ECB理事会後のラガルド総裁発言要旨
ロイター / 2021年9月10日 0時13分
欧州中央銀行(ECB)は9日の理事会で、新型コロナ対応の債券買い入れプログラムの買い入れ規模縮小を決定し、緊急措置の解除に向けた一歩を踏み出した。写真は会見中のラガルド総裁。(2021年 ロイター/Kai Pfaffenbach)
[フランクフルト 9日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は9日の理事会で、新型コロナ対応の債券買い入れプログラムの買い入れ規模縮小を決定し、緊急措置の解除に向けた一歩を踏み出した。現行の1兆8500億ユーロ規模のパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の買い入れ規模を、前2四半期の月間800億ユーロから小幅縮小すると発表した。
理事会後のラガルド総裁の記者会見での発言は以下の通り。
<財政支援>
現在の財政支援を段階的に解除しなくてはならない時期はいずれやって来るが、現時点での解除は時期尚早だ。経済にもたらす多くの良好な結果や回復の理由が財政政策と関連していると確信している。回復のプロセスは非常に進んだ段階にあるが、まだ完全な回復には至っておらず、財政支援を継続する必要がある。
<危機脱していない>
われわれはまだ危機を脱しておらず、ゴルフで言えばグリーンにはいない。
<決定は全会一致>
全ての面で、全会一致の決定だった。
<スタグフレーションはない>
経済の完全な回復を望んでいる。そのためには雇用創出が必要だ。200万人の失業者を再就職させなければならない。経済の回復によりこれが最終的に得られるのなら、スタグフレーションに向かっているとは思えない。
<賃金圧力>
賃金の大きな上昇は見られていない。秋の交渉を極めて注意深く見守りたいが、現時点では賃金上昇は予想していない。上昇は段階的で緩やかなものになるだろう。
<パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の買い入れ縮小>
良好な金融環境を実現するという目標達成に向け、買い入れペースの調整を全会一致で決定した。これに続く措置については、討議されなかった。
<おおむね均衡>
経済見通しに対するリスクはおおむね均衡している。消費者信頼感が高まり、貯蓄が予想以上に減少すれば、経済活動はわれわれの予想を上回る可能性がある。さらに、パンデミック(世界的大流行)を巡る情勢の改善に弾みがつけば、想定以上に堅調な景気拡大に至る可能性がある。
<物価圧力の可能性>
供給のボトルネックが長期化し、予想以上の賃金の上昇につながれば、物価上振れ圧力はさらに持続する可能性がある。
<下方リスク>
パンデミックを巡る状況が悪化すれば、経済活動の再開がさらに遅れる、もしくは供給の制約がさらに持続すれば、生産は圧迫される恐れがあり、経済見通しは悪化する可能性がある。
<金融政策による支援はなお不可欠>
バランスシートおよび資金調達状況のひっ迫が相互に悪影響を与えることを防ぐために、金融政策による支援はなお不可欠だ。
<足元のインフレ高進は一時的>
結論として、ユーロ圏経済は明らかに回復しているが、回復のスピードは引き続き、新型コロナ感染の経過やワクチン接種の進捗状況に左右される。足元のインフレ率の上昇はおおむね一時的で、基調的な物価圧力は緩やかに高まっていくと予想される。
<資金調達環境は良好>
成長率やインフレ率の回復は依然、経済の全部門に対する良好な資金調達環境に左右される。市場金利は夏場に緩和したが、最近は反転している。
全体的に経済の資金調達環境はなお良好だ。企業や家計に対する銀行の貸出金利は歴史的な低水準にとどまっており、家計への貸し出しは特に住宅購入向けが持ちこたえている。
企業向け融資の伸びがやや鈍いのは、企業が新型コロナの第1波で多額の借り入れを行う中、まだ十分な資金を持ち合わせていることが主な要因だ。
<第3四半期も力強く成長>
第2・四半期のユーロ圏域内総生産(GDP)は前期比2.2%増と、予想以上に伸びた。第3・四半期も力強い成長が見込まれる。景気の回復は欧州での新型コロナワクチン接種の進展によるもので、これにより経済が大幅に再開した。
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