アングル:米制裁対象の中国企業株、欧州・アジア投資家が熱視線
ロイター / 2021年1月18日 8時51分
1月14日、トランプ米政権による投資禁止措置を受けて値下がりした中国企業株を、アジアや欧州の投資家が物色しつつある。米大手ファンド勢の売却による割安化を好機ととらえており、投資禁止措置がこれらの企業に打撃を与えるとは懸念していない。写真は中国電信(チャイナテレコム)のロゴ、2018年8月に香港で撮影(2021年 ロイター/Bobby Yip)
[上海/シンガポール 14日 ロイター] - トランプ米政権による投資禁止措置を受けて値下がりした中国企業株を、アジアや欧州の投資家が物色しつつある。米大手ファンド勢の売却による割安化を好機ととらえており、投資禁止措置がこれらの企業に打撃を与えるとは懸念していない。
スイスのUBSは、押し目で買いを入れようとの意欲が顧客の間にあると明かした。実際、香港上場の中国通信関連株は、米バンガードと米ブラックロックが売却を発表した週には新たな資金が流入し、15%を超える値上がりを見せた。
中国移動(チャイナモバイル)はこの週の上昇率は約12年ぶりの大きさだったほか、中国海洋石油(CNOOC)は16%高、中芯国際集成電路製造(SMIC)は10%高となった。この3社はいずれも投資禁止措置の対象で、主要国際株価指数から現在除外されたか、今後除外される恐れがある。
投資禁止リストに掲載された中国企業は35社に上る。ただ関連子会社も含めたそうした企業の株への資金流入が続き、株価も堅調に推移していることには、これらの銘柄に対する投資家、特に中国本土の投資家の強い信頼がうかがえる。同時に制裁効果がどの程度あるのか疑問も生じてくる。
UBSの中国戦略責任者ウェンディ・リュー氏は「今後やむを得ない形の持ち高解消は誘発されるので、市場動向は注視する価値がある。一方で当社は、米国がブラックリストに加えた銘柄に興味を持つ欧州投資家を抱えている」と話した。
トランプ政権が中国の軍に関係しているとみなした中国企業株の購入禁止を打ち出したのは昨年11月で、それ以降米ファンドは売りを急いでいる。トランプ氏は今月13日に、禁止を新規購入だけでなく、銘柄の保有自体にも広げる意向を明確にした。
投資禁止を受け、米MSCIや米S&Pダウ・ジョーンズ、FTSEラッセルなどが株価指数から十数社を外したことで、パッシブ運用投資家の売りを招いている面もある。
バンガードとブラックロックはともに保有銘柄売却の詳細は説明していない。バンガードは投資禁止措置を順守するために売却したと述べ、ブラックロックは傘下のインデックス連動型ファンドが株価指数の構成変更に対応したと表明した。
シンガポールのニューベスト・キャピタルのポートフォリオマネジャー、デーブ・ワン氏は「今チャンスがある。(投資禁止対象銘柄の)利益見通しは上向き続けているのに、バリュエーションは圧迫されている。(米国のブラック)リストに起因する数多くの悲観要素はもう織り込まれている」と語る。同社は米国が投資禁止を発表して以来、中国の建設、エネルギーといった分野の国有企業への投資を拡大している。
<しわ寄せ>
中国本土では、米国の投資禁止対象になった企業を応援する気運が高まっている。証券会社は相次いで買いを推奨し、株式購入の動機として利益とともに愛国心に言及する個人投資家も現れた。投資情報サイト、雪球(Xueqiu)では投資家が、中国移動は既に高い配当を提供している上に「バリュエーションが回復する可能性を考慮に入れれば、国家のために株価を押し上げることが相当のリターンを生み出す」とコメントした。
今週は中国本土投資家が米国の制裁対象となっている香港上場企業に買いを入れたため、本土から香港への資金流入額は記録的な水準に達した。中国移動通信、中国聯通(チャイナユニコム)、中国鉄建(CRCC)、CNOOCといった銘柄の本土投資家の保有高は、制裁が始まってから3倍以上に膨らんでいる。
もっとも投資禁止措置を受けた中国企業株の株価は、それ以前の水準にはまだ戻っていない。引き続き何カ月も売りを浴びるとともに、世界で一番大きな投資資金を抱える米国との関係を失うという逆風にもさらされる。
こうした中で、投資禁止ルールになお不明な部分があるにもかかわらず、米国のファンドによると投資家は余計なリスクは背負わないようせざるを得ない。米TCWの新興国市場グループのマネジングディレクター、デービッド・ロービンガー氏によれば、米国勢の存在感と資金提供力の大きさからすると、彼らの撤退は流動性枯渇につながるため、売れるうちに売ろうとする投資家の動きにつながっている。
一方、フランスのBNPパリバ・アセット・マネジメントでアジアのマルチ資産計量ソリューション責任者を務めるポール・サンデュ氏は「(投資禁止対象企業の)ファンダメンタルズは変わっていないと思う。依然としてしっかりしている。こうした制裁で実際には米国の投資家がしわ寄せを受けている」と指摘した。
(Samuel Shen記者 Tom Westbrook記者)
この記事に関連するニュース
-
配当利回りランキング~1月はNISA資金の流入多く、高配当利回り銘柄には相対的に押し目買い妙味
トウシル / 2025年1月8日 7時30分
-
新NISA「2年目枠」開幕買いは高配当株?増配予想で利回り4.5%以上の中小型株13選
トウシル / 2025年1月6日 17時16分
-
1位は「iTrustインド株式」! インド株ファンドの人気に大変動(24年11月の新興国株ファンド)
Finasee / 2024年12月27日 7時30分
-
1位は「日経225ノーロードオープン」! 金融株への見直しは続くか?(24年11月の国内株ファンド)
Finasee / 2024年12月26日 17時0分
-
焦点:今年は「債券の年」、世界の債券ファンドへの資金流入が過去最高に
ロイター / 2024年12月20日 14時22分
ランキング
-
1消費増税還元ラッシュ「お金のウラ技」総まとめ
プレジデントオンライン / 2019年11月10日 17時15分
-
2中国が通貨防衛強化、元安けん制 香港外準増や海外借入規制を緩和
ロイター / 2025年1月13日 17時38分
-
3ARグラス「XREAL One」 大画面&高精細な視聴を実現
J-CASTトレンド / 2025年1月13日 18時0分
-
4三菱UFJ銀行 “貸金庫10億円窃盗”女性行員(46)が「借金トラブル」で破産寸前だった!
文春オンライン / 2025年1月13日 16時10分
-
5中国の新車輸出、585万台 24年、2年連続世界一へ
共同通信 / 2025年1月13日 19時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください