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アングル:ミャンマーで遮断、フェイスブックが重大局面に

ロイター / 2021年2月6日 7時52分

 ミャンマー国軍が、民主的な選挙で圧倒的に勝利した国民民主連盟(NLD)を率いるアウン・サン・スー・チー氏を拘束して全権を握った後、フェイスブックへの接続を国内通信事業者に遮断させた。写真は拘束に抗議する、日本在住のミャンマー人。3日、都内で撮影(2021年 ロイター/Issei Kato)

[4日 ロイター] - ミャンマー国軍が、民主的な選挙で圧倒的に勝利した国民民主連盟(NLD)を率いるアウン・サン・スー・チー氏を拘束して全権を握った後、フェイスブックへの接続を国内通信事業者に遮断させた。ミャンマー国民の実に半数が利用するフェイスブックは、国軍との間で過去数年間、緊張関係が続いていたが、今回、さらに何らかの対応を迫られる重大な局面を迎えた。

NLDなどがフェイスブックを使って抵抗組織づくりを始めたことを受け、当局は3日、少なくとも7日までの接続を禁止。クーデター発生後に軍への不服従を呼び掛けるため新たに開設されたページは、数日間で20万人近くがフォローし、ミャンマーの著名人らの支持も集め、関連のハッシュタグは数百万回使用された。

非政府組織(NGO)、ヒューマン・ライツ・ウオッチのアジア副ディレクター、フィル・ロバートソン氏はロイターに「国軍はフェイスブックをインターネット上の『宿敵』とみなしている。国内で圧倒的な通信手段となっている上に、軍に反対姿勢を取ってきたからだ。国民がオンライン経由で大規模な抵抗運動を急速に立ち上げつつある以上、(軍にとっては)アクセス遮断が最優先事項だ」と説明した。

フェイスブックの広報担当者は4日、ミャンマー当局に対し、フェイスブックとワッツアップへの国民のアクセス再開を改めて要望した。

今後、フェイスブックは民主勢力の政治家や活動家を守ることと、サービスを再開できるよう当局に協力することとの間で、どう折り合いをつけて振る舞うか、難しい決断をしなければならない。

今回の事態は同社が世界各地で直面している政治的ジレンマが、最も鮮明に現れたと言える。近隣のベトナムでは接続遮断を避けるために、政治的批判への検閲強化を要請した政府に最近、渋々従った。中国などでは長年にわたって接続を禁止されているが、これを除けばフェイスブックはこれまで、ほとんどの国で遮断を免れてきた。とはいえ、今はインドやトルコ、そのほかでも当局の圧力に見舞われている。

ミャンマーの場合、フェイスブックの拠点人員は少ないながらも、ここ何年かは人権活動家や民主政党と連携し、軍の干渉を押し返していた。これは、民族的憎悪をあおる投稿を制限してこなかったと国際的に猛批判されたことへの対応だ。

2018年には、今回のクーデターを指揮したミン・アウン・フライン総司令官と他の19の軍幹部や、組織によるサービスの利用を禁止したほか、軍人が不当な行為を呼び掛けるために立ち上げたとして数百のページを削除した。

また、昨年11月の総選挙に先立ち、フェイスブックは軍に好意的、あるいはスー・チー氏とNLDに批判的な投稿していた軍人が運営する70の偽アカウントとページのネットワークを削除した。

それでも、ロイターが今週初めに確認したところ、選挙に不正があったと言い立てたページやアカウントは数十あった。選挙不正の主張はクーデターの「大義名分」となっており、関連の投稿は総選挙前の昨年10月から始まり、選挙後も続いてきた。

クーデター直前の48時間を見ると、こうしたページの多くが軍の「介入」を求めていた。クーデター後は、同じページの投稿が、倒された政権の「不正」を追及したり、クーデターを正当化する内容などに代わっていた。いくつかのページは足並みをそろえ、スー・チー氏ら民主政治家や報道関係者、人権活動家などを批判したり脅迫する投稿を公開した。

フェイスブックは3日の接続遮断の直前、問題とみなした数十のアカウントを削除した。

クーデターのわずか2日前には、その後に新情報相となったチット・フライン氏が、フェイスブックがサービス利用を禁じていた「ラジオ・フリー・ミャンマー」の報じた話と称する内容を、シェアしていた。フェイスブックがこのラジオ局に禁止措置を取ったのは、イスラム教徒少数民族・ロヒンギャへの国民の反感をあおるための偽情報流布に使われていると認定したからだ。

3日までに、このフライン氏のアカウントも投稿もフェイスブックによって削除されていた。

<際立つ影響力>

フェイスブックがミャンマーで果たしている役割は、際立って大きい。国民の多くはフェイスブックをインターネットの同義語と考えるほどだ。ある人権活動家は4日、「フェイスブックの遮断は実質的に、インターネットの禁止だ」とツイッターに書き込んだ。

国連調査団はフェイスブックに対し、ミャンマーで過激な仏教徒系民族主義者や軍人らが、ロヒンギャへの暴力をあおるのに使われるのを看過したと批判している。

これを受け、フェイスブックはヘイトスピーチや偽情報の取り締まりに努めるようになり、民主派との連携を強めて、時には軍と対立することも辞さなかった。その結果、フェイスブックはミャンマー国民の暮らしの中心的な役回りを維持し、NLD政権は大きな政策発表を定期的にフェイスブックのページで行ってきた。

17年の軍の弾圧では、ロヒンギャ70万人以上が国外に避難している。

ロイターがフェイスブックの広報担当者に最新状況を問い合わせたところ、東南アジア担当ポリシーディレクターのラファエル・フランケル氏が出している声明が、社の方針だとの返答だった。声明は「昨年11月の総選挙の結果の合法性を否定する偽情報の削除」を進めているとしている。

広報担当者によると、フェイスブックはミャンマー問題を緊急案件として扱っている。人工知能(AI)を駆使し、ヘイトスピーチと暴力扇動の規約違反に該当している可能性の高いコンテンツを制限しているという。

もっとも、クーデターが始まったときから、国軍もフェイスブックを積極活用した。傘下の「真実のニュース」部門は接続遮断まで毎日、国軍からの情報を提供していた。

1日未明のクーデターからわずか数時間でミン・スエ臨時大統領のページが開設され、それ以降も民主政府の複数のホームページを軍が乗っ取った。

そこでは今や情報省から、ソーシャルメディア上の「社会不安や騒乱を誘発させる恐れがあるうわさ」に注意するようにとの公式な警告が繰り返し出されている。

(Fanny Potkin記者)

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