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日産自に「共同CEO」構想、グプタ氏昇格へ水面下の動き=関係筋

ロイター / 2020年6月17日 23時52分

 6月17日、抜本的な構造改革に向け新たな中期計画に着手した日産自動車で、最高執行責任者(COO)のアシュワニ・グプタ氏を内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)と並ぶ「共同CEO」に昇格させようという動きが強まっている。写真は記者会見する内田CEO。2019年12月、神奈川県横浜市の日産本社で撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

白水徳彦

[17日 ロイター] - 抜本的な構造改革に向け新たな中期計画に着手した日産自動車<7201.T>で、最高執行責任者(COO)のアシュワニ・グプタ氏を内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)と並ぶ「共同CEO」に昇格させようという動きが強まっている。構造改革を確実に実行するには内田社長のリーダーシップでは不十分で、計画の中心人物であるグプタ氏の権限強化が必要というのが理由だ。

同社内の議論に詳しい4人の関係者によると、グプタ氏の昇格はまだ取締役会の承認を得るには至っていないが、同氏を推す動きは日産の最高意思決定機関であるエグゼクティブ・コミッティ(EC)内でも広がっている。今後の議論によっては、内田氏が会長となり、グプタ氏が単独のCEOに就任する可能性も「ゼロではない」(関係者)という。

インド出身のグプタ氏は、ホンダインドから日産を経て仏ルノー に移り、購買事業の経験を経て小型商用車(LCV)に関する日産とルノーの協力関係を構築。2019年4月には三菱自動車<7211.T>のCOOに就任し、昨年12月から日産ナンバー2のCOOとして内田氏を支えてきた。

日産が5月28日に発表した中期構造改革計画は、内田社長ではなく、グプタ氏が陣頭指揮を執って策定した。その重要施策である日産、ルノー、三菱自の新しい提携戦略、「リーダー・フォロワー」(それぞれの強みを生かし弱い部分を補い合う)計画は、グプタ氏が日産・ルノーのLCV改革に使った手法を下に、日産社外取締役でもあるスナール・ルノー会長との緊密な議論を通じてまとめ上げた。

グプタ氏の昇格案は日産取締役会の議題にはなっていないが、上記4人の関係者のうち2人は、スナール氏が賛同するかもしれないと話す。一方、ルノー側からの社外取締役の中には、内田氏よりも交渉力の強いグプタ氏が日産の実権を握ることを嫌って現状維持を望む声が出てくることも予想され、首脳人事の最終的な着地点は見えていない。

しかし、同関係者によると、日産内部では5月28日の構造改革プランの発表以来、EC内も含めて、グプタ氏の昇格を求める声が一段と高まってきた。内田社長がスナール会長との信頼関係を十分に築いていないという点だけでなく、構造改革に取り組む姿勢に疑問があるとみられているためだ。

同日の記者会見で、内田社長は数回にわたり、今回の中期計画は「リストラがメインではない」と繰り返す一方、「あくまでも財務基盤の強化と将来の成長のため」の計画だと強調した。

こうした内田社長の発言に対し、社内からは日産の生死を握る計画を完遂しようという強い決意が感じられないとの評価がある、と上記2人の関係者は指摘する。さらに、新型コロナウイルスの影響で市場が縮小する中、日産に強いリーダーシップがなければ、経営戦略の悪化が会社存続の危機につながるとの懸念が社内に深まっているという。

カルロス・ゴーン前会長が逮捕された2018年11月以降、日産は強力なリーダー不在のまま、経営陣の動揺が続いている。ゴーン氏の後を継いだ西川廣人前社長は、自身の報酬を巡る内規違反で昨年9月に引責辞任。同12月に発足した内田社長の新体制は、動き出した矢先に副COOとして経営トップの一角を担うはずの関潤氏が日本電産に移籍し、グプタ氏を加えた経営再建のトロイカ体制は崩壊した。

現場に精通し決断力もあったとされる関氏の離脱が日産社内の士気に大きく影響したことは否定できない。同社では、将来を嘱望された3人の中堅マネージャーが最近、関氏を追うような形で日本電産に転職している。社内に強力なリーダーシップの復活を求める声が強まっている背景には、そうした人材流出への危機感もある。

グプタ氏の指導力について、日産のグローバルな製品流通戦略を担当する中堅マネジャーは、米国、中国などの主要市場での業績回復や態勢改善を話し合った最近の重要会議には、常にグプタ氏が出席し、采配を振るっていたと話す。

「彼(グプタ氏)は構造改革プランを調整する全ての難作業に自ら取り組んでいた。一方、内田社長からは何のガイダンスも受けてはいない」

内田氏については「グプタ氏と協力してよくやっている」(取締役会に近い人物)という評価があるものの、会社を率いるトップとしての強さには疑問符を付ける見方も少なくない。

新たな構造改革を発表した内田社長の記者会見での発言について、SBI証券のアナリスト、遠藤功治氏は「リストラすると言えば優秀な人材がさらに流出しかねない。しかし、社員の危機感を高める上では、率直に言った方が良かったのではないか」と話す。「誰がどう見てもリストラだ」と同氏は指摘した。

ロイターの取材に対し、日産は「経営陣の構成については、いかなる変更も計画あるいは検討されていない。現在の内田氏とグプタ氏との間の緊密な協力関係についても変更はない」と文書で回答。それとは異なる憶測は根拠がなく、ミスリーディングだとしている。

さらに、同社は文書の中で「経営陣はCEOである内田誠氏が率いるトランスフォーメーション・プログラムの実行に集中し、団結して取り組んでいる。アシュワニ・グプタ氏はCOOとして、内田氏との連携の下で、そのプログラムが完遂できるよう精力を注いでいる」と述べている。

また、ルノーの広報担当者はロイターの取材に対し、憶測にはコメントしないとした上で、ルノー、日産、三菱自動車3社の関係は「エクセレント」であると言明。三菱自動車はコメントを避けた。

*内容を追加しました。

(編集:北松克朗)

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