焦点:鈍重なドル円、経済停滞でフロー退潮 ソフトバンクGで思惑も交錯
ロイター / 2020年7月3日 14時46分
7月3日、ドル/円<JPY=>の値動きが再び鈍ってきた。コロナ禍で経済活動が停滞し、貿易やM&A(企業の合併・買収)などを含むマネーフローが退潮しているためだ。写真は2016年11月撮影(2020年 ロイター/Dado Ruvic)
基太村真司
[東京 3日 ロイター] - ドル/円
<歴史的な米株上昇にドル/円は無反応>
この4─6月期、ドルの安値は5月の105.98円で、高値は6月の109.85円。上下の値幅は3.86円だった。四半期の値幅としては98年以降で4番目に小さく、前四半期末と比べた変化率もわずかプラス0.34%と、ほとんど動きがなかった。
株式と円の逆相関。株高局面で円が売られ、下落局面では買われるという関係性は良く知られている。しかし、ドル/円に重要な影響を与えるとされる米国株の代表指標、S&P総合500種指数<.SPX>はプラス19%と、四半期としては98年以降で最大の上昇率を記録した。ここまで対照的な結果となることは、あまりない。
株式と円の相関度低下は、今に始まったことではない。世界経済の急減速とともに、それでも最強の経済力を持つ米国がマネーの逃避先となり、ドルが円と同様に市場心理の明暗に応じて売買される場面が増えたこと、日本と同じくマイナス金利を採用し、高い流動性と安定性を誇るユーロに、調達通貨の役割がシフトしていることなどが、その要因として挙げられる。
<貿易取引11年ぶり大幅減、対外直投は半減>
外出自粛など経済活動の全面的な停滞で、モノやサービスの国際的な移動が止まったことも見逃せない。日本の5月輸出総額は前年比28%減と2009年9月以来、輸入は同26%減と同10月以来の大幅減少を記録した。主要国による空前の金融緩和政策であふれたマネーが流れ込む株式市場を横目に、越境する実需マネーの総量は急減している。
凍てついたのは貿易取引だけではない。ここ数年、円安地合いを支える一因となってきた、日本企業による海外企業の買収も大きく減速している。
財務省によると、今年1─4月の対外直接投資は合計で7兆円弱。年間で27兆円と過去最大を記録した昨年の同期間と比べると、そのペースはほぼ半減だ。「今年の対外M&Aによる資金流出額は、前年比で10兆円以上減少する」(バークレイズ証券チーフ為替ストラテジストの門田真一郎氏)との試算もある。
<「ソフトバンクの円買い」狂騒曲>
マクロ経済動向とは別に、企業売却を巡り、投機筋の思惑が入り乱れ、円相場が短期間に激しく上下動したことも、結果的にドル/円の値幅を抑制した面もある。
火種はソフトバンクGのTモバイルUS
売却検討の第一報があったのは5月半ば。その後、投機筋の間で巨額円買いのうわさがくすぶる中、同社が6月半ばに売却を含めて検討すると正式に発表すると、市場の思惑と円を買い仕掛ける投機筋の動きは、一気にヒートアップする。
そして6月23日。株式売却を開始すると発表した日の海外市場で、円相場に異変が起こる。特段の手掛かりがない中、107円前半を推移していたドルは、午後9時過ぎからじりじりと下落。同10時頃には106円半ば、11時頃には106円前半、零時前には106.07円と下げ続けた。
同社が実際に円買いを執行したかは不明だが、市場筋によると、その間の取引高は普段を大きく上回る規模へ膨らんだ。それが2兆円超の巨額取引という観測に現実味を与え、一段の思惑を呼び起こす。「2兆円は一度で処理しきれないだろう。円買いは断続的に入り続けるのではないか」(トレーダー)というものだ。
翌24日。先んじて円を買い込んだ多くの投機筋が、巨額の円買いを待ち焦がれる中、海外市場で状況は一変する。主要国の株価が下落していたにも関わらず、ドルはなぜかじりじりと上昇を開始。107円台をあっけなく回復し、続く東京市場でも続伸した。
結局、ドルの上昇過程では、円を買い仕掛けていた向きが、相次ぎ損失確定の売り戻しを迫られただけに終わった。
海外勢の動きに詳しい、ある外資系関係者は「23日の円高は、一部ファンド勢がソフトバンクの円買いを吹聴しながら、意図的に仕掛けた動きだったようだ。思惑の高まりを利用して、意図的に円買いに参加者を誘い込み、(持ち高を)刈るつもりだったのではないか」と話す。
マネーフローが縮小し、投機筋のポジションも軽い状況では、大きな動きは見込みにくい。新型コロナの感染状況や実体経済、マクロ政策に大きな変化がないままであれば、ドル/円は短期的なリスクオン/オフに多少反応するだけの動きにとどまる可能性がある。
(編集:伊賀大記)
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