インタビュー:中銀デジタル通貨、保有制限の議論に説得力=日銀決済機構局長

ロイター / 2021年4月9日 1時5分

日銀の神山一成決済機構局長は、中銀デジタル通貨(CBDC)発行時に金融システム安定の観点からCBDCの保有額に制限を設けるべきだとの指摘が出ていることについて「それなりに説得力がある」と述べた。写真は昨年5月、都内の日銀前で撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon/File Photo)

[東京 9日 ロイター] - 日銀の神山一成決済機構局長は、ロイターのインタビューで、中銀デジタル通貨(CBDC)発行時に金融システム安定の観点からCBDCの保有額に制限を設けるべきだとの指摘が出ていることについて「それなりに説得力がある」と述べた。ただ、保有額の制限など現金とCBDCの差別化についてはまだ具体的に決まっていないとした。

神山局長は「民間ビジネスにCBDCが与えうる影響は今後の検討において重要な論点だ」と指摘。「CBDCと民間の決済サービスが共存、補完しあうかたちで、日本の決済システムの安定性、効率性が全体として高まる動きにしていかなければならない」と述べた。

フィンテック企業がCBDC発行時に日銀とエンドユーザーをつなぐ「仲介機関」になる可能性については「仲介機関の範囲、数をどうするかはまさに制度設計の根幹だ。日本の決済システムの構造に大きな影響を及ぼすため、しっかり幅広い関係者の意見を聞きつつ決めていく」と述べた。

<トレードオフをどう乗り越えるか>

神山局長は「金融不安が高まって民間のマネーからCBDCに大量のシフトが起きると、預金の取り付け騒ぎよりもデジタルの方がシフトが起きやすい。CBDCにわっと資金が流れ込む、デジタルバンクランのような状態も起こりうる」と警戒感を示した。「そうならないように、平時から預入額(保有額)制限を設けた状態で設計した方が安全ではないか、という議論はそれなりに説得力がある」と話した。

ただ、CBDCの保有上限、付利の可能性について「そこはいろいろな選択肢を持っておくということであり、現時点で決めているものはない」とし、「ECB(欧州中銀)ほかの中銀とも、預入額制限や付利のあり方については議論していくことになると思う」と述べた。

保有額や利用額の上限設定と利便性はトレードオフの関係にあるほか、利便性を追求しすぎると安全性が脅かされるリスクがある。神山局長は「トレードオフをどう解決するかという問題にCBDCは直面している。そういうトレードオフを解消するのは、新しい技術ではないか。セキュリティーと効率性のトレードオフ、金融安定と効率性のトレードオフ等、しっかり分析検討して考えていきたい」と述べた。

<民間のサービスとの共存>

神山局長は「民間銀行もデジタル化を進めて顧客ニーズに応えようとしている。民間の前向きな取り組みをサポートしていきたい」と話し、「現時点では発行計画はないが、仮にCBDCを発行する場合にはその設計は決済システムの将来像としっかりすり合わせていく。そのためにも、関係者との対話を早い段階からしっかり進めていく」と述べた。

日銀は3月、政府や民間事業者との連絡協議会を立ち上げた。CBDCの実証実験についての情報共有などを主眼とするが、協議会には預金取り扱い金融機関ではないフィンテック企業の業界団体も入った。神山局長は「預金は扱っていないが決済については関心を持っている主体なので、将来の決済システムを考えるうえでの建設的議論を期待する」と語った。

日銀は5日、CBDCに関する実証実験の第1段階を始めた。発行、払い出し、移転、還収といった基本機能を検証し、来年3月までの1年間の実施を予定。さらに、周辺機能を検証する実証実験の「フェーズ2」を想定している。

実証実験フェーズ2について、神山局長は「今年度から準備を進めていく。実際にフェーズ2に入るのは来年度に入ってからになる」と述べた。

<クロスボーダーでの利用も視野に>

神山局長は「CBDCの検討においては、まずは国内の決済を便利にすることが重要だが、その先にクロスボーダーでのCBDCの利用も考えられるようになるのではないか」と指摘。日銀が国際標準の重要性を様々な会議で指摘していると話した。

「先進国と新興国でCBDCのあり方が異なる可能性がある。より似たような国が共通するルールを考えていく方がいいのではないか」とする一方、「同時並行的により広範な国を念頭に置いた標準化に取り組むことも、特にクロスボーダーについては意識しないといけないかもしれない」と述べた。

このインタビューは8日に実施しました。

(和田崇彦、木原麗花  編集:石田仁志)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング