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アングル:高級ブランド支えるスリランカ女性労働者、経済危機で辛苦

ロイター / 2022年5月16日 13時29分

 経済危機に見舞われるスリランカで、先進国の豊かな女性が着る衣服を仕立てる低賃金女性労働者らが、貧困と重労働にあえいでいる。写真は2017年5月、スリランカ・ワッタラの工場でスカートを縫う女性(2022年 ロイター/Dinuka Liyanawatte)

[コロンボ 9日 トムソン・ロイター財団] - 経済危機に見舞われるスリランカで、先進国の豊かな女性が着る衣服を仕立てる低賃金女性労働者らが、貧困と重労働にあえいでいる。

「仕事を始めて20年になるが、こんな経験は初めてだ」。最大都市コロンボの近くで、女性20人を雇って縫製工場を経営するアンソニーさん(仮名)は語る。

スリランカのアパレル産業は今、度重なる停電、原材料コストの高騰、受注の減少、人手不足と、数多くの問題を抱えている。

「ゲームオーバーだ。工場をたたむしかない」とアンソニーさん。20人の女性従業員は新しい仕事を探さない限り、家計が成り立たなくなる。

「彼女たちの家族の絶望ぶりは、想像することしかできない。でもこれは私のせいだろうか?国中がこんな状態だ」

工場閉鎖、給料支払いを巡るごたごた、ストライキといった問題は全国に広がっている。それによって最も大きな代償を支払わされているのが、アパレル産業の屋台骨を支える女性たちだ。

農村部の低賃金女性労働者の多くは既に失業したり、やりくりのために借金や残業を強いられたりしている。それもこれも米ファッションブランド、ヴィクトリアズシークレットの高級下着を作ることの代償だ。

22歳のチャリカ・フェルナンドさんは「私たちの工場で縫われる高級ブランドの衣服1着の値段が、私たちの月給分くらい。ブランドは私たちに何十時間もつらい労働をさせて何百万ドルも稼いでいるが、私たちに支払う給料は雀の涙だ」と語る。

トムソン・ロイター財団はヴィクトリアズシークレットにコメントを求めたが、今のところ返信はない。

衣料製造はスリランカで2番目に大きな外貨収入源だ。約300の工場が、世界的有名ブランド数十社に向けて服を製造している。

アパレル産業は国内総生産(GDP)の6%に寄与し、直接的な雇用者数は35万人、間接的雇用者数は70万人に上る。

パンデミックで打撃を被った多くの産業と同様、アパレル産業も制限措置の解除に伴って順調に回復するかに見えた。1月の同産業の輸出は前年同月比で22%も伸びた。

しかし、回復はそこで止まった。

スリランカは外貨不足が原因で経済危機に陥り、長年にわたって培われてきた経済的繁栄は既に吹き飛んでいる。

<大手ブランドと労働者の不均衡>

スリランカは1948年の独立以来で最悪の経済危機に見舞われている。外貨準備はピークから70%減って1月時点で23億6000万ドル(約3000億円)となり、食品、医薬品、燃料などの輸入代金にも事欠く。

前例のない停電の頻発により、繊維産業を筆頭とするエネルギー集約型産業の大半が停止に追い込まれ、西側諸国への輸出に混乱が生じている。停電は1回で何時間も続くことがしばしばだ。

政府は対策を進めていると主張するが、一部の大手ブランドは既にバングラデシュやインドなどに生産を移し始めた。

労働組合は、長年隠されていた問題が表面化したと指摘する。先進国ブランドとアジアの労働者の間にある、大きな力の不均衡だ。

下着工場で働くジャシンサ・ニルミニさんは「職場と行き来する交通費で給料の半分以上が飛んでしまう。家族を養ったり、屋根を修理したりするお金はほとんど残らない。状況は悪くなる一方だ」と嘆いた。

<長時間労働>

アパレル産業では労働者の10人に約8人が女性で、大半は農村部から出稼ぎに来ている。フェルナンドさんの母ラニさんはアパレル工場で働くため、地元の村から120キロ離れた都市、カトゥナーヤカの自由貿易地域(FTZ)に引っ越した。

「母は裁断とアイロンがけの仕事をしていた。母の経験を見ているから、この仕事が彼女の体にとってどれほど重労働だったか分かる」と言いながらも、フェルナンドさん自身もアパレルの世界に進むことを選んだ。貧困から抜け出すには最善の道だからだ。

機械のオペレーターとして、ヴィクトリアズシークレットなど大手ブランド向けの衣服製造に携わるフェルナンドさん。「3月の月給は4万ルピー(約1万4500円)だったが、何もかも値上がりした」という。

「野菜も肉も魚も、全部上がってしまった。2月には労組の要求で給与が2500ルピー(約900円)上がったが、その直前に、住んでいる部屋の大家が家賃を1万5000ルピーに引き上げた」

しかも仕事が大幅に増え、週6日勤務で1日12時間働くことが多いという。3月はノルマが過去最大に増え、「工場のオーナーが稼ぎをもっていっているに違いない」と感じている。

「絶望して泣き崩れそうになる瞬間がある。病欠の手当ても出ない。休暇もない」

<世界的な問題>

中米から南アジアに至るまで、世界中で低賃金、重労働、危険な環境に耐えるこうした労働者らが華やかなファッション産業を支えている。

スリランカで衣料製造労働者を守る労組活動を行うパドミニ・ウィーラソーリヤ氏は「女性の権利を気にかけるなら、ファッションビジネスの仕組みを懸念しなければならない」と言う。

同氏は、女性の方が労組に加盟するのが難しいと説明。「女性は家だけでなく職場、学校、家族の中でも抑圧されている。アパレル産業で働くすべての人に公正な賃金が支払われるようにしたい」と語った。

(Piyumi Fonseka記者)

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