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アングル:米政権のEV充電整備計画、民間資金呼び込みに壁

ロイター / 2021年9月6日 13時12分

9月1日。バイデン米政権は約1兆ドルのインフラ投資計画で、電気自動車(EV)の充電拠点の整備に75億ドルを充てる野心的な取り組みを盛り込んだ。写真はロンドンの街中に接地されたEV用の充電施設。1月撮影(2021年 ロイター/Toby Melville)

[1日 ロイター] - バイデン米政権は約1兆ドルのインフラ投資計画で、電気自動車(EV)の充電拠点の整備に75億ドルを充てる野心的な取り組みを盛り込んだ。しかし、この分野に民間投資を呼び込み、地域格差の縮小を図るには課題が山積している。

EVの普及台数が国内最大で、充電インフラの整備が最も進むカリフォルニア州での実情が、いかにバイデン政権の目標達成が難しいかを物語る。

同州は過去数年間に20億ドル余りをさまざまなEV普及促進計画に投入し、充電拠点の公平な設置も試みた。また、2012年以降、温室効果ガスの排出権取引制度を通じて250億ドル以上の資金を調達し、その一部をEVや充電拠点のプロジェクトに充てている。

だが、国際クリーン交通協会(ICCT)の調査によると、カリフォルニア州の充電インフラは、25年までに見込まれるEVの普及台数増加を支えるのに必要な水準の40%弱に過ぎない。

また、カリフォルニア州のハンボルト州立大学の研究者による2月の調査で、州内のうち黒人やヒスパニック系住民が多く住む低所得層の地域では、公共の充電拠点へのアクセスが非常に難しいことが明らかになった。

ジョン・タートナー氏は「充電拠点を設置する側にとっては、EVの普及率が相対的に低いため、経済性が非常に厳しい状況になっている」と述べた。

<カギは初期費用>

カリフォルニア州のEV充電器メーカー、EVCSのグスタボ・オチウッツォ最高経営責任者(CEO)は、農村部や経済的、社会的に不利な条件に置かれている地域で充電拠点網を構築する場合、初期費用や運営費用を負担する公的支援がどの程度あるかが、判断を左右すると指摘した。

「時間と資金をどこに投資するかを戦略的に考える必要がある」と述べ、カルフォルニア州は最も利益が上がっている地域の1つだと明かした。

しかし、EVゴーやチャージポイントなど民間の充電拠点運営会社は、ほとんどがまだ黒字化していない。EVゴーとチャージポイントの幹部は、見過ごされている地域に充電設備を広げ、設備の設置を検討している企業のオーナーや地主にインセンティブを与えるには、政府の支援が不可欠だとしている。

カリフォルニア州は、不利な立場に置かれているコミュニティーへの普及措置を徐々に手厚くしている。EV購入支援策への中低所得者層からの申請は今年に入って25%増え、EV充電拠点整備計画における資金の約3分の1が、こうしたコミュニティーに割り当てられている。

ところが、同州の計画を全米規模で展開するには、バイデン政権の見積もりをはるかに上回る資金が必要となる。キャップジェミニ・アメリカスのシニアディレクター、ダニエル・ダベンポート氏の試算に基づくと、全米規模で充電拠点網を構築する費用は約500億ドルに上る。

ホワイトハウスのある高官は、エネルギー省の融資プログラムなどの資金調達手段を活用し、民間資本だけでは必ずしもサポートが行き届かない地域に公的資金を優先的に投入する方針だと述べた。計画の策定にあたり、充電拠点の設置や運用における公平性を重視する考えだという。

<重要な稼働率>

州政府や連邦政府は、高所得層居住地域以外にも充電拠点を普及させる上で、EVの普及が不十分で、充電設備の稼働率が低いという2つの課題に直面している。

EVのバッテリーを30分で充電できる急速充電器の価格は約10万ドル。専門家によると、現在の価格で採算を取るには1日の稼働率が少なくとも20%を超える必要がある。そのため充電器メーカーの多くは、稼働率が高い地域に拠点を設置しがちだ。

EVも将来的には中古車が市場に出回り、高所得層以外にも普及するかもしれない。だが、市場調査会社J・Dパワーによると、今のところEVは米国のディーラーの扱いに占める中古の割合がたった0.3%で、新車でも3%に過ぎない。

一方、政府機関以外では電力会社が充電拠点網拡大の資金源に浮上し、自前で拠点を保有したり、民間企業と提携したりしている。

電力業界団体のエジソン電力協会の話では、投資家が所有する電力会社は、ここ数年で30億ドルのEV充電インフラ向け投資を承認し、その大部分をカリフォルニア州とニューヨーク州の企業が占める。

これらの資金4分の1が不利な立場に置かれたコミュニティーに割り当てられており、今後は充電拠点の公平性に基づく資金調達プログラムが加速する見通しだ。

(Tina Bellon記者)

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