情報BOX:ウクライナ危機、日本企業がロシア事業を続々停止
ロイター / 2022年3月10日 22時47分
西側諸国が制裁措置を強化し、国際社会がウクライナ軍事侵攻への非難を強める中、日本企業もロシア事業を続々と停止している。写真は赤の広場。3月9日、モスクワで撮影(2022年 ロイター/Evgenia Novozhenina)
[東京 10日 ロイター] - 西側諸国が制裁措置を強化し、国際社会がウクライナ軍事侵攻への非難を強める中、日本企業もロシア事業を続々と停止している。
日ロ貿易は資源輸入の割合が大きく、日本側の貿易赤字が続いている。2021年の輸入額は1兆5431億円で、液化天然ガス(LNG)を含む鉱物性燃料が61.3%と過半を占め、銀や白金、半導体生産に用いるパラジウム等の原料別製品が22.6%、魚介類や甲殻類といった食料品が9.1%、木材等の原材料が5.1%を占める。
同期間の輸出額は合計8624億円。自動車関連が目立ち、自動車が41.5%、一般機械が20.2%、タイヤ用ゴム等の原料別製品が8.3%だった。
主な日本企業の対応は以下の通り。
●JT
新規投資とマーケティング活動をすべて一時停止する。事業環境が大幅に改善しない限り、生産も停止する可能性があるとしている。上期に予定していた電子たばこの新製品の発売は延期する。
●ファーストリテイリング
ユニクロ50店舗の一時営業停止を決定。今後1週間から10日かけて閉店する。オンライン販売も停止する。
●日立製作所
生活に不可欠な電力設備を除き、グループ全体で輸出と現地生産を順次取りやめる。グループのロシア向け売上高は全体の約0.5%(2022年3月期見通し)。その過半が建設機械事業。
ウクライナにある米グローバルロジック社のソフトウエアエンジニアリング事業は、従業員と家族が避難し一時サービスが滞ることがあったものの、遠隔地から業務に当たり徐々に通常の操業状態に戻りつつある。
●三菱電機
物流や金融などの混乱で、ロシア向け出荷を停止せざるを得ず、事業の継続が困難な状態。
●任天堂
家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」を含むすべての製品の出荷を停止。物流などが不安定なため。決済事業者がロシアルーブルの取引を停止しており、オンラインショップも現在利用することができない。
●ソニーグループ
ソニー・インタラクティブエンタテインメントが手掛ける家庭用ゲーム機「プレイステーション」のソフトとハードの出荷をすべて停止。オンラインストア「プレイステーションストア」の運営も停止。
●資生堂
ロシア向けの製品出荷をすべて停止。広告宣伝活動など新規投資も取りやめる。在庫分の販売は続ける。現地従業員の雇用と報酬は、必要な期間保証する。
●コマツ
ロシア向けの出荷を見合わせ。物流や金融など現地の状況が混乱しているため。生産は部品在庫や仕掛品がなくなれば停止する可能性。
●スズキ
ハンガリー工場からロシアとウクライナへの輸出を停止。
●マツダ
ウラジオストクの合弁工場向けの部品輸出を、予約済みのコンテナが終了した時点で止める。現地に在庫がある限りは生産・販売を続ける。2021年はロシアで約3万台を販売した。
●トヨタ自動車
ロシアでの自動車生産と完成車の輸入を4日から当面の間、停止する。欧州や日本からの部品調達が滞り、安定的なサプライチェーン(部品供給網)の維持が難しくなっているほか、ロシアに完成車を輸送する運搬船の一部にも影響が出ている。再開時期は未定。
●ホンダ
ロシア向けの四輪車と二輪車の輸出を一時停止した。物流と金融の混乱で、製品輸送と決済に影響が出ているという。ロシアにおけるホンダの四輪車販売台数は2020年度に1406台だった。
●三菱自動車工業
生産・販売は部品在庫がなくなり次第停止。現地での決済がルーブル建てのため、支払い停止で部品供給が止まる可能性は低いものの、部品供給が滞るなどサプライチェーン(部品供給網)上の影響が出る恐れがあるとしている。
生産拠点は欧米大手ステランティスとの合弁工場で、モスクワ南西に位置するカルーガにある。三菱自はロシア国内など向けにスポーツ多目的車(SUV)の「パジェロスポーツ」や「アウトランダー」を生産している。
●伊藤忠商事、石油資源開発、丸紅、INPEX
参画するサハリン沖の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン1」から米石油大手エクソンモービルが撤退を決定。
サハリン1は、日本の官民で作るサハリン石油ガス開発が3割の権益を保有。同社には経産相が50%、伊藤忠がグループで約16%、石油資源開発が約15%、丸紅が約12%、INPEXが約6%出資している。ロシア石油大手のロスネフチ、インド石油天然ガス公社も同事業に参画している。
●三井物産、三菱商事
参画するサハリン沖の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」から英石油大手シェルが撤退を決定。三井物産は「シェルの発表内容の詳細を分析中。日本政府とパートナーと検討を進めていきたい」、三菱商事は「シェルの発表内容の詳細を分析の上、日本政府およびパートナーとの検討を進める」としている。
サハリン2にはロシアのガスプロムが約50%、三井物産が12.5%、三菱商事が10%出資している。三菱商事によると、年間のLNG生産能力はおよそ1000万トンで、約6割を日本向けに供給している。
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