アングル:FB内部告発で議論沸騰、「新監督機関」は解決策か
ロイター / 2021年10月8日 7時12分
米フェイスブックを内部告発した元社員のフランシス・ホーゲン氏(写真)は5日、米議会公聴会で証言し、ソーシャルメディアの有害性を抑える選択肢の1つとして、この分野の企業を専門に監督する規制当局の創設を提唱し、職員に元技術者を充てることもできると提言した。米議会で5日代表撮影(2021年 ロイター)
[ワシントン 6日 ロイター] - 米フェイスブックを内部告発した元社員のフランシス・ホーゲン氏は5日、米議会公聴会で証言し、ソーシャルメディアの有害性を抑える選択肢の1つとして、この分野の企業を専門に監督する規制当局の創設を提唱し、職員に元技術者を充てることもできると提言した。規制当局の設置は、ソーシャルメディアという問題の解決策になるのだろうか。
ホーゲン氏は米議会上院の商業科学運輸委員会が開いた公聴会で「今のところ、フェイスブック内部の状況を理解する技量を備えているのは、フェイスブックやピンタレストなどソーシャルメディア企業で育った人材だけだ」と述べた。
ソーシャルメディア企業をどう規制すべきかを巡っては、議員や規制当局、専門家の間で激しい議論が戦わされてきた。特に世界最大のソーシャルネットワークであるフェイスブックは、プラットフォームの仕組み、ユーザーのデータの取り扱い、サイトがユーザーに与える影響などが透明性を欠いていると非難を浴びている。
フェイスブックの元プロダクトマネジャーで、同社の内部文書を米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)にリークしたホーゲン氏は、フェイスブックは利益追求志向が強く、圧力をかけなければ変わらないと指弾。「フェイスブック内部の志向性が変わるまで、変化を期待すべきではない。議会が動かなければだめだ」と言い切った。
もし、自分がフェイスブックのトップになったとしたら、内部調査の結果を議会やその他の監督機関と共有できるような経営方針を即座に確立し、社内のシステムや判断について透明性や公開性を進めるとも述べた。
スタンフォード大学法科大学院のナサニエル・パーシリー教授は、ソーシャルメディア企業に外部研究者とのデータ共有を義務付ける規制の法制化を訴えている。「フェイスブックは、秘密のベールの下で繁栄している。外部の目にさらされれば行動も変わる」と説明した。同氏は昨年、フェイスブックと研究者のデータ共有促進に向けた取り組みから身を引いている。
パーシリー氏は、来年中には行動を起こす必要があるとして、連邦取引委員会(FTC)がその任に当たるとの案を支持している。後で新たな政府部門を創設することは可能としつつ「戦争は、望ましい戦力ではなく、手持ちの戦力で遂行するものだ」と述べた。
一方、元連邦通信委員会(FTC)委員長のトム・ウィーラー氏は、個人情報保護などの面でIT大手の基準を確立し、強制力を持たせるために、守備範囲が広く、専門性を備えた新たな独立した機関を想定していると話す。
フェイスブック広報担当のリナ・ピエッチ氏は5日に「当社は2年半前から規制の強化を求めてきた」と述べ、以前から政府監督を求めていると説明した。
ただ、規制当局創設の問題点を指摘する声もある。
「リアル・フェイスブック・オーバーサイト・ボード」のプログラムディレクター、カイル・テイラー氏は、規制当局は不可欠だが、官公庁と民間企業の間で人材が行き来する「回転ドア」を設けて、ソーシャルメディア企業の元従業員が規制当局入りすることには、警戒が必要だと言う。
ソーシャルメディアの企業統治を専門とする、セントジョンズ大学ロースクールのケート・クロニック準教授もツイッターへの投稿で、こうした規制当局に偽情報問題を任せるべきではないとの見解を示した。
<さまざまな改革案>
ホーゲン氏は公聴会で、ユーザーの投稿に関するソーシャルメディア企業の免責を認めている通信品位法230条の改正も議員に呼びかけた。
「ソーシャルメディア企業は、自分たちのアルゴリズムを完全にコントロールしている。フェイスブックに自由な選択を認め、公共の安全性よりも成長性、バイラリティ(サービスの拡散度合い)やリアクティブネスを優先させてはいけない。私たちの安全性を犠牲にして利益を得ているからだ」と話した。
フェイスブックはベストプラクティス(最善の実践)に従っている場合に限り、企業の責任を免除するという230条の改正に賛意を示している。
公聴会で議員は、ホーゲン氏が提案したさまざまな改革案について異論を唱えず、似たような内容の法案に触れることが多かった。
リチャード・ブルーメンソル氏など超党派の上院議員グループは6月、大手インターネットプラットフォームに対し、アルゴリズムによってはじかれたコンテンツをユーザーが閲覧できるようにすることを義務付ける法案を提出済み。
ホーゲン氏はまた、フェイスブック依存症などの問題を挙げ、ユーザーの年齢制限を13歳から、16歳または18歳に引き上げるよう求めた。
現行の法律では、12歳以下の子どもはティーンエージャー(13─19歳)よりもオンライン上の保護が手厚い。この年齢を15歳に引き上げることなどを盛り込んだ法案が議会に提出されている。
フェイスブックは、同社傘下インスタグラムのサービスのティーンエージャーへの悪影響などに関する内部資料をホーゲン氏が公表した直後の9月、インスタグラムの13歳未満向けサービスの開発を一時中断すると発表した。
(Elizabeth Culliford記者)
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