アングル:年明け米株はジョージア上院選が鍵、民主全勝なら冷水
ロイター / 2020年12月15日 8時4分
[ニューヨーク 11日 ロイター] - 米株式投資家は来年1月5日にジョージア州で実施される米連邦議会上院2議席の決選投票に注目している。株価は、新型コロナウイルスの全国的な感染拡大にもかかわらず年末にかけて上昇し、最高値を更新してきたが、この選挙の結果次第で株高基調が脅される可能性があるためだ。
バイデン次期政権与党となる民主党が2議席とも確保すれば、民主党が実質、上下両院を支配することになる。ただS&P総合500種指数が11月3日の大統領選以降に9%上昇したのは、大統領と議会のねじれにより、税制や規制といった分野での抜本的な軌道修正は阻止されるとの期待が一因だった。
ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズの調査ディレクター、マット・ペロン氏は「市場の観点から、ねじれ現象がもたらす好材料の1つは、政策面での停滞が避けられず、実際には政策を既定路線から大きく変更できないことだ」と述べた。
ジョージア州の決選投票は向こう1週間でさらに注目が強まるだろう。同州からはここ20年間、民主党の上院議員は選出されていないとはいえ、大統領選ではバイデン氏がトランプ大統領に僅差で勝利した勢いが、民主党側に希望を与えている。最新の世論調査では、民主党候補ジョン・オソフ、ラファエル・ウォーノック両氏が共和党現職のデービッド・パーデュー、ケリー・レフラー両議員に対してやや優勢だ。
オソフ氏とウォーノック氏が勝利すれば、上院は民主、共和両党の議席は50ずつだが、採決で同数となった場合には副大統領に就任するカマラ・ハリス氏が投票できるため、上院は実質的に民主党が制することになる。
その場合、法人税率を21%から28%に引き上げる計画を含むバイデン氏の税制改革案が実現する可能性が高まる。多数の投資家からみれば、この税制改革案を市場にマイナスでしかない。
ノーザン・トラスト・ウエルス・マネジメントのケイティー・ニクソン最高投資責任者は「現行税制が維持されるとの確信を揺るがす要因は何であれ、悪材料とみなされる」と話した。
ジャナス・ヘンダーソンのペロン氏は、規制が強化されるとの見通しはエネルギー株と金融株に打撃となりかねないと指摘。両セクターとも過去1カ月で株価が持ち直していた。
民主党が上下両院で優位に立てば、例えばエネルギー部門では広範囲にわたるフラッキングの禁止、金融部門では手数料や資本に関する要件の厳格化が、いずれも進めやすくなるとペロン氏は説明した。
また議会が味方になるバイデン氏にとって医療制度改革へ向けた道がより容易になり、ジョージア州の決選投票へ向けてそうした観測から医療保険会社株が不安定になってもおかしくない。
もっともたとえジョージア州で民主党が全勝しても、上院における民主党の優位性はわずかで、法制定にはより多くの穏健派議員からの支援が必要になりそうな状況を意味するとの声も聞かれる。
ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートのグローバル市場戦略部門責任者、ポール・クリストファー氏は「50議席対50議席の勢力図は依然、バイデン氏の税制改革案に盛り込まれた(市場にとって)最悪の要素にまでは到達しないこう着状態を生み出す」と話した。
一方議会で審議が難航中の追加経済対策に関しては、民主党が1勝でもすれば、バイデン氏が実行できる環境をもたらす一助になるかもしれない。
投資家がいかにご都合主義かは、11月3日の前には民主党が大統領選と議会選を全勝する展開を織り込んで代替エネルギー株が上がり、米国債のイールドカーブがスティープ化したが、選挙が終わった後はねじれ現象で値上がりする資産に飛びついたことでも分かる。
その中で一部の投資家は、ジョージア州決選投票の結果がどうであれ、通過すれば市場は政治的な先行き不透明感の解消を好感すると考え、新型コロナウイルスワクチン開発の飛躍的な進展が最終的には経済の復興をもたらし、現在の株価上昇を正当化するという見通しに重点を置いている。
UBSグローバル・ウエルス・マネジメントの米州アセットアロケーション部門責任者、ジェイソン・ドラホ氏は「結果にかからず、投資家の考え方はかなり強気なので、どのような報道も前向きに捉えられるだろう」と語った。
(Lewis Krauskopf記者)
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