焦点:コロナ対策が誘発の米国債供給急増、年限で消化に違いも
ロイター / 2020年4月3日 18時54分
4月2日、米国債市場では、新型コロナウイルス対策に伴って急増する新規供給を吸収する態勢を、投資家が整え始めた。写真は3月、経済対策協議のため米議会を訪れたムニューシン財務長官(2020年 ロイター/Al Drago)
[2日 ロイター] - 米国債市場では、新型コロナウイルス対策に伴って急増する新規供給を吸収する態勢を、投資家が整え始めた。ただ、どれだけ円滑に消化されるかは、年限次第で様相が変わってくるかもしれない。
トランプ大統領が3月27日に署名した2兆2000億ドル規模の新型コロナ対策は、経済対策として過去最大規模。所得が減った国民への現金給付や失業保険の拡充、最前線で活動する医療従事者への多額の支援などが盛り込まれた。
こうした措置の財源をねん出するため、財務省は既に政府短期証券(Tビル)の発行を増やしており、今後も増額を続ける見通しだ。利付債についてもイールドカーブ全般にわたって発行規模を引き上げる必要があり、市場の需要喚起に向けて新たな種類の国債の発行も予想されている。TDセキュリティーズの金利ストラテジスト、ジェナディ・ゴールドバーグ氏は「発行カレンダーには多くの変化が生じると思う」と述べた。
国債発行の急増は、Tビル投資家にとっては、足元で利回りがマイナスに転じていただけにむしろ安心感が得られる。しかし長めの期間の国債利回りが押し上げられ、イールドカーブがスティープ化する恐れも出てくる。
ソシエテ・ジェネラルの米国金利戦略責任者スバドラ・ラジャッパ氏は「一番短いゾーンでは実質的に好材料となる。なぜならTビル利回りはマイナス圏で推移しており、供給が増えるほど利回りがプラスに戻っていくからだ」と話す。
反対にラジャッパ氏がより不安があるとみるのが利付債の方で、目先の状況を乗り切れたとしても、これほど莫大な供給に市場がどうやって対応していくのか、特にわずかの間に利回りが高騰してしまったらどうなるか気掛かりだという。
長期金利が上昇すれば、政府や企業、消費者が抱える債務の返済負担が高まり、経済の足かせとなってしまう。
ウェルズ・ファーゴのアナリストチームは3月31日、米国債発行残高の純増額は第2・四半期に1兆4000億ドル、年内では2兆8000億ドル増加する公算が大きいと予想した。
<鍵握るFRB>
財務省は必要な発行額の大半を、より短い年限の国債に集中させる見通しだ。短期ゾーンは、低リスク資産の需要が存在する限り、強い引き合いがあるはずだ。
過去1週間で同省は、定例のTビル入札のほかに、当座の資金を賄う目的に利用するキャッシュ・マネジメント・ビル(CMB)を3300億ドル発行すると表明している。
これは政府債のみに投資しているマネー・マーケット・ファンド(MMF)の窮状を和らげる可能性がある。足元で低リスク資産の需要が急拡大し、短期債利回りがマイナスになっていたからだ。
iマネーネットによると、政府債MMFの資産は2月25日時点で2兆6500億ドルだったが、3月末には3兆5000億ドルに増加した。
政府はやがて利付債の入札規模を本格的に拡大することも迫られるだろう。具体的には5月6日の四半期調達計画で明らかになりそうだが、発表がもっと早まる可能性はある。
当面の措置として財務省は今月2日、来週実施する3年債入札の発行額を20億ドル、10年債と30年債はともに10億ドル引き上げた。さらに入札規模を拡大する目的で、新たに4年債や20年債、担保付き翌日物金利(SOFR)連動の変動利付債などが発行される、というのがアナリストの見立てだ。
利付き債がどこまで順調に消化されるかの鍵を握っているのは、米連邦準備理事会(FRB)の国債買い入れではないだろうか。
FRBは過去1カ月間、投資家の現金化が活発化して流動性が極端に細った米国債市場の緊張をほぐすために、買い入れを増やしてきた。その結果、2月26日に4兆1600億ドルだった債券保有額は3月25日に過去最大の5兆2500億ドルに達した。
だが市場機能が正常に戻れば、FRBは今のペースで買い続けないだろう。とりわけ新型コロナ感染が抑えられて経済が速やかに回復する局面になれば、そうなる。
シーポート・グローバル・ホールディングスのマネジングディレクター、トム・ディガロマ氏は「市場が落ち着けば、恐らくFRBは買い入れを継続しない」と述べ、そこで一時的に市場は供給増とFRBの買い入れ縮小の間で一時的に身動きできなくなるとの見方を示した。
長めの国債利回りが上昇する可能性は、既にイールドカーブに織り込まれたかもしれない。3月の初め以降、スティープ化が進んでいるからだ。3月9日にわずか2ベーシスポイント(bp)だった2年債と10年債の利回りスプレッド
(Karen Brettell記者、Ross Kerber記者)
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