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アングル:小売業、紅海迂回で輸送時間増大 春節前の在庫確保に暗雲

ロイター / 2024年1月12日 16時54分

 1月10日、世界各国の小売企業は、中国の春節(旧正月)を前に商品在庫の確保を進める一方で、春シーズンの品薄を回避するために、紅海経由に代わる航空・鉄道による物流ルートの開拓に頭を悩ませている。ロイターが取材した小売業界幹部や専門家が明らかにした。写真はスエズ運河に向かうコンテナ船。エジプトで2023年7月撮影(2024年 ロイター/Mohamed Abd El Ghany)

Siddharth Cavale Helen Reid

[ニューヨーク/ロンドン 10日 ロイター] - 世界各国の小売企業は、中国の春節(旧正月)を前に商品在庫の確保を進める一方で、春シーズンの品薄を回避するために、紅海経由に代わる航空・鉄道による物流ルートの開拓に頭を悩ませている。ロイターが取材した小売業界幹部や専門家が明らかにした。

欧州のある小売企業は、一部の商品については在庫を確保するまで販促キャンペーンを控えていると語った。

マースクやハパックロイドなど海運大手は、イエメンの親イラン武装組織フーシ派による紅海での商船への攻撃が相次ぐ中、アジアと欧州を最短距離で結ぶスエズ運河経由の航路を回避して運航している。

コロナ禍による影響からサプライチェーンが立ち直ってきたばかりというのに、こうした航路変更に伴い、グローバル貿易が再び長期にわたる混乱に陥る懸念が高まっている。スエズ運河経由ではなくアフリカ南端を回ることで、燃料費は100万ドル、輸送日数は約10日間余計にかかる。

家具から機械部品まであらゆる商品を扱う小売企業5社と複数のアナリストに取材をしたところ、各社が採用している異例の対応措置が明らかになった。

米国のBDIファニチャーは、発注を前倒しするとともに、トルコとベトナムの工場への依存を高めている。また運輸事業者に、スエズ運河と、干ばつに見舞われたパナマ運河を回避し、太平洋経由でカリフォルニアに送るよう依頼している。そこから鉄道で米国東海岸の倉庫に輸送できるからだ。

BDIファニチャーで業務担当バイスプレジデントを務めるハンナ・ハッジャー氏は、AV機器用キャビネットや寝室・オフィス用家具の一部では、すでに船積みは終わっているものの、在庫が乏しくなっていると語る。

「ここに来てこれほどの遅延が生じるとは想定外だ」とハッジャー氏は述べ、最近の混乱により、ベトナムからの輸送期間は10─15日長くなっていると続けた。

中国から欧州・米国向けの物資を輸送する企業は鉄道や飛行機などの代替策を検討しているが、輸送費の高騰は避けられず、どの商品を優先して運ぶか戦略的な判断が求められる。

ハッジャー氏は、現状、カリフォルニア経由ルートではスエズ運河またはパナマ運河経由の通常ルートと比べて輸送コストが2倍になっており、BDIとしてはあくまでも急場しのぎの対応だという。

スエズ運河周辺の混乱による影響を最も受けやすいのはアジアから欧州向けの貿易だが、米国東海岸向けの輸送でも、スエズ運河経由が実に30%を占めている。

<時間との競争>

小売企業は時間との競争にも追われている。2月10日には、中国国内の工場が春節の休暇に合わせて2週間から1カ月の休業に入る。各社ともそれ以前にできるだけ多く輸出量を稼いでおこうと努めるのが恒例だ。

だが航路の変更が影響して、春節前の積み込みに間に合うよう中国に戻ってくる船舶は減少しそうだ。これでは4月から5月に西側諸国の店頭に並ぶはずの商品の到着が遅れてしまう可能性が高い。物流の専門家は、すでに中国・寧波港でコンテナ不足が生じていると報告している。

「販売時期が限定される季節商品が大きく遅れるのが、小売企業にとって最悪のシナリオだ」と語るのは、在庫管理ソフトウエアを開発するフルーエント・コマースで欧州・中東・アフリカ地域担当のゼネラルマネジャーを務めるロブ・ショー氏。

欧州のアルディ・ノードでは、家庭用品、玩具、装飾用品などの入荷が予定より遅れる可能性があり、結果的に、一部の商品の広告を延期していると話している。

英ネクストは、コロナ禍に比べれば対処しやすいレベルの遅延だと話している。ただし商品の大半をアジアから仕入れている同社の場合は、発注の前倒しや航空便の利用拡大によって影響を緩和できた。

ネクストのサイモン・ウルフソンCEOはロイターに対し、「(コロナ禍を通じて)在庫確保の遅れについて教訓が得られた。少しだけ早めに発注し、航空運賃が少し増えるのも織り込んでおく、ということだ」と語った。

中国西部から東欧に向けた鉄道路線という選択肢もある。

カーディナル・グローバル・ロジスティクスで英国担当マネージングディレクターを務めるクレイグ・プール氏によれば、この路線を使う場合のコストは、11月の時点では40フィートコンテナ1個当たり約7000ドルだったのが、現在では9000─1万0500ドル前後まで跳ね上がり、今も毎日のように値上がりしているという。

中国からイタリアに向けて機械部品を輸出しているICトレードでも鉄道利用という選択肢を検討しているが、創業者のマルコ・カステリ氏は、「空き枠を見つけるのが容易ではない」と語る。「貨物船1隻分を運ぶには100台の貨車が必要だ」

ポーランドのアパレル小売企業LPPは、「緊急度の高い」コレクションについては、鉄道または海空併用の選択肢を模索しているという。

RBCの複数のアナリストは、混乱が続けば欧州の小売企業の粗利益率に打撃がおよぶだけでなく、生鮮サプライチェーンの先行きが脅かされて物価が上昇し、急激なグローバル規模のインフレが再発する懸念が高まっていると語る。

この新たな物流の混乱により、一部の企業にとっては、もっと最終顧客に近い場所に工場を確保する形でサプライチェーンを恒久的に組み替える必要性が浮上している。オフショアに対して「ニアショア」と呼ばれることの多いプロセスだ。

BDIファニチャーでは、今後2─3年間かけてベトナムおよびトルコからの調達を増やすことにより、発注量全体に占める中国への依存率を現在の60%から40%まで引き下げることを目指している。

(翻訳:エァクレーレン)

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