年より90%超伸びている。

アナリストは、送金サービス事業が転換点を迎えていると指摘する。

ニューヨーク大学のフィナンシャル・アクセス・イニシアティブのマネージングディレクター、ティモシー・オグデン氏は「お金があまり摩擦を起こさずに流れるようになるならば、誰にとってもより良いことになる。それは希望の光だ」と訴える。

兄弟とも南アフリカで働いているタカウィラさんは、物価上昇率が650%を超えているジンバブエの農村で暮らす60歳の母親に対し、ムクルを活用して毎月現金と生鮮食品を送るようになったと話す。

タカウィラさんの母親のグラディス・ムジラさんは「私の給料では多くの物を買えない。息子たちがお金を送ってくれることで大いに助かっている」とロイターに語った。

(Joe Bavier記者 MacDonald Dzirutwe記者)

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