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焦点:フロイドさん暴行死に憤る白人層、米社会は変われるか

ロイター / 2020年6月15日 11時18分

米首都ワシントンで6日、フロイドさんの暴行死を受けた抗議デモに参加する人々(2020年 ロイター/Erin Scott)

Nandita Bose Heather Timmons

[ワシントン 11日 ロイター] - 米メリーランド州に住む白人で事務系管理職のレスリー・バストンさん(42)は先週末に首都ワシントンで、白人警官の暴行のため黒人男性ジョージ・フロイドさんが亡くなった事件に抗議する数千人規模のデモ行進に参加した。一緒に参加した9歳と11歳の子供たちが、我が家はなぜ何もしないのかと尋ねたからだという。

バストンさんは6日、「非白人で社会の現状から恩恵を受けられない人たちの発言力を高めるのを助けようという、私なりの取り組みだ」と話した。

実際最近になって、全米各地の都市や小さな町で、白人が「黒人の命は大切」と書かれたTシャツを身に着け、手製のプラカードを掲げながら「手を上げるんだ。撃つな」と叫んで練り歩いている。時には、フロイドさんが警官に首を押さえ込まれ呼吸ができずに苦しんだことを悼み、皆で路上に横たわる場面も見られる。

書店では「白人の脆弱さ」「新たなジム・クロウ法(かつて南部諸州にあった人種差別的な州法の総称)」といったタイトルの書籍がベストセラーに名を連ね、ソーシャルメディアでは連日、「黒人の命は大切」のハッシュタグの投稿が続く。

圧倒的な割合で白人が経営、所有するフォーチュン500企業(全米上位500社)やスポーツチームも、人種差別反対運動への支持を表明した。ニューヨーク証券取引所(NYSE)はフロイドさんのために過去最長の黙とうを行った。

米国の公民権運動への白人の参加は昔から見られたが、歴史学者や社会学者は、足元で広がる反人種差別への支持のうねりが、かつてないほど大きいということには同意する。

それでも白人たちが、人種差別との闘いに長期にわたって関与し続けるつもりなのかどうか、疑問を投げ掛ける専門家も多い。

ローズ大学の歴史学准教授チャールズ・マッキニー氏は「歴史を振り返ると、今年のようにさまざまな運動で白人の参加率が高まっても、抗議デモが沈静化していくと白人は運動から徐々に脱落していく」と話す。

かつての黒人公民権運動では、1965年にアラバマ州セルマで「血の日曜日事件」(デモ隊が警官隊に弾圧され死傷者を出した事件)が起きた際にピュー研究所が行った調査によると、デモ隊に共感する割合は、全米規模では州内の2倍に上っていた。

ところが当時の別の調査では、デモ隊が求めた黒人の参政権獲得や人種差別措置の撤廃について、ジョンソン政権の進め方が急過ぎると考える国民も、45%に達していた。

マッキニー氏は、今年の白人層の動きが「黒人の命は大切」運動を現実的に後押しするような法整備につながるかを分析中だ。

人権団体の連合組織幹部を務める元外交官のアリン・ブルックス・ラシュア氏は、フロイドさんの事件を限りにして人種間の分断を終わらせるには、白人側が単に傍観者的な立場から同情するのでなく、この問題を全面的に自分たちの責任として引き受ける必要があると訴えた。

<パフォーマンス>

今回のような社会問題に通常、一定の距離を置くことが多い世界中の大企業は、人種間の格差是正などのために総額17億ドル(約1800億円)を約束したところだ。米各都市の議会では、警察予算の制限や警察の捜査手法の規制を決議にかけている。南北戦争時に奴隷制度維持を唱えた南軍側の人物の記念銅像は、各地で次々に引き倒されている。

一方、ロイターの調査によると、米企業の一部は黒人をほとんど上級幹部に昇進させていない。NYSEは設立から200年が経過した今でも、トレーダーや経営陣の圧倒的多数が白人だという現実がある。

8日には野党・民主党のペロシ下院議長や上院指導部らが議会で、フロイドさんの死を悼むためアフリカ・ガーナの民族衣装「ケンテ」をまとい、抵抗のポーズとされる片膝をつく姿勢で9分近い黙とうを捧げた。しかし、シカゴの黒人運動家チャールズ・プレストン氏は、中身のない単なるパフォーマンスで「ばかげている」と切り捨てた。同氏は、政治家ならば本当に黒人を助ける政策変更を推し進めるべきではないかと話す。

人種差別への抗議のポーズは、1968年のメキシコ五輪で米国陸上代表の黒人選手2人がメダル表彰時に行った、下を向いて片手を高く上げる「ブラックパワー・サリュート」と呼ばれる動作が有名だ。2016年、サンフランシスコ・フォーティーナイナーズのクオーターバックだったコリン・キャパニック選手は、国歌斉唱時に起立せずに片膝をつく姿勢を始め、今なお物議を醸している。

<新世代>

「黒人市民運動に関する全米連合」のメラニー・キャンベル事務局長は、ベテラン運動家の間では、白人を巻き込んだこの流れが長期間続くことに懐疑論があると述べた。それでも、フロイドさんの事件後に噴出した怒りや不満のレベルは、かつてないほどだとも認める。

キャンベル氏は、学校で多数が銃撃される事件や分断をあおる大統領、黒人が人種的理由で殺される光景を目にしている世代が、反対の声を上げているとの見方を示した。

米国の人口動態も変化しつつある。ピュー研究所によると、今年に有権者登録ができる10人に1人、数にして約2200万人が、Z世代(1990年代後半から2000年初め生まれ)と呼ばれる世代に属する。この世代は米国の歴史上、最も人種的多様性が進んでおり、白人の比率は52%しかない。

ワシントンの6日のデモに加わった21歳の白人学生カイル・ホルマンさんは、人種問題について「決して克服できない課題ではない。今の状況が有色人種にとっては本当にひどいと我々が気付きさえすれば、議論を前に進められる」と断言した。

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