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焦点:節目突破のドル高/円安、原油相場や中国経済次第で反転も

ロイター / 2021年10月13日 17時4分

10月13日、ドル/円の上昇に弾みがついている。写真はドルと円の紙幣。2013年2月撮影(2021年 ロイター/Shohei Miyano)

浜田寛子

[東京 13日 ロイター] - ドル/円の上昇に弾みがついている。ここ2年の天井だった112円を抜け2018年11月以来の114円台をうかがう展開だ。インフレ懸念が強まる中、米金利が上昇しているのが大きな要因だが、原油高が止まらずリスクオフが起きた場合や中国経済の減速が大きくなれば、一転して円買いが強まるとの見方もある。

<原油高とシンクロ>

いまのマーケットの「メインテーマ」はインフレだ。そのインフレ懸念を強めているのが商品価格、特に原油価格の上昇となっている。新型コロナウイルス禍からの景気回復に伴う需要増加に加え、中国など主要国での電力・ガス不足といった要因が背景となり、上昇が止まらない。

SMBC日興証券のチーフ外債・為替ストラテジスト、野地慎氏は、今のドル高は原油高とシンクロしていると指摘する。ドル/円に限らず、石油製品の自給率が低いユーロなども弱く、「資源を持たない国」の通貨が売られる展開となっているという。

「脱カーボンの潮流の中、石油輸出国機構(OPEC)やシェール業界が生産能力拡大に及び腰であり、容易に原油の供給が増えそうになく、むしろ原油高局面の長期化を介して各国経済のダメージを深くする可能性がある」と野地氏はみる。

原油高は今のところ円安要因だ。日本はエネルギー輸入国のため、原油高は交易条件の悪化を通じて円売り材料になる。しかし、バークレイズ証券のチーフ為替ストラテジスト・門田真一郎氏は中長期的にみて、「今後、原油高が行き過ぎてリスク回避姿勢が強まった場合、安全通貨としての円買いが進む可能性もある」と指摘する。

<米金利上昇が「仲介」>

原油高(インフレ)とドル高の間を「仲介」しているのは米金利上昇だ。米10年債利回りは今年6月以来の1.6%を付けた後、足元は1.5%台に調整しているが、5年債利回りは依然として2020年3月以来の1.0%台で推移している。

インフレは全般的にみれば金利上昇要因だが、12日の米債市場では景気悪化を意識 して長期金利が低下する一方、金融引き締めを意識して短期金利が上昇、金利曲線がツイスト・フラット化した。最近のドル/円は短中期金利との連動性が高い。

9月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比19万4000人増と、市場予想を大きく下回ったが、過去の7月、8月分が上方修正されたほか、失業率が低下するなど、「テーパリング(量的緩和の段階的縮小)開始時期に影響は与えない」(国内証券)との見方が大勢だった。

ドルが急ピッチで上昇したことを受け、目先は短期的な調整売りが出る可能性があるが、米経済が回復する中では「緩やかな米金利の上昇とドル高の流れは続くのではないか」と、バンク・オブ・アメリカ、チーフ為替・金利ストラテジストの山田修輔氏はみている。

<中国の景気減速懸念>

しかし、中国の景気減速懸念がドル/円の見通しに影を落としている。

東南アジア諸国では新型コロナワクチンの接種率が先進国に比べて低く、冬場の感染再拡大のリスクがある。中国と経済的な結び付きの強い東南アジアでの感染拡大は、自動車などの部品調達の妨げになり、中国での組み立て生産に支障が出るおそれがある。

日本総研では中国の21年の実質成長率を8.4%のプラスと予測しているが、「足元の電力不足問題などを背景に下方修正含みだ」と調査部主任研究員、関辰一氏は話す。「石炭不足問題の解消はいつになるか見通せない状況」だという。

国際通貨基金(IMF)は12日、中国の2021年の成長率を8.0%と0.1ポイントと小幅ながら引き下げた。中国経済の減速懸念が意識されれば、クロス円を中心に円高傾向が強まる可能性もある。

中国恒大問題をきっかけに、「中国からマネーが流出し、その行き場が安全資産の米債に移ることも考えられる」と楽天証券のFXディーリング部・荒地潤氏は指摘する。米債にマネーが逃避すれば、米金利が低下し、ドル/円には一転して下落圧力がかかる可能性もある。

(浜田寛子 取材協力:森佳子 編集:伊賀大記)

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