鳴らなかったJアラート、「格安」の誘惑に潜む命の危機 安さに目がくらんで大切なコト見逃してませんか

夕刊フジ / 2017年9月14日 17時12分

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テレビ全局でも政府発表の「国民保護に関する情報」が流れミサイルへの警戒を呼びかけた(夕刊フジ)

 【売れないモノを売る極意】

 今、北朝鮮の動向が油断ならない事態になっています。先日も早朝にミサイルが飛来して、初めて全国瞬時警報システム(Jアラート)が鳴りました。

 この時、危険対象地域にいてもJアラートを受信できないスマートフォンがあったことが後の話題になりました。いわゆる「格安スマホ」の一種で、もし脅威が現実になっていたら逃げ遅れていた可能性も指摘されています(すべての格安スマホではありません)。

 ただ格安スマホを契約するときJアラート受信の性能まで確認した人は、ほとんどいなかったのではないでしょうか。モノ余りの中、品質のレベルが一定に保たれていることに慣れた私たちは価格ばかりに気を取られ、大切なものを見逃していたのかもしれません。情報があふれる今こそ本質を見極める力が必要なのです。

 日々新しい情報が錯綜(さくそう)する中、本質を見極めるのは簡単ではありません。そこでヒントになるエピソードをご紹介しましょう。

 大阪の住宅街にある地方銀行は新たな預金者を獲得するキャンペーンで、ターゲットを主婦層(大阪のおばちゃん)に絞りました。個人対象の金融商品を売るためにも、主婦層の心をつかもうと考えたのです。

 そこで「大阪のおばちゃん」が大好きなモノを無料配布するイベントを企画しました。無料なら何でもいいワケではありません。意味を感じないものには「無駄なコトせんと始末(節約)しぃゃ」と逆に遠のいてしまいます。かといって無料で配るモノに多額の予算は使えません。そこで目をつけたのが、地元でとれる新鮮野菜でした。しかも地元の農家が売れなくて困っていた規格外の野菜を買い取って配ったのです。

 結果は大成功。おばちゃんたちの注目を集めました。人間は(動物も)自分のテリトリーを愛すると言われます。高校野球で地元の高校を応援するのも、オリンピックで日本を応援するのも同じ心理です。昨今人気の地域ごとに作られたビールやお菓子も同じ心理を突いたものといえるでしょう。

 かくして地元の農家が作った野菜は、見た目が悪いほどおばちゃんたちの地元愛に刺さり大にぎわいになりました。主催した銀行は「地元のためによくやった」と称賛され、新たな預金者を獲得できました。

 このような仕掛けはマーケティング的に表現すると「相手の懐に飛び込む戦略」になります。とても効果があるので、いかに相手の懐(心が動くツボ)に飛び込むかはビジネス戦略としてとても重要なのです。

 Jアラートを受信できないスマホを買った人は、「安価なもの」に懐を開きすぎていたのかもしれません。「安物買いの“命”失い」になる前に、安さに目がくらんで大切なコトを見逃していないか、ご自身の周囲を見直すことをおススメします。

 ■殿村美樹(とのむら・みき) 株式会社TMオフィス代表取締役。同志社大学大学院ビジネス研究科「地域ブランド戦略」教員。関西大学社会学部「広報論」講師。「うどん県」や「ひこにゃん」など、地方PRを2500件以上成功させた“ブーム仕掛け人”。

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